イファンの信仰と進行
「【聖女】様、近隣諸国の王族や民に声を掛け、3ヶ国の人族の受け入れが完了しました。」
「・・・そうですか、お疲れ様です。ですがその殆どから外れた者達は何を?」
眼前で首を垂れる司祭に対し、少しばかり威圧感を含めた口調で言葉を返す
すると無駄に脂ぎった体躯から異臭でも漂ってきそうな位に汗を滲ませる
「そ、それが・・・残りの者は所謂孤児や頬に傷がある様な者達でして・・・王族や貴族たちが同じ空間に居る事を良しとしませんでして・・・。」
なにそれ・・・下らない
この世で一番影響力のある宗教の【聖女】であり、この世で一番あの御方に対しての信仰に厚い私が・・・あの御方の為に指示した事を行わない、従わないこいつ等は何の為に生きているのだろう
「プルカ司祭、私はこう指示しました。近隣諸国の王族貴族、平民その他全ての人族を我が領内に受け入れなさいと・・・。」
「は・・・はい承知しております。」
「承知しているにも拘らず・・・全てを受け入れる事も出来ないのですか?!!!」
思わず手で握っていた状を司祭に向かって投げつける
贅と肉が詰まっている体躯では避ける事すら出来ない様で頭に直撃する
「ひ・・・ひぃ!!お・・・お許しくださいっ!!!」
額から血が流れる事も厭わないという様で表情を造り、再度謝罪を繰り返してくる
この馬鹿は謝罪しか出来ない絡繰り人形は何かなのかと思いながらも語気を強めて再度指示を出す
「良いですか、プルカ司祭。近隣諸国の王族貴族、平民その他全ての人族を我が領内に受け入れなさい。全てですよ!!!」
「は・・・ははぁぁぁぁーーーー!!!!」
仰々しく一礼を行い、巨体を揺らしながら出て行く様は醜悪以外の言葉は浮かんでこなかった
腰を掛けて夢想する
「ふ・・・ふふふ・・・もう直ぐです。もう直ぐ私の信仰が形になる・・・。」
神を崇め、神を敬愛し、神を信仰する
私、【イファン=ロードベル】が生まれた意義も価値も理由も・・・全てはあの御方の為だけだ
「人族魔族の区別なく・・・全てが息絶えたのならば・・・褒めてくださるでしょうか?・・・敬愛しております・・・ブロウド様。」
そう呟き、暫し至福の時間に身を任せた・・・
◇
◇
ザワザワザワ・・・・
大広間に集められたやんごとなき身分の方々が不安そうな表情で話し合っている
私はそれを袖幕から眺め、観察を行う
私は今から彼らに向けて受け入れの挨拶を行う手筈となっている
先程の司祭だけではなく司教、大司教等も舞台の中央に陣取り、重々しい表情を浮かべていた
(まぁ・・・奴らからすれば当然でしょうね。)
これだけの数の人族を受け入れてしまえば食糧問題は当然として、犯罪率の増加や居住スペースの確保等と様々な問題が生じて来る
更に国家間の軋轢による闘争がこの聖地で起こるかもしれない事を危惧しているのだろう
(まぁその心配も直ぐに解決するけれども・・・)
彼らは詰まる所欲深いのだ
あの御方に対しての信仰さえあればその他の全ては些事に過ぎないのだ
それをやれ食料の確保だの、聖地での紛争だの、身分だのと下らない事に身を削り過ぎている
そんな哀れな罪人たちをあの御方の為に浄火してあげるのだから感謝くらいはして貰っても良いとは思う
・・・まぁ、どうでも良いけれど
そんな事を考えながら袖幕から舞台中央に向かって私は歩き始めた
急ぐでも無く、牛歩の様でも無く、私が私であるいつものペースで中央迄歩いて行く
そして予定の場所に到着し、舞台から集まった人族たちの方を向くと・・・先程迄あんなに五月蠅かった筈の誰も彼もが物音1つ立てないかの様にシンと静まり返っていた
(やれば出来るじゃない・・・)
内心でそうほくそ笑みながら私は言葉を発しだした
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