アカノの事象と師匠
「・・・・・・。」
赤龍との交渉から3日後、赤龍は人化出来る龍族を数名連れ立ち私の誘導でクロノの居る城まで同行してきた
龍族の護衛は全員ローヴで身を隠し、まるで正体を知られたくないかの様な装いなのが多少気にかかる
だが交渉相手の恰好にケチをつける訳にも行かず、そのまま3日間を徒歩で歩いて行く
私としては龍化して貰えれば良いとも思ったのだが・・・『阿保が!儂等を人族に目撃させてどうする?!貴様等の根城がバレるじゃろうが?!』と言われてしまった
今は2日目の夜、近隣の城で野宿をしている様な形だ
明日の早くにはクロノの元へ到着する事が出来るだろう
(それにしても・・・)
焚火を囲い暖をとる赤龍の護衛達に目をやりながらしみじみと考えてしまう
この護衛達はどう考えてもかなり強い・・・
少数故に精鋭を選りすぐったのだと思うが、雰囲気や動作からして【魔王】に匹敵・・・下手をすれば【魔王】よりも強い可能性すらある
「どうした小娘・・・儂の護衛達が気にかかるか?」
「・・・えぇ、かなりお強い護衛を連れていらっしゃるなと。」
そう返答すると「そりゃなぁ。」と可笑しそうに笑う
・・・私はそんなに可笑しい事を答えただろうか?
「今から儂が赴くところは魔窟じゃ。そこに有象無象を引き連れても意味があるまい?」
「貴方とクロノでしたら・・・どう考えてもクロノが秒殺されますよ。」
「かもしれんが・・・主は儂に先日勝利しておろうが?それに他の仲間が居るとすればこちらも油断は出来ん。」
「・・・成程。」
「誰もが行きたいと言った中で選抜した護衛じゃ。中々に手強い面々じゃぞ?」
「その選抜に3日の時間を割いたのですか?」
「その通り!!」
得意満面と言った表情を浮かべる赤龍に若干呆れた表情を浮かべる
すると打って変わって真面目な表情で話を振って来る
「小娘・・・先に言っておくがな、今回の話し合いの結果如何によっては主との契約を切る。」
「なっ?!!」
思わず立ち上がりそうになる程に動揺する
炎系スキルの威力を底上げできている大きな要因は赤龍との契約による所が大きい
私の見立てでは・・・【業火剣嵐】の威力も半分以下になる可能性がある
「先日にも伝えはしたがな・・・あの時に今の主が儂の前に立っていたのならば・・・儂は主に契約を持ちかけんなんだ。」
「・・・・・・。」
「それを問答無用に破棄する事を行わないのは儂の情じゃ。・・・だがそれもこの話し合い次第とする。」
「・・・同盟が成り立たなければ破棄するという事ですか?」
「いやそこまでは言わん。言わんが・・・信ずるに値せん、そんな弟に付き従う主も又、信ずるに値せんと考えた時じゃな。」
「・・・分かりました。」
私にはそう答えるしかない
結局の所、赤龍との契約は赤龍の気まぐれによりして貰っている様な契約だ
対等な契約では無い為、赤龍の方に決定権がある
「まぁ同盟には至らずとも、捨て置いても良いと考えれば契約は維持してやろう。余り小難しく考えるでないわ。」
「・・・はい。」
赤龍はそうは言うが・・・私からすれば死活問題に等しい
私が強い要因の半分近く比率を占めているのが赤龍との契約である事は父さんとの一件以来自覚はしている
「・・・ははっ。」
自分の両の手を眺めながら渇いた笑いが思わず口から出て来る
私が人族最強と言われている所以は称号による恩恵、父さんから習った剣術、赤龍との契約、ゴーガンさんに造って貰った【赤炎】であり・・・その全てが誰かから与えて貰ったモノがあるからだ
父さんの様に研磨した剣術も、ゴーガンさんの様に試行錯誤した武器の製作も、赤龍の様な圧倒的な強さもただの私には何もない・・・
私自身が己の手で成した事柄が何もない
そう結論に至ると何ともやりきれない気分になった
いつも有難う御座います!!
「面白い&期待している」という方は★&ブックマークを是非ともお願い致します!!
ご感想やレビューも心よりお待ちしております!!