ファスミーヤの別れと離れ
「ね、ねぇ・・・」
自分の声が震えている事を自覚しながらもブロウドに声を掛ける
このまま静観すると・・・今まで考えた事も無い未来が訪れると断言するには充分な状況だ
「・・・なんだい?」
「あの【暴喰神】・・・いえクロノは自我はあるの?」
見た感じでは何を言っているのか分からない言葉を話しているが・・・どうにも腑に落ちない
動きが異常に機械的というか創られたかの様な動きなのだ
最善の手札を最高の好機で切り続けるかの様で・・・生物はそんなに上手くは出来ない
それが私の違和感の根本だ
「あぁそんな事か。」
だが私の疑問に対してブロウドは何でもないかの様な受け答えを取って来る
それが何故か歪に感じてしまう
「アレにクロノ君の意識は無いよ。あそこに居るのは【暴喰神】・・・正真正銘の神だろうね。」
「だろうねって・・・じゃ、じゃあソテルアスはどうなるの?!!」
「私も全てを知っている訳じゃあ無いから断言は出来ないのさ。だがまぁソテルアスは・・・間違いなく喰われるだろうね。」
「?!!」
特に感慨もなさそうに淡々と告げる彼に衝撃を受ける
これまで喧嘩もしたけれど何千年もの付き合いのある家族とも言える存在が喰われる事に何も思わないのだろうか?
「・・・貴方はそれで良いの?」
「・・・良いも悪いもないのさ。私はこの道を選び、彼はあの道を選んだ。何処かで衝突するのは自明の理だった。・・・それが今だというだけさ。」
「【真祖】が・・・いえ、家族が死のうとしているのよ?!」
「それを言うならば何千万、何億という我が子の死を私は見て来たよ。・・・今更そこに対しては何の感情も浮かばないねぇ。」
そう言われてハッとする
龍族と妖精霊族は有史以来、寿命で死んだ事がない
それは魔力を産み、魔力を充満させている存在だからなのか・・・寿命と言う概念がない
我が子が死んだとなれば殆どが戦いの上で敗れたという事実のみだ
まぁ例外として我が子と人族が交わった上での種族では寿命が有限となるみたいだが・・・
私個人としては子の子という感覚は無く、どちらかというと別物という感覚に近い
けれどブロウドは違う
魔力を使用する種族を産んだからか・・・人族魔族の寿命は有限だ
魔族は数100年程生きるそうだが、人族は50年生きる事が出来るがどうかという所だ
それに加え数も多く、ひっきりなしに何処かで戦争を起こしている
私たちの誰よりもそれを見てきた彼からすれば・・・死に特別な感情が無い、若しくは麻痺してしまっているのかもしれない
そんな事を考えている間にソテルアスの眼前にはあの【暴喰神】が立ちはだかる
ソテルアスは必死に藻掻いているものの触手から抜け出せないでいる
「qaiohgj]qpqhip」
何かを告げると黒い大きな腕を彼に近づける
「ねぇブロウド・・・哀しくないの?」
思わずそう呟く
確かに私たち【真祖】は決して仲良くは無かった
3人の主張が一致した事など1度も無く・・・過去には世界を巻き込んだ大喧嘩すらしている
そんな私たちの関係性だったとしても・・・彼が死ぬ事は哀しくないのだろうか?
「・・・・・・。」
けれど私の質問にブロウドは答えない
彼は今この瞬間をして何を思っているのだろうか?
ブロウドが何を考えているのかを真に理解した事は・・・1度としてない
「ブロウド・・・私が見物できるのは此処までよ。」
私はそう言って彼らの居る場所へ歩みを進める
恐らく・・・いえ、絶対に私は此処で死ぬでしょうね
「・・・・・・。」
そんな私に対しても彼は何も言わない
どうせ最期だ・・・憎まれ口の1つでも叩いてやろう
そう思い彼を見つめて私は口を開いた
「さようなら、ブロウド。貴方の事は・・・嫌いじゃなかったわ。」
そう言ったと同時に私は愚兄の元へ飛び立っていった
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