狂滅の復讐と熟成
「では【狂滅ノ道化】とやら、儂等が壊滅する様を視認しておくが良いぞ?」
そう言って目の前の鳥爺が偉そうに講釈を垂れやがる
顔合わせが済み、アンギスに来た俺は内心さっさと全てを壊したいという衝動を抑えつつ過ごしている
そうしていると敵味方の区別なく強者を選別して我慢を重ねるのは中々骨が折れる
目の前の鳥爺も【魔王】の中では強い部類ではあるが・・・それでも我の腹の足しにはならんだろう
ーーチュドーーーンーー
ーーチュドーーーンーー
そう言って思考の海へ身を投じていると、どうやら戦が始まったらしい
そこらから魔法が破裂する轟音がなり響く
「天使族めが・・・相変わらず鬱陶しいものを・・・。」
横に居る鳥爺が憎しみを乗せた様な声色で呻きだす
我も余り詳しくは知らぬが、鳥爺の種族は天使族と悪魔族に対して確執がるらしいからな・・・
宿敵とも言える相手と対峙すればそうなる事も理解出来ないではない
「宿敵・・・か、ククッ。」
我にも宿敵が、居る
憎きアイツを思い浮かべるだけで血は沸騰したかの様に熱くなり、頭の中には殺意の言葉しか浮かばなくなる
だが憎しみは熟成させればさせる程に濃厚となり、達成させた時の快感は得難いものだ
時間で薄まる憎しみ等は憎しみでは無い
「先ずは・・・アイツを殺す・・・そして・・・アイツを殺す・・・そして・・・アイツは場合によっては・・・殺す・・・最後に・・・アイツ等も・・・殺そう。」
消えない憎しみを抱えたまま死ぬ事は死ぬ事よりも辛い事だ
我は身を以ってそれを経験している
純然たる憎しみで以って、我の憎しみの鎖を断ち切ろう・・・
「くっ、使えぬ馬鹿共が!!!儂自らが出向く!!!貴様等は露払いせいっ!!!」
殺意を抱いているとどれ位の時間が経過していたのかは知らぬが、鳥爺が直接相手の城に向かって突撃する様だ・・・
我自体は付いて行く気も毛頭ないが、鳥爺も我を使うという選択肢は無かったみたいで我には声を掛けていない
(やれやれ・・・何処までやられてるのだ?)
全く戦場を把握していなかった我は、その場から跳躍して戦場全体を把握しようとした
我程となると、跳躍のみで全体を把握する等は造作も無い
「成程・・・鳥人族は7割壊滅だな。飛んでいる奴等は魔法の的で地上戦も明らかに攻め切れていない・・・っっ!!!!!!!!)
相手国の指揮する兵の1人を見て、自分の行動が高鳴るのを感じる
そのまま地面に降り立ち・・・気を静める
「・・・【魔王】よ、我は地上から相手国を攻めてやろう。」
「それは良い、が・・・」
「ではな、その様な間柄ではないが健勝を僅かながら願ってやろう。」
我はそう言い残し、相手の言葉も聞かずに見つけた兵が居た地点まで一直線に向かっていく
(見つけた・・・見つけたぞ!!!見間違うものか?!!!アレは我の獲物だっ!!!我の憎しみの根源の1つだ!!!)
もっと我慢してもっと熟成すれば・・・もっと美味い美酒を味わえるかもしれない
だがもう無理だっ!!!目の前に根源を見つけてしまえば我慢なんぞ出来る訳が無い!!!
我の腹の足しに成り得る相手を前に見なかった事にできるものか!!!
「・・・そうだろう?バルデインよ。」
我とバルデインの直線状に居た鳥人歩兵を切り裂いてそう問いかける
すると驚いた様な表情を浮かべ、鎗を突き立ててくる
「その様なお遊戯で我を殺せるわけが無いだろう、愚か者よ。」
バルデインの放った突撃を片手で受け止め、再度そう問いかける
だがそう告げても何のことか分からない様な表情で我を見る
「・・・貴様は何者だ?」
「何者?カカッ、何者と来たか・・・・」
流石だ!!流石バルデインだ!!!
我の神経を逆撫でさせる術を完全に心得ている!!!
そんな手にやすやすと引っかかってやるほど・・・
「この無礼者がっっっっーーーーーーーーーーー!!!!!」
力の限り槍を放り投げてから仮面を外す
例え主君が仮面を被ろうとも、主君が理解出来ないという事は無礼以外の何物でもない
「・・・ま、【魔王】様?」
そう言って呆然と呟くバルデインの表情で少しばかり溜飲が下がった
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