【間章】~~追憶Ⅲ~~
「・・・なんだこりゃ。」
シャンスの推理通り城付近を捜索すると地下に通じる隠し扉を発見し、俺たちは地下に降り立った
だがそこで見たのは・・・牢屋に閉じ込められている夥しい数の人族と魔族だった
「・・・これで確定ね。牢屋にはご丁寧に人族と魔族の男女を1セットで閉じ込めているという事は非人道的な実験をしている事は間違いないわ。」
「・・・吐き気がする。」
しかもより最悪なのは牢屋に閉じ込まれている誰もが声を上げないという事だ
そこに助かるという希望は存在せず・・・ただただ諦観の目を俺たちに向けて来るだけだ
こいつ等はどんな地獄を味わったのか理解出来ないが・・・ここまでの表情を浮かべさせる事が出来る生物に恐怖すら覚える
「・・・おいっ立ち上がれるか?!助けてやるぞ?!!」
「・・・・・・」
牢屋の中で蹲っている女にそう声を掛けるが・・・反応が芳しくない
まるで女の方が俺たちを憐れんでいる様な・・・そんな視線だ
だが俺としてもその視線に怯み踵を返す様なら冒険者なんざやってねぇ
「大丈夫だ安心しろ、世界有数の腕利きの冒険者たちがこの国に潜入しているからよ!!お前さんももうすぐ自由だぜ!!」
「・・・ふっ」
元気づけようと語り掛けた言葉は渇いた声に覆されてしまう
そして同じ牢屋に入れられている魔族の男はカッカッカッと笑い出す
「・・・何がおかしい?」
「そう言うと淀んだ瞳で俺を見る
その瞳の奥には絶望、諦観と死の色が映っている
「貴方達冒険家が何十人、いえ何百人来ても結果は同じよ・・・貴方達は殺されないでしょうけれど・・・私たちみたいに生かされもしないわ。」
「待って?!この場所には貴方達が諦めざるを得ない何かがある、詰まりそう言う事ね。」
「姉さんどういう事ですか?」
シャンスの疑問を無視してリングランは牢屋の女に近づいて声を掛ける
「答えて。此処は何をしている所で・・・何が居る所なの?」
「・・・綺麗ね。」
だが労の中の女は何も言わずジッとリングランをジッと見つめたかと思うと、徐に手を牢屋から出して彼女の頬へ触れる
「・・・すべすべね。」
「・・・・・・。」
リングランは情報を得る為なのか、彼女にされるがまま頬を撫でられている
一瞬止めようとしたが、リングランが視線で止めるなと訴えかけてくる
「・・・それで、此処は何をしている所なの?」
「此処?此処はねぇ・・・病院よ。」
「・・・病院?」
「そう。私たち国民は皆心の病に侵されているんですって。だからこの病院で・・・悪いものを取って貰うの。」
「・・・・・・。」
「それでこの病院はね、家族を創ってくれるの。心の病を取り除いた綺麗な心と身体になれば・・・健康で聡明な将来を約束された様な子供を産むことが出来るのよ。・・・貴方は綺麗だから良い子が産まれそうね。」
女にそう言われた瞬間、リングランは彼女の手が届かない所まで一気に離れる
その表情には恐怖が漂っており、僅かながら身体が震えているのが分かる
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「リングラン・・・大丈夫か?」
コクンと頷き自分の腕で身体の抑える
それから少し落ち着いて来たのか、俺たちの方へ視線を向ける
「・・・話の通りよ。此処で人族と魔族を交配させているのは確定ね。そしてこの国は、国を挙げてそれをなそうとしているという事も確定。」
「・・・女は強制的ではない様な口ぶりだったが?」
「それは洗脳なのか・・・そう思い込もうとしているかのどちらかでしょうね。・・・生き物は総じて弱いから。」
「・・・・・・。」
確かに人族の心が弱いという事実は冒険者をやっている俺たちが1番良く分かっている
ベテラン冒険者で順風満帆で到達した者なんて誰一人として存在しない
「やれやれ・・・外が騒がしいと思ったら・・・お客さんかね?」
そう言って黒い上着を羽織った男がいつの間にかこちらに視線を向けていた
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