アカノと吸魂の開花
どれ程の時間を剣戟を合わせただろう
通常であれば1分も掛からずにスタミナ切れを起こすか、私に斬られているだろうにこの男は応酬に付いてきている
「はははは!!ここまで楽しいのは生まれて始めてだ!!」
山賊の部下達は助太刀する事も出来ずただ傍観しているみたいだ
「おいおいおい!!何とか言えよ!テンション上がらないのか?!」
繰り出す剣撃とは対照的に軽い口調で話しかけてくる
「残念ながらテンションは上がらないな…だが貴公程の力があれば山賊にならずとも士官の道はあっただろうに…という疑問は湧いてくるがな。」
「あぁ~?そんなこと聞きたいのか?」
「あぁ、残念ながら興味がある。お前の動きは人族の動きを超越している節があるからな…気のせいというやつならば良いのだが…」
「まぁ気のせいだろうよ!!こんなこと誰も想像が出来ねぇ、よっと!!」
ガァンという鈍い金属音が鳴ると同時に相手が距離を取る
「しっかしまぁ、人族を超越だのなんだの言いながらも、それを余裕でいなすお前はやっぱ化け物だな。」
「…余裕でも無いし、それは褒めてないだろう。」
「いやいや、俺からすれば最大級の賛辞なんだぜ。」
そう言いながら部下の方へ視線を向けた
「おい!野郎ども!!こいつぶっ殺してほしいか?!」
「「「おーーー!!」」」
「「仲間も殺された!!お前らも憎いだろう?!!」
「「「おーーーー!!!」」」
「「「今からこいつぶっ殺してやるからよぉ!!!」」」
「「「おーーーーー!!!!」」」
「お前らの魂よこしやがれ!!!」
「「「おーーーーーー!!!」」」
部下たちの声援を聞くと満足そうに頷いて、眼帯を外している?
「よぉしよし、言質とったからなぁ…」
眼帯を外すと青い水晶玉の様な物が目にはめ込まれており微かに光っている様に感じた
「お前らの魂を寄越しやがれ!!!【吸魂】!!!」
そう言うと同時に男の身体が黒い魔力に覆われる
それと同時に部下たちが次々と倒れ出した
「あぁぁぁぁぁ…こいこいこいこい!!!」
うめき声をあげたと思えば、足元から徐々に変質していく
足はより太く黒くなり、上半身は大きくなり筋力も目に見えて強くなっている
腕も太く大きくなったかと思えば、顔は骸骨の様な仮面に覆われ角が2本飛び出してきた
『あぁぁぁぁ…流石にこの姿になったのは初めてだが…良いなぁ…』
男だった者、いや最早化け物の様な容姿をしたそれは腕を振りながら馴染ませている様だった
「貴公は、先程の山賊のボスか?」
『あぁ、そうだ。』
「貴公は…何故その様な姿になった?」
『何故?あのゴミくず達の魂を吸い上げたんだよ。塵も積もればってやつだ…な!!!』
そう言いながら火球を飛ばしてくる
「くっ!!!」
それを避けながら前方に詰め寄り斬りつける
『おいおいおい、その攻撃はさっきも見たぞ。』
そう言いながら私の攻撃を片腕で止めていた
後方に飛びながら斬撃を飛ばし相手に命中させた
斬撃が命中した事により煙が舞う
『この攻撃は初めて見たが…さっきの斬撃より弱いんじゃ話にならねぇよ。』
そう言いながら現れた化け物に微かに切傷があるだけだった
「…だろうな。」
そう言いながら剣を構える
「ソニックブレイドショット!!!」
スキルを発動させて斬撃を無数に飛ばすが事もなげに前進しこちらに詰め寄ってくる
『だからよぉ…お前は斬撃飛ばすよりも直接斬り込んできた方が可能性があるんだよ。』
そう言いながら奴の右拳が真っ赤に燃える
『ファイアイーター!!!』
右拳を土中に突き刺した瞬間に炎の大波がこちらに襲い掛かる
「はっ!!!」
私は上空に飛んで奴の背後に着地しながら斬りかかる
『なんだ…背後をとってもこの程度かよ。これじゃぁこの姿になった価値がねぇじゃねえかよ…こちとら二度と人族に戻れないんだぜ?もっと楽しませろよ?』
「…戻れない?」
やはりだ…
やはり私の気のせいではなかった
『おう。知らねぇとは思うが【魔造宝玉】ってやつだ。』
やはりこいつの目に埋め込まれていたのは【造られた宝玉】だったみたいだ…




