サンドラの抑揚と鷹揚
「一欠けらの・・・いの、ち・・・?」
そう声する方へ拳を振り抜くが空を殴るだけに終わる
ダメージは然程蓄積されていないが、苛つきだけは止まらない
バルデインの命が残り僅かな事
バルデイン如きに良い様に踊らされている事実を受け入れる事が出来ない
「そうよっ!!!我はあの気持ち悪い男に命をツギハギにされて別モノの魔族として形成されたのだっ!!」
我自身も小難しい事など理解は出来ない
だが・・・あの気持ち悪いにやけた男は脳を分解やらけつ・・・なんとか言っていた
我が理解出来ない事がコイツに理解できる筈もない
「つまり・・・貴方は・・・サンドラでありながら・・・サンドラではない・・・と?」
「誰が呼び捨てにする事を許可したぁぁぁーーーーー?!!!!」
そう言って声する方へ打撃を繰り出すが・・・相も変わらず空を切るばかりで手ごたえが無い
一撃でも入れる事が出来れば我の勝利は決まる
だが・・・その一撃が限りなく遠く感じた
「私の・・・毒も・・・そろそろお終い・・・です。貴方の・・・首を刈って・・・終わりにしましょう・・・。」
「この・・・愚か者がぁーーーーーーー!!!!」
そう言って攻撃の動作を仕掛けるが、奴の素早さが圧倒的に我を凌駕しているのは明らかだ
我は愚王ではない・・・認めるべき所は認め、その対処も適切に行わなければならない
我のプライドが為に・・・この憎しみを達成出来ない事の方が我にとっては痛恨の極みだ
そう我自身に言い聞かせ・・・バルデインの一撃に備え防御態勢を取る
「さらば・・・です、前・・・魔・・・王よ!!!」
「ぐぬぬぅぅ・・・・」
バルデインの声が聞えた瞬間に首筋に今までに無い痛みは走る
このままでは如何に物理耐性に秀でている我であっても首を刈られる事は間違いないだろう
だが・・・
「・・・アイスソード。」
「があぁぁぁ!!!」
一瞬膠着した隙に魔法を発動させ、複数の氷剣をバルデイン突き立てて地面に叩き落す
首筋には僅かながら斬られた箇所が出血する所を見ると・・・やはり渾身の一撃だったのだろう
我自身ではなく付属品のスキルを使用したのは、我自身でコイツを倒せなかった様で非常に不愉快ではあるが・・・我の憎しみの前では止む無しと思う事にしよう
「こ・・・これは?!!」
「・・・ん?」
足元で最早身動き出来ない不忠者の驚いた声色が聞こえる
まぁ、我自身はこの様なスキルを持っていなかったのだから致し方ないだろう
「良い様だな、不忠者。」
「・・・こ、この魔法は?!」
「我と同様の一欠けらから抽出したらしいが、我にとってはどうでも良い事・・・だっ!!」
「がっ!!」
地面に蛙の様に這いつくばるバルデインを蹴り上げながらそう答えてやる
最早回避も防御もせずにまともに喰らう様を見るに、先程に大技を発動させようと力んだ所為で魔力もほぼ枯渇し、毒も身体中に回り切った様だ
「無様だ、なっ!!貴様は何も守れ、ずっ!!我に嬲られ、るっ!!」
蹴り上げる度にゴンッゴンッと子気味の良い音が鳴り響く
そしてその音をより映えさせるかの様なバルデインが呻く声は我の気分を高揚させるには充分なスパイスだ
「そうだ・・・不忠者、我はこう言う事も出来るぞ?」
そう言って指先に火球を発動させ、バルデインの背中を焼いていく
「が!!がああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!」
肉の焦げた臭いが、仏頂面で感情の起伏に乏しかった顔が苦痛に歪み、抑揚が無く淡々としていた声が喉が張り裂けんばかりに叫び声をあげていく
「ふ、ふふふ・・・ふはははははははははははははははははは!!!!!!」
楽しい!!
我はこの瞬間をずっと待っていたのだ!!
ずっとずっと待っていたのだ!!!
「ははははははははっ!!不忠者、まだだぞ!!まだ死んでくれるなよ?!!」
そう言ってただひたすらに嬲り尽くした
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