アカノの咆哮と交渉
「・・・・・・ですか?」
「ん?」
「もし偽物だったなら何だったって言うんですか?!!!」
私の激昂に驚愕した表情を浮かべる
なにをそんなに驚いているかは理解出来ないが私は構わず言葉を続ける
「クロノは傍に居る!!見かけも口調も声も背丈も・・・実力も弱いままで傍に居る!!そこまで同じ偽物が居るならば・・・それはもう本物でしょう?!!」
「小娘・・・主は一体何を言っている?」
「だって可笑しいじゃないですか?!人族の誰もが考えを替えたり性格が変わったりしますよね?!なのに見かけも声も実力も変わっていないおらず性格だけが変化している事を偽物と言うならばこの世の全ての生物は偽物でしょう?!!」
私の主張にただ驚いた表情で何も答えない
余りのも正論であるが故に反論できないのだろう
「そんな私の弟が貴方達との同盟を望んでいるのです!!【狂笑道化団】との同盟を受け入れなさいっ!!」
「・・・・・・。」
私の恫喝をも含んだ叫び声は部屋中に木霊する
だが・・・当の赤龍本人は目を見開き驚愕するだけで何も答えなかった・・・
◇
◇
「・・・小娘、主は詰まりはこう言うのじゃな?偽物本物の区別なく・・・今傍らに居る弟こそが弟だと。仮に・・・本当に仮の話じゃが、何処かに居るかもしれない本物の弟は弟ではないと。」
「・・・何処かに居る?」
「儂は主の弟と出逢った事など無いからこその仮定の話じゃ・・・その弟は最早主の弟では無いと断ずるのじゃな?」
「・・・そんな事は無い。もし出逢ったなら、よりクロノに近いクロノがクロノであるに決まっている。」
「だが主の理屈では全てが変化するのじゃろ?全く変化していない弟と想像よりもかけ離れた弟・・・主はどちらを選ぶのじゃ?」
「~~~私はどちらが本物のクロノは分かるっ!!!どれだけ変化していようと、変化していまいと私だけは・・・分かる!!!」
「成程・・・重症じゃの。」
私の宣言を聞き、赤龍は再度考え込む・・・
私はクロノの事を聞きに来た訳では無い
ただ同盟に応じるか否かを交渉しに来ただけだと言うのに・・・
苛つく感情が抑えきれない
「・・・よし小娘、儂はお前に付いて行くぞ!!」
「・・・え?」
赤龍は唐突に意味が分からない事を提言してくる
正直・・・意味が分からない
「分からんか?・・・同盟を組むにせよ組まんにせよ頭首同士が顔を合わせずして成り立つ様な話では無かろう。主と共に山を下り、弟とやらと話してやるわ。」
・・・これは正直予想外だった
赤龍が言っている理屈は理解できる
正論であるとも言えるだろう
けれど・・・強さに誇りを持ち強さにしか興味を示さない龍族の長自らが出向いてくる提案をしてくるとは予想もしていなかった
「だが同盟を断れば命を奪って来いと指示する輩が相手となると・・・流石に単身で出向く事は出来ん。何人か見繕い同行するが・・・構わんな?」
「・・・・・・。」
私は無言でコクリと頷く
赤龍の提案は余りにも正論過ぎる
その為に拒否するという選択肢は実質無いに等しい
(それに・・・。)
私個人としても可能な限り龍族を屠りたいとは微塵も思っていない
可能であるならば龍族と同盟を結んで共に共闘していきたいと思っているのは偽らざる本音だ
「・・・分かった。」
「ふむ、承諾してもろうて良かったわい。では人選するが故に3日程の期間を貰うぞ?」
「3日?!!それは余りにも長すぎる!!!」
私がそう反論すると顎髭を撫でながら首を横に振る
その仕草にはどうあっても譲れないという意志が浮き彫りになっていた
「悪いが小娘・・・主らには主らの都合がある様に、儂等には儂等の都合がある。突然持ち掛けてきた話にも拘らず3日程度も待てない道理はないじゃろう?」
そう言われてしまうとぐうの音も出なかった・・・
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