サンドラの咆哮と方向
「そうよ・・・我こそがサンドラ=アーガランドよ。貴様は何処までも不忠者よなぁ?」
そう言いながらバルデインへ近づいて行く
当の本人は未だ信じられない様な表情を浮かべているが・・・そろそろ正気を取り戻してほしいものだ
「あ・・・有り得ない筈だっ!私の身には未だ毒が回っている!!」
多少混乱しながらも己の毒が消えていない事を確認したのか・・・
姑息ながらも相も変わらず頭が回る奴よ
「確かに【支配者ノ猛毒】は消えていないだろう。だがな、どんな形であれ・・・我は我よ!!」
そう言って威嚇すると、周りの鳥族と天使族の歩兵は我の圧で固まる
弱者とは罪・・・そんな言葉が脳裏によぎる
「兵たちは城に籠れっ!!あの者は私が止めるっ!!!」
バルデインはそう発破を掛けながら退却を命じる
相も変わらず甘い男だと思いつつも、鳥どもに復讐の邪魔だてをされては面白くない
「主らも邪魔だ・・・死にたく無くば本陣で震えておれ!!!」
我も呼応する様にそう叫んで歩兵たちを下がらせた
◇
◇
「・・・本物の前【魔王】ですか?」
「・・・前?我は未だに主らの【魔王】であろうが?」
そう言いながら拳の骨を鳴らす
あぁ・・・この瞬間が来る事を心から望んでいた
「いいえ、私の主は【黒家クロノス】の【魔神】様です。【獣王国サンドラ】は無くなりました。」
「馬鹿がっ!!我が居る限りサンドラは消えぬわ!!!誰が死のうが我が居る限りなっ!!!我こそが【獣王国サンドラ】よ!!!」
「・・・貴方のそう言う所が、サンドラが死んだ理由です。」
「相も変わらず口は達者だな。だが・・・闇討ちでしか我に攻撃出来なかった実力はどうだ?少しは達者になった・・・か?!!」
そう言って一気に距離を詰めて腹部を狙う
それを察知していたのか、2歩程後退して我の攻撃に合わせて剣を振り抜いて来る
「かっ!!その程度の攻撃回避する間でも無いぞ?!!」
バルデインの斬撃をものともせず、更に拳を撃ち込む
すると「ぐっ!!」と声を漏らして後退していく
「どうした騎士団長よ?その程度で我の騎士団長が務まるのか?」
「・・・言ったはずだ、私の主はクロノスの【魔神】様だ。」
この馬鹿は我が居るにも拘らず、他の者に与する不忠ものだ
だからこそ我を暗殺しようとしたのだろうが・・・
「そうか・・・では主の様な脆弱で不忠な者なんぞ要らん。さっさと死んで逝け!!!」
拳に魔力を充填させ、バルデインに向けて射出する
それを回避する動作を見せた隙に拳を地面に叩き込みスキルを発動させる
「『獣震』っっ!!!」
「おぉぉぉ!!!!」
『獣震』を発動させたことにより、周りの地面に亀裂が走り土壌が盛り上がっていく
それにより足場が崩れた隙をついて一気に追撃を掛けた
「なっ?!!がぁーーーー!!!」
まともに左腹部に拳がめり込み、そのまま奴は吹き飛んでいく
さらに追撃をかけて行けば勝負は早々に決するだろうが・・・我は歓喜に打ち震えておりそれ所では無かった
「・・・これだ!!これこそが我が望んでいた感触よっ!!!有象無象を幾ら殺そうと満たされなかった・・・この感触こそが恋焦がれたものよ!!!」
震える拳を震える拳で震えを止めようとするも、震えが止むことは無い
心は打ち震え高揚し、いつも以上に実力が出せる様な気さえする
もっと味わいたい・・・もっと嬲りたい・・・そんな我の渇望に応える様にバルデインが立ち上がって来る
「どうだ?これこそが我の憎しみの強さよ。主には万に一つの勝ち目も無いぞ?」
「憎しみの強さ・・・」
「そうよっ!!貴様如きに撃たれた無念と羞恥っ!!!我を憎しみの目で睨みつける愚かな娘!!我の思い通りにならない有象無象の民!!それら全てに向けて込めた憎しみの一部よ!!!」
そう言った我の咆哮は・・・より我に力を与えてくれる様だった
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