アカノと交渉の本性
「姉さんお帰り。今回は大変な指示を与えてごめんよ。」
そう言って王座から立ち上がり私を労う
けれどもその目は私を見る事なく、私の傍に居る赤龍を始めとした龍族の面々に注がれている
「ほう・・・坊主が小娘の弟か。」
「・・・えぇ如何にも僕が【狂炎ノ道化】の弟にして【狂乱ノ道化】です。・・・姉さんこの方々は?」
「え?!えぇっと・・・こちらに居らっしゃるのが龍族の長である赤龍様だ。今回は同盟前に一度話をしたいという事なのでお連れした。」
突然話しかけられ、しどろもどろながらも返答する
私の言葉を聞いたクロノの表情は今までの優しい表情ではなく・・・ガッカリとした表情に変わる
「はぁ・・・姉さん。」
「な・・・何だ?」
「姉さんは・・・本当に本物の姉さんなの?」
「?!!」
「僕らが再会してから行えた事なんて人族の弱小国を二カ国亡ぼす事しか出来ていないじゃないか。しかも単独では無く誰かの手を借りながら、ね。」
「だ、だがそれは?!!
「その時その時の決意は本物だと思うけれど・・・・【勇者】暗殺は不確かな成功、父さんは【狂戒】に殺して貰い、龍族はわざわざ場所を教えて同行させる?単独で成功している事が何もないんだよ。」
「・・・・・・。」
そう言われてしまうと返す言葉もない
私が完璧に達成している事が無い以上、反論のしようがない
言外に『不要』、『役立たず』と言われている様で泣きそうになって来る
「うむ・・・客の前で小娘を罵倒するとは・・・【狂笑道化団】とは余り礼儀を弁えた組織とは言えぬか。」
赤龍はそう言ってズイと私の前に立ち塞がる
だが軽口を叩く様な口調とは打って変わって視線だけは射殺すかの様な獰猛な視線を向けている
「・・・それは失礼。僕が【狂笑道化団】の頭領を務めさせて頂いております。今回は同盟前の顔合わせと言う様に聞き及びましたが?」
「そうさなぁ・・・そのつもりでやって来た。だ「不要です。」」
赤龍の勿体ぶった言い方をクロノは不要だと断じる
言われた当人も予想だにしていなかったのだろう・・・言っている意味が分からないとでも言いたげな表情を浮かべている
「・・・餓鬼、もう一度言ってみろ。」
正気に戻ると同時に怒りが溢れてきたのだろう
殺気を纏い、クロノの方へ視線を向けてそう脅す
だが・・・
「不要です。そもそも僕等はこの世界の全てを滅ぼそうとしているのですよ?龍族だけ例外視する理由も必要もない。・・・同盟なんて出来っこない事なんて最初から分かっていたのですよ。」
あの弱い・・・人族の中でも無能なと言われていたクロノからは想像すら出来ない
あの殺気をまともに受け涼しい顔をしている理由も、ならば何故私を龍族領へ向かわせたのかも何もかもが分からない
「ほう・・・なら何故小娘を遣いによこした?」
「誇り高いと言われる龍族にそんな交渉を持ち掛ければ戦闘は避けられない。だったら姉さんは龍族を滅ぼしてくれると思っていたのですが・・・流石に予想外でしたよ。貴方方の甘さも、姉さんの愚かさも・・・ね。」
「ようも其処まで言い切ったっ!!」
「ク、クロノ私はっ!!!」
赤龍の咆哮と私の叫び声が同時に木霊する
私たちの声を聞いても尚、涼しい顔を崩す事なく見下した目で薄っすら微笑んでいる
「小娘・・・分かっているだろうが同盟なんぞ成り立たん。主自体は二心があった訳では無い面持ち故に契約は継続してやる。だが・・・」
そう言いながら魔力を身体中に駆け巡らせる
それはあの時・・・私と対峙していた時の様な圧倒的な魔力を包括していた
「この餓鬼は殺すっ!!!!!」
そう言うが否や一気にクロノの方へ襲い掛かる
圧倒的速度故に気付いていないのか・・・クロノは薄い微笑みを崩さない
「クロノーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
そう叫んだ瞬間、クロノと赤龍の間に重厚な壁が突如現れた
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