【間章】~~追憶Ⅴ~~
「言ったろう?既に子は成している、と・・・。」
そう言った男の前には矢を素手で受け止めた子供が待機している
背丈や雰囲気で子供なのは理解できるが口元は隠しており、髪の毛も後ろで束ねてはいるが男か女かまではハッキリ分からなかった
だが・・・
「黒髪黒目・・・」
リングランの呟きに全員が注視してその子を見つめる
確かに無造作に束ねた髪は黒く、目の色も真っ黒だ
「おやおやおやぁ~・・・君達も黒髪黒目なのを気にするのかねぇ?」
「と、当然っスよ!!黒髪黒目は世界を不吉にする象徴っすよ?!!そん「待って!!!」」
シャンスの声をリングランが遮る
その声色は切羽詰まった様な悲壮な叫び声にも聞こえる
「・・・リングラン?」
「黒髪黒目・・・子供・・・魔族・・・交配・・・不吉の象徴・・・」
ブツブツと恐ろしい事を結論づけるかの様に呟き始める
そして意外にも目の前の男は何もせず、相も変わらず嫌な笑顔を浮かべるだけだ
攻撃を仕掛ける様子も、子供に命令する様子も無かった
「・・・もしかして。」
「ほう・・・お嬢さんは1つの仮説に辿り着いたかねぇ?」
「黒髪黒目は・・・魔族と人族の間にできる子の特徴なの?!!」
「正解っっっ!!!!!」
リングランがそう答えると同時に、男は柏手を打つ
そしてその表情からはニヤツキが消え、その代わり凶悪な笑みを浮かべている
「お嬢さんの言う通り、黒髪黒目は人族と魔族の間に出来る子の特徴だ。詰まり諸君の目の前にいるこの子は人族と魔族の子・・・新たな進化の形とも言える。」
「・・・・・・。」
「さて・・・その事実を知って貰った所で次はその実力を知って貰おうかねぇ・・・。おい、殺れ。」
男がそう言った瞬間、子供は俺たちに向かって駆けて来る
どうやら懐に小刀を携えていた様で両手に刃物を握りしめていた
「っ!!来るぞっ!!リングラン、防御魔法だ!!シャンスは牽制、コシドーは2人を守れっ!!」
そう指示して子供を迎え撃つ準備をする
「・・・可哀想だけ・・・どっ!!!」
ーーシュパッーー
ーーシュパッーー
矢が連撃で子供の足に襲い掛かる
だが矢の軌道が見えているかの様にサイドステップを行い容易に回避した
「嘘ぉぉ?!!!」
驚愕するシャンスの脇を通り抜け、コシドーが子供に襲い掛かる
「ぬぅぅぅん!!!!」
大剣を子供に目掛けて一気に振り下ろす
子供相手にと思わなくも無いが、先程の動きを見る限り俺たちも簡単に倒せる子供ではないのは容易に理解できる
「なっ?!ぐっ!!!」
コシドーの首筋から鮮血が舞う
彼の大剣を回避し、反撃がてらに斬りつけていた
リングランの魔法が無ければ致命傷になっていたかもしれない
「子供はねんねしなさいっ!!」
そう言いながらリングランがアイスボールを撃ち込む
コイツの実力だともっと大型魔法が繰り出せるのに・・・子供だから躊躇しているのだろうか
そんな事を考えている間に子供はアイスボールを見ると、ファイアウォールで攻撃を相殺させていた
「嘘?!あの歳で魔法をここまで使えるの?!!」
称号を得る事の出来ない年齢でリングランの魔法に対抗できること自体が異常と言えば異常だ
「ちぃっーーーー!!!!」
此処で俺が抜けられればシャンスとリングランだと一気に斬りつけられる
ファイアウォールで一瞬相手の視界が曇った瞬間を見逃さず、奇襲に近い形で斬りつけていく
ーーーキンーーー
ーーーガギンーーー
ーーーガギィンーーー
死角から奇襲に近い形で攻撃を仕掛けたにも拘らず、容易に対処し俺と剣戟を打ち合って来る
「くそっ、この・・・ガキ・・・!!!」
「・・・・・・・」
死んだような目で俺を見つめながらも剣戟を捌いて来る子供に焦燥感や恐怖心が襲い掛かる
どうやらそれは俺だけではなかった様で・・・
「嘘・・・でしょ?」
「アニキとまともに斬りあってる・・・?」
「あいつは・・・SS級だぞ・・・?」
全員が子供の圧倒的な実力に畏怖していた
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