クロノと安寧の断念
「【憤怒タギル血】・・・で、でも【大罪スキル】は魔族の【魔王】の中からしか表れた例が無い筈だっ!!」
【大罪スキル】が確認されているのは7種類
そしてその全てが魔族の【魔王】からしか発見されていない
だからこそ【魔王】の固有スキルだと考えられていた筈だ
けれども僕のその疑問を鼻で笑いながらソテルアスは言葉を続ける
「それ自体は間違いではない。だが貴様は忘れているのではないか?」
「・・・何を?」
「誰が称号を、スキルを与えているのかという事だ・・・。」
「それは・・・」
そこまで言われて気付く
そうだ・・・僕が人族だったころは教会に出向き称号を神の啓示として受け取っていた
魔族領では・・・教会はないものの、一カ所に集まり一晩を過ごして称号を得ている
詰まりは・・・
「・・・神。」
「そうだ。母上が貴様等は魔族、人族、龍族に対して称号や潜在スキルをあてがっている。そんな母上の手からすれば【魔王】の固有スキルを我に付与する等は造作もない事だ。」
・・・詰まりは僕等の運命は神に全て決めつけられているという事だ
そして固有スキルすら【真祖】に付与させる事自体も可能だと
「【不刻響命】すら喰わせる様に昇華した貴様の努力は見事だ・・・。だが、それでも母上の意思の前には無力でしかないという事だ。」
膝から崩れ落ちそうになるのを必死に堪える
僕が人族から魔族になったのも・・・称号に何も映し出されていなかったのも・・・全てが神の思し召しだとでも言うのだろうか?
「・・・でもっ!!!」
剣を構えて、ソテルアスの攻撃に備える
だが僕の意志とは反して、ソテルアスは攻撃を仕掛けて来る様子は無い
「我の持つ【憤怒タギル血】の効果は単純だ。怒れば怒る程に身体能力が増す仕組みとなる。平時であれば役には立たんスキルだがな・・・先程の吸血鬼のお陰で早々に使用できた。」
あの吸血鬼族の【魔王】がソテルアスを怒らせたからこそのあの猛攻・・・
そう聞くと妙に納得がいく
幾らソテルアスが強いとは言ってもブロウドさんやファーニャさんと比べてかけ離れて身体能力が高すぎる
一番身体能力が強いと聞いていたからこそ、強すぎる事に違和感を持たなかった僕のミスだ
「だからこそ【大罪スキル】を発動させている我には効かん。」
「・・・・・・フフ」
思わず笑い声が口から漏れ出る
つまりソテルアスは今現在がドーピング中であり・・・これ以上に強くなる可能性は低いという事だ
これ以上、彼を怒らせる事さえしなければ勝機はあるという事だ
なのに・・・
「フフフフ・・・ハハハハハハハハッ!!!」
「・・・・・・何がおかしい?」
安心感なのか、緊張の糸が切れたのか・・・笑いが収まらない
そんな僕を見て苛立つソテルアスを見ると・・・駄目なのに笑ってしまう
「ソテルアスさん・・・詰まり貴方は【真祖】という立場を捨て、神の駒になる事を選択したのですね?」
「・・・どういう事だ?」
「簡単ですよ。神・・・貴方の言う母上が何故【憤怒タギル血】を貴方に授けたと思います?」
「・・・貴様はより確実に倒す為だろう。」
多分、この【真祖】は本当に理解していないのだろう
哀れな気持ちと滑稽な気持ちが混在する
「そうですね。・・・ただ正確に言うならば『貴方が僕に倒されない様に』という事が正解でしょう。詰まり神は貴方が【大罪スキル】を持たなければ僕に倒される・・・そう考えたのですよ。」
「ッ?!!!」
「だってそうでしょう?!安寧を望む神が、自ら安寧、規律、ルールを逸脱してでも【大罪スキル】を貴方に与えた!!その理由が他にあるとでもお思いですか?!!」
「・・・!!!ば、万全を期す為だっ!!そうだ!!その為だっ!!」
「万全を期す為に?安寧を何よりも求める神が?自ら安寧を破る?・・・有り得ないでしょう。」
僕はそう言って挑発的な笑みを浮かべると、ソテルアスは非常に動揺していた
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