アカノの資格と自覚
「貴様ら・・・許さん・・・ぞ・・・」
血反吐を吐きながらその様な怨嗟を紡いで目の前の老人はこと切れた
この老人が死んでしまえば許すも許さないも無いと思う
頭に冠していた王冠は地に落ちて、カランカランと儚げな音を響き渡らせる
「クロノ様ぁ、此処から私たちの存在を喧伝するのでしたよねぇ?」
そう言ってサイクス・・・いや【狂悦ノ道化】がクロノへ声を掛ける
この男はルールの1つも守れないのかと嘆息しながら口を開こうとすると横から女性の声が聞こえる
「【狂悦ノ道化】、貴方は敵地で名前を出す愚かさを理解できていないのですか?」
「イファンさん、そうは言いますがねぇ~?道すがら全ての人族を薙いで来たのですよぉ?今更誰も残っていませんよぉ。」
「・・・だからお前は愚かなのだ。余す事無く細部まで確認出来た訳でも無いだろうが。」
「なんですかぁ~私が悪者ですかぁ?」
そう言ってヒャヒャヒャと嗤う様が癇に障る
どうやらそれは私だけでは無く、当人以外の全員がそう思っているだろう事が互いに仮面越しでも理解できる
「これだから君とは相容れないんだよ・・・自分の悦楽の為に周りに気を遣わない。」
「新参者にまで説教されるとはねぇ~。」
「そんなつもりは無いよ。ただ【狂信ノ道化】が言った通りだなと思って・・・ね!!」
そう言った瞬間、【狂楽ノ道化】は王座に向かって魔法を複数放つ
すると王座は瓦解し、まだ10歳位の王子らしき子供がガタガタと震えた様子で姿を現した
「あ・・・あ・・・」
「ね?【狂悦ノ道化】、何か言いたい事はある?」
その男の子を視認すると両手を挙げ、降参というジェスチャーをする
こいつの言葉や仕草に一々苛つく自分自身にも腹ただしく感じる
「分かりましたよぉ、私が悪う御座いましたよぉ。クロノ様・・・【狂乱ノ道化】様ぁこの子供はどうしますぅ?」
どうするか・・・つまり誰が殺すかという事だろう
今更子供を1人殺す位で良心の呵責がより痛むことは無い
痛むことは無いが、率先して行いたい訳でも無い私は黙する事にした
飽くまで私の最優先事項はクロノであって、クロノ以外の事で率先して殺したい訳では無い
「そうだね・・・残念だけど見られた以上は始末するしかないよね。」
「ですよねぇ~?じゃぁ・・・【狂楽ノ道化】、新参者で貴方が見つけたのだから貴方が適任ではぁ?」
「僕は止めとくよ。そもそも君の失態でもあるのだから君がするべきじゃないのかな?ねぇ先輩?」
そう言ってサイクスは【狂楽ノ道化】・・・ロキフェルに声を掛けるがロキフェルは相手にしない様な素振りで断りを入れつつ牽制する
その言葉に若干苛ついた表情を浮かべるが、どうやらターゲットを替えて【狂戒ノ道化】であるゴーガンに声を掛けた
「【狂戒ノ道化】さぁん・・・貴方の武器の試し斬りに丁度良いのではぁ?」
「こんな餓鬼じゃ斬れて当然だ。まぁ・・・お前さんなら良い案山子になりそうだがな?」
そう答えられブルブルと両手と首を横に振る
その様子を見た【狂謀ノ道化】であるポセイランが口を開いてサイクスを戒める
「【狂悦ノ道化】、全ては貴方がルールを破った事が失態なのですから大人しく貴方が始末なさい。それに・・・嫌いじゃないのでしょう?」
ポセイランにそう言われてニヤァァァと口角を吊り上げる
そうなのだ・・・結局の所、コイツの本心は自分が行いたくて仕方がないのだ
もしかするとルール破りすらそれを見越して行っていたとすら考えられる
そんなサイクスに吐き気を覚えると同時に・・・そんな奴と同類である自分にも吐き気がする
けれど私はそれで構わない
私の名誉も立ち位置も信念も・・・全てはクロノとの比較対象には成り得ないのでから・・・
「お坊ちゃん・・・御免なさいねぇ~・・・」
そう言いながら子供に近づくサイクスを俯瞰して見つめて、私は自分の罪を見逃すまいと凝視した
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