イファンの侵攻と真相
暫しの間、大広間全体に歓声が鳴りやまない
だれもがその場の万能感に酔いしれ、恐怖から逃れるだけの為に決起という偽酒に酔った振りをする
その反応を見ながら辟易とした気持ちにもなってしまうが・・・
これも神の為だと自分に言い聞かせる
「では具体的に【狂笑道化団】を排除し、勝利するをインスラン神へ捧げる手段を皆さまにお伝えしましょう。」
私がそう告げるとあれだけ歓声が響いていた大広間がシンとする
それこそが無理やり酔おうとしていた事の証左なのだが・・・彼らの何人がそれに気付いているのだろう?
「・・・先ず世界を敵に回している【狂笑道化団】ですが、規模も人員も場所も何もわかっていません。これはあの放送の主の声から推測するに紛れていると考えられます。」
「紛れている・・・ですか?」
私の後方に待機していた司教の1人が私の言葉を反芻する
その言葉をきっかけに頷き、言葉を続ける
「そうです・・・如何に大人数だったとしても根城も持たず、誰にも見られず兵を導入し一国を滅亡させる事なんて普通は出来ません。出来るとすれば・・・暗殺です。」
そう言うとザワッとした声が広間に広がる
「先ずは【狂笑道化団】のメンバーを敵の味方へ偽装する。その後王やそれに連なる者を暗殺する。混乱する国内を偽装したメンバーが一斉に蜂起し、国を蹂躙する。そうすれば進軍される目撃者がいないのも納得できます。」
「な、成る程・・・。」
「つまり相手は何人かは分かりませんが・・・様々な国に紛れ込んでいるという事です。という事は・・・今、この場に居らっしゃる皆さまの中にも【狂笑道化団】の手の者が居ても何らおかしくは無いという事になります!!」
そう告げた瞬間、悲鳴に近い様な雄叫びと「俺じゃない!!」「私でもないわっ!!」等と自分では無いと主張する声があちらこちらで聞こえてくる
(・・・全く、【狂謀ノ道化】の案には恐れ入るわね)
此処には居ない【魔王】を脳裏に浮かべながら内心で賞賛半分、皮肉半分の感情を吐露してしまう
けれど、此処からが勝負手だ
あの【狂謀ノ道化】はほぼ成功すると言ってはいたが・・・逆説的に言うと失敗も有り得るのだ
「・・・静まりなさいっっ!!!!」
手に持っていた杖を地面に打ち付け、私は大声で全員を咎める
私の迫力に押されたのか、はたまた魔力に委縮したのか・・・先程の混乱が嘘の様に静まり返る
「私は何も皆さまを混乱させようとこの様な事を申した訳では有りません!!それに・・・この中に【狂笑道化団】のメンバーが居ても関係無い策を既に思い付いております!!!」
「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」
「対策は非常に簡単です!!奴らが嫌がる様な対策を立ててやれば良いのですっ!!その対策に反対する者こそが【狂笑道化団】のメンバーだという事になります!!!」
私がそう告げると目に映る人族の誰もが納得した様な表情を浮かべる
「そしてその対策ですが・・・今から各国の兵士の方には貴方方と同じ様に近隣諸国の王族、貴族、平民等の区別は一切なく、全ての人族を此処に集めて頂きます!!如何に【狂笑道化団】のメンバーが紛れていようが人族100名に対して精々1名居るかどうかという所でしょう。味方を集中させれば、敵も少量増えるでしょうが・・・それ以上に正面から攻めて来た場合の兵力向上になるというメリットが御座います!!早速兵士の皆様には出立をお願い致します!!そして・・・もしそれに反対する人族が居ればですが・・・」
一呼吸の時間をおいて、私は更に口を開く
「その人族は【狂笑道化団】のメンバーである可能性が非常に高くなります。その様な者が居れば・・・その場で斬り捨てて下さい。」
私がそう告げると同時に、大広間には静寂が訪れた・・・
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