イファンの真相と深相
「兵士達で・・・他国を侵略しようと言うのですか?」
後ろの方で司教が訳の分からない事を言う
この司教は贅肉だけは一丁前の癖に私の言葉を聞いていなかったのだろうか?」
「侵略では有りません。本懐はその国に住まう民全てを受け入れるのです。そうすれば【狂笑道化団】なる輩に対して「同じことですっっ!!!!」」」
私の言葉を遮り、恫喝的に吠える様子には憤りが滲み出ている
でも・・・私はそれ以上の憤りを感じずにはいられない
「良いですか?!!受け入れとは飽くまで要請された上で成り立つ事象です!!兵士を出向かせ、この場所へ誘導するのは捕虜だと思われても致し方ありません!!!」
「・・・嘆かわしい事です。」
「えぇ!!【聖女】様からすればその様な意図が無い事は私たちは理解しております。ですがそれが国交というものであって「私が嘆かわしいと言ったのはそう言う意味では有りません。」」
そう言って敵対する者を睨みつける様子を民衆に見せつける
この司教が言っている事は至極真っ当ではある
真っ当ではあるが・・・時代と私の都合には合っていない
「私は司教足る立場である貴方が【狂笑道化団】のメンバーであったという事実が嘆かわしいと言ったのです。」
「なっ?!!」
私がそう告げると同時に身体は硬直し、表情は驚愕に溢れている
「貴方の言う事は一見正しいと言えるでしょう・・・。ですがそれは非常時ではないという条件が付きます。今・・・この世界全てが存亡の危機に晒されている中でその様な甘言で我らを惑わせることが可能だとおもっているのですか?!!人族は今一丸となって【狂笑道化団】や、もしかすると魔族と戦わなければなりません!!なのに戦力を分散して人族に勝機がある訳が無いでしょう!!!」
「だ、だがっ「黙りなさいっ!!!」」
「その様な姑息は意見を押し通そうとする等、間違いなく【狂笑道化団】のメンバーですね!!兵よ、この者を可能であれば取り押さえなさい!!難しければ殺しても構いませんっ!!!」
「く、来るなっ!!ち、違う私は違うっっ!!!」
私の号令の下、一斉に兵士達は司教を取り押さえるべく向かっていく
そして大広間に集められた者たちは突如始まった捕物劇に対して「おぉぉ!!」と興奮した様子を見せ、私は『転』が成功した事を確信した
司教が取り押さえられ騒然となった広間の中で私は今日一番の大声を張り上げる
「皆さまっ!!敵の甘言に惑わされてはいけません!!!敵が恐れるのは私たち人族が数の有利を活用し、一丸となる事が一番嫌がる手段です!!私たちは私たちの手によって人族の勝利をインスラン神にご報告しようではありませんか!!!」
「「「うおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」」」
今日一番の歓声が大広間に鳴り響く
この瞬間から、人族によって最も敗北に近い策が決定した瞬間だ
私は内心ほくそ笑みながら舞台を後にする
◇
◇
・・・余談ではあるが、大広間に集まっていた王族、貴族、平民たちの支持により各国兵士たちは近隣諸国へ出兵し、大多数の人族達をこの地へ誘導する事に成功した
だが何事にも例外がある様に、少数ながらもこの対策に反対する平和ボケしているのか時勢を読んでいるのか分からない人族は確かに存在した
けれども人族が他種族に勝る唯一のアドバンテージである数で以って反対派の人族は粛清を行った
もし今後、人族が生き延びたのなら私は史上最悪の【聖女】として語られる事となり、誰一人生き延びる事が出来なかった場合は・・・あの御方だけが私と言う存在の記憶を残してくれる事になるだろう・・・
それを思うと高揚した感情と恍惚とした表情を止める事が出来ない
あぁ・・・ブロウド様・・・私の存在の全てを貴方様の為に・・・そう信仰し・・・私は今宵も営んだ・・
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