ヴァリア?の説得と競説
「貴方は人族の【真祖】に敗れても良いのですか?」
「・・・何?」
そう言った私に対して一気に殺気を飛ばしてくる
コレは・・・予想以上に劣等感をあの御方に抱いている
「貴様、我を前に何を言った?我が、愚弟に、敗れるだと?自分の眷属にすら勝てぬ愚か者に我が敗ける訳無かろうが?!!」
上手い具合に劣等感を煽れたみたいでかなり食いつきが激しい
ここからの交渉次第では私の望む通りに【真祖】も動いてくれる筈だ
「いいえ、私が言っている敗北の意味は実力の話ではありません。貴方が仰る『母上』の評価が敗れても良いのですか?という意味です。」
「?!!!」
私がこの角度から話を振って来るとは全く想像していなかったのだろう
先程よりも更に目を見開いて驚愕の表情を浮かべる
【真祖】を驚愕させる事が出来たのは僥倖だが、あの御方は目の前の【真祖】ほど単純ではない
「・・・母上の評価だと?そんなものっ!!そんなものは我の方が遥か高みに位置しておるわ!!」
「・・・本当にそうだと言い切れますか?」
「なに?」
やはり目の前の【真祖】は単純だ
自覚しているのかは知らないが、彼はあの御方に劣等感を抱いている
もっと突き詰めて言うならば・・・嫉妬している
だからこそ今の私の様な矮小な生物の言葉であっても笑い飛ばす事が出来ない
「貴方方の『母上』は間違いなく安寧を築いたでしょう、それは間違いありません。ですが『親』というものは『子』の成長を何よりも喜ぶものです。自分が築いたものをただ守り続ける者とより良いモノを模索しながらも築き上げようとする者・・・果たして親はどちらが愛おしいと思うものでしょうか?」
「・・・我が傍に居るだけの存在だったと言いたいのか?」
「そんなことはありません。勿論『母上』も貴方が可愛いと思いますよ。自分が築いたモノを健気に守ってくれているのですから。」
「なら「ですがそこに親として子の成長を知る機会もまた有りません。」」
【真祖】の言葉を遮りながら断言する
すると彼の表情は・・・親の愛を受けているのか不安になっている子供の様に見える
「貴方がそうだと決して申しません。申しませんが・・・親が創造したものをただ見ているだけならば極論私でもできます。だってこの数千年・・・あの御方が動いた以外は何も起こっていないのですから。」
「・・・・・・。」
「一方でより良い安寧を創造する為に模索し、思考し、試行するあの御方・・・親の立場からすれば何をするのか、どうするのかと目を離せないと同時に成長を感じられるのもまた真実では無いでしょうか?」
「・・・我はどうすれば良い?どうすれば・・・母上に我を見て貰えるのだ?」
暫し沈黙し続けていた【真祖】が私にそう問いかけて来る
この時点で9割以上は成功したと言って良いだろう
あの御方からお聞きしていた目の前の龍族の【真祖】の情報と本人自身が相違ないからこその案だ
目の前の【真祖】は・・・親に依存し過ぎている
ならばそれを餌にこちらへ誘導すれば比較的容易に事は運ぶ
「そうですね・・・1番手っ取り早い方法はあの御方より先んじてより強固な安寧を築く事でしょう。」
「?!!・・・だがそれは母上の安寧を否定したと同義ではないか?!!」
「先程申し上げました様に親は子の成長を愛おしく思うもの・・・。自らを超えてより強固で悠久な安寧を築く事に喜びこそすれ気落ちされる事は絶対に有りません。」
「むぅ・・・。」
【真祖】はそう言ってまた悩みだす
数千年も思い続けた思考を簡単に否定する事はない事くらいは理解している
「だが・・・ブロウドを敬愛している貴様は何故我にその事を告げてくるのだ?」
「簡単です。あの御方は自分で進化を施したいとは一度も言った事はありません。要は結果進化を見る事が出来れば過程は気になさらないという事です。であれば貴方の力をお借りして進化と安寧を早め、確立させた方があの御方の益になると判断しただけですよ。」
私はそう言いながら内心ほくそ笑んでいた
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