アカノの不明と罷免
「これはまたぁ・・・」
「まさか龍族の【真祖】がでてくるなんてね・・・。」
そう言った2人は薄っすらと微笑んでいるが、視線は明らかに動揺している
まさか【龍王】が4人だけではなく、【真祖】とまで対峙するという事は負け戦が確定しているものだ
「・・・貴様等が母の安寧を崩す事を命題としている輩共か?」
【真祖】が口を開くだけで威圧感が増してくる・・・
どう考えても私の頭では対策を講じ様もない
「な・・・何故【真祖】が・・・。」
そう呟く私に赤龍は顎髭をなでながら回答してくる
「そりゃあ人族魔族のみならいざ知らず、儂等も含めて滅亡を企てる輩が相手となるならば・・・こちらも相応の準備を行わなければならんじゃろう?」
その言葉を聞いた瞬間、思うままに赤龍に叫んだ失言に気づく
あの時に人族魔族だけを標的にする等と言っておけば・・・此処まで最悪のパターンにはならなかった
【真祖】はそんな私の後悔を察するも気も無いもないのか、私たちを見渡し溜息を吐く
「少ない上に・・・弱い。こ奴等は安寧を揺り動かす事など出来んだろう。赤龍、この程度の輩に対し我を呼んだのか?」
「・・・申し訳御座いません。正直、もう少し実力者が揃っておると思ったのですが。」
【真祖】に対し赤龍はそう言って首を垂れる
「折角お邪魔したんやしぃ~・・・折角ならもてなして欲しいでありんすねぇ。」
「だな・・・弱者ではあるみたいだが並みの人族よりは出来る方だ。ちっとばかし遊んでヤるか?」
「・・・眠い。」
各龍王はヤル気に満ち溢れており戦い自体は避けられそうにない
であれば・・・【真祖】だけでも私たちに興味を失くして去って行ってくれれば最悪な事象は回避できるが・・・
「ところで・・・おい黒髪。」
そんな事を考えていると【真祖】は仮面を被ったクロノの方へ口を開く
その目つきは興味なくした者へ投げかける視線では無く・・・寧ろ逆のイメージを受ける
「そこの赤髪が面白い事を言っていたな・・・『クロノ』、と。」
「・・・・・・。」
その言葉を聞きながらクロノは押し黙る
何故龍族の【真祖】がクロノの事を知っているのだろうという当然の疑問を抱いている間に彼は言葉を続ける
「貴様の様な矮小で、明らかに弱い存在が我の求める『クロノ』で無い事は分かっている。名前が同じと言うヤツだろうが・・・貴様、何か持っているな?」
何かを持っているとは・・・何を持っていると言うのだろう?
そんな事は私には知る由もないが・・・
それよりもこの窮地をどう切り抜けるかという事の方がよっぽど重要だ
「ねぇ龍族の【真祖】・・・僕等だけでお話しないかな?」
そんな事を考えている私の後ろから思いもよらないクロノの声が聞こえる
「ク・・・【狂乱】?!!」
今更だという事は理解しながらも狂乱と呼びながらクロノの方へ視線を向ける
すると・・・彼の眼には冷徹な色が窺える
薄っすらと微笑む様は何故か余裕であるという表情を物語っていた
「・・・我と・・・話?」
「そう、貴方と僕だけの話さ。・・・貴方に対して実のある話であると僕は確信しているよ。」
「餓鬼っ!!貴様【真祖】様に向かって何処まで舐めた口を聞きおる?!!」
そういって激昂する赤龍の方へは視線を向けず、真っすぐと龍族の【真祖】を見つめる
その雰囲気に興味が湧いたのだろうか?
【真祖】はフッと笑いながら口を開く
「良いだろう・・・だが、我が納得できない様な話であれば・・・遠慮の無くその首を千切りとるぞ?」
「じゃあそれで。【真祖】であれば別の空間を創造する事なんて容易だよね?誰にも聞かれたくない秘密の話だから、ね。」
「・・・良かろう。」
そう言った瞬間、【真祖】は手を掲げてブロウドが創造した時と同様の渦を顕現させる
クロノは迷わずその渦の方へ進んでいく
「きょ「あぁそうだ・・・【狂悦】、【狂炎】はお客様をもてなしてあげてね?」」
「えぇえぇ・・・喜んでぇ。」
クロノが振り返りそう言った瞬間にサイクスは嬉しそうに応じる
・・・私は今、クロノが何を考えているのか理解できなかった
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