サイクスの歓喜と正気
「う・・・腕が・・・俺様の腕がぁぁぁぁーーーーーー?!!!」
目の前の黒蜥蜴は右腕が消失した事に叫び続けている
戦いの最中に片腕を失った程度で動揺する様ならば未熟以外の何物でもない
「そんなに驚かれると此方としてもヤリ甲斐がありますねぇ・・・。ではこちらも如何でしょう?」
そう言いながら右腕が無い事を確認している隙に左脚に触れる
すると左脚は瞬く間に消失し、黒蜥蜴はバランスを崩して倒れ込む
「な・・・なあぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!!」
「五月蠅いですねぇ・・・痛みは無いでしょうぅ?」
私が触れた箇所は斬られた痕が付いている訳でも無いし、鮮血が飛び散った訳でも無い
そこにあったモノが始めから無い様になっているだけの事だ
「う・・・うぐぐぐぐ・・・【黒龍ノ咆撃】っ!!!」
「あひょっ!!!」
魔力が高まっていると思った瞬間、口から魔砲を放ってきた
間一髪ではあるが回避する事が出来たが・・・あと数瞬でも反応が遅れていれば・・・
「流石は黒蜥蜴ですねぇ・・・あと僅かで死んでいましたよぉ?」
そう言いながら今度は右足を消失させるが・・・どうもバランスが気に入らない
今度は右脚を消失させる事にした
これで四肢で残っているのは左腕の身という事になる
「どうですぅ、残りは左腕のみですよぉ?大人しく降伏した方が良いんじゃないですかねぇ?」
「貴様ぁ・・・殺す殺す殺す殺す!!!!」
「・・・はぁ、本当にその言葉しかご存じないのですかぁ?闘争心は立派なものですが・・・少しは利口になってくださいよぉ?」
そう言って左腕に触れようとすると、触れられたくないかの様に回避しようとする
そしてその瞳からは・・・僅かながら恐怖の色が滲み出て来た
「あはぁぁ~・・・やっとですかぁ・・・やっと・・・怖がってくれましたぁ?」
口角が上がっていくのを止める事が出来ない
駄目だ駄目だ・・・コレは私の大切なモルモットだ
腕からだって有益な情報を得る事が出来るじゃないか
身体から得る事が出来ない情報が眠っている可能性すら・・・ある
ダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメ・・・
「があぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁっぁぁぁっぁーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
あぁ・・・駄目だと理解しているのに・・・気付けばモルモットの左腕を消失させてしまっていた
一時の快楽に身を任せるなんて愚か者以外の何物でもないというのに・・・
「フヒッ・・・ヒヒヒ・・・ヒャハハハハ!!どうかしましたかぁ?!!まるで木彫り人形の様ないで立ちじゃないですかぁ?!!!ヒャハハハハ!!!!」
楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい
悦しい悦しい悦しい悦しい悦しい悦しい悦しい悦しい悦しい悦しい悦しい悦しい悦しい悦しい
こうやって何かを嬲るのは本当に悦しい!!!
「ぐがあぁあぁぁぁぁぁっぁあっぁぁ!!!貴様ぁーーーー!!!!」
黒蜥蜴の恫喝や慟哭が私が悦に浸るのをより深く誘導してくる
「どうしましたぁ~?ひ弱で脆弱な私なんて一瞬で終わらせる事が出来るのでしょうぅ??早く立ち上がってやってみてくださいよぉ~・・・」
最早立ち上がる事も出来ず、ただ吠える事しか出来ない黒蜥蜴?が愛おしく感じる
コレはもう・・・龍王を名乗る事が出来ない
出来たとしてもそれは文字通りお飾りにしかならないだろう
「糞がぁ!!貴様殺すっ!!殺す殺す殺す殺すっ!!!」
「あ・・・ああぁぁぁぁぁぁぁぁっぁ~!!!」
このまま歓喜の渦に呑み込まれてしまいたい気分になった・・・
いつも有難う御座います!!
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