アカノの交渉と本性
「・・・して小娘、度々この地に訪れるとは・・・命でも捨てに来たか?」
眼前の赤龍が私を睨みつけながら重い口を開く
クロノの命を受けて龍族領に入った私は赤龍と契約をしている事も有り、大広間に通されスムーズに逢う事が出来た
だが・・・当人が非常に警戒しながら私の真意を探る様な表情を浮かべている
「えぇ・・・今回は龍族にお願いが有って参りました。」
「断る。」
「?!」
内容も言わない内に断られてしまっては、私が来た意味が全くない
そもそも私は弁が立たない為に・・・駆け引きだったり、交渉の類は致命的に苦手としている
「・・・何故ですか?」
「良いか?人族が度々訪れる理由は大体ロクなものではない。やれ契約しろやの国を滅亡させてくれ等、お前らが儂らにぬかすのは大体同じ内容よ。」
「・・・・・・。」
的確にこちらの要望を読み取られてしまい、私自身も言葉に詰まる
その表情を見た赤龍はどうやらそれも把握したらしい・・・侮蔑の表情で再度口を開く
「・・・主も変わったな。」
「・・・え?」
「しかも悪い意味で、だ。今の主があの時我が眼前に立っていたなら・・・儂は間違いなく契約などしなかっただろうよ。」
そう言った赤龍はこれ以上何も話す事は無いとでも言いたげな雰囲気を醸し出しながら席を立とうとする
「ま、待てっ!!せめて話位は聞いてくれ!!」
「・・・・・・。」
そう懇願すると・・・冷たい表情は変わらないものの、再度坐して私の言葉を待つ
此処から私の言葉で目の前の赤龍を説得できるだろうか?
・・・正直全く出来る気がしないが、それでも・・・説得すると言う選択肢しか存在はしなかった。
◇
◇
「・・・・・・。」
私の言葉に耳を傾ける赤龍は目を閉じて相槌をうつでも無く、ただ私の言葉を聞いていた
私は私で今の人族領と魔族領の現況と、【狂笑道化団】に在籍して行おうとしている事、クロノに龍族と同盟を組んでくる様に指示された事・・・そして同盟が成立しない場合は・・・龍族領を攻める様にも指示された事も赤龍に告げた
だが龍族を襲撃する事を告げたにも拘らず、赤龍は微動だにしない
激昂して襲い掛かって来るか、さっさと退室していくかのどちらかだと思ったのだが・・・
「・・・のぉ、小娘。」
「・・・はい。」
暫しの沈黙を貫いた後、徐に口を開く
だがその声色には激昂する様な口調は欠片も無い
「主の弟は・・・本当にお前の弟なのか?」
「・・・どういう事ですか?」
「主が儂と契約した時にのたまっていた人物像と、主に指示した弟の人物像が儂の中で一致せん。」
「・・・・・・。」
そう言われて私も赤龍と契約した日を思い出す
その時に私が告げたクロノの人物像・・・『弟は弱いが、優しく、頭が回り、努力を怠らず、自分の周りに居る全てを慈しむことが出来る自慢の弟だ!!だからこそそんな弟を守るべき為に私には力が必要なのだ!!』
私は過去にそう言った・・・
「主の弟は周りに強者が集った瞬間に世界を敵に回そうとした。だが・・・だったら主が傍に居る間でも世界とは言わずとも国や街で同じことをやっていてもおかしくないのではないか?」
「・・・!!そ、それは魔族に拉致された時に全てを捨て去る程の何かがあって!!」
「その何かとは・・・何じゃ?」
「・・・・・・分かりません。」
「勘じゃがな・・・お前のぬかしていた弟と主の傍に居る弟が儂の中では一致せん。」
「・・・・・・。」
「この世には【宝玉】、【スキル】、【魔法】という悪人にとっては便利この上ないもんが溢れかえっておる。主は傍に居るクロノが偽物ではない・・・そう言い切れるのか?」
赤龍の言葉に父さんの言葉が脳裏に蘇る
クロノがクロノではない・・・?クロノは魔族になった・・・?クロノは・・・クロノは・・・
答えが出ない問題が脳を支配し、私は思考を停止し始めた
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