アカノの受諾と承諾
「分かっとるがな、やいやい言うな。アカノ殿は言い慣れへんな…アカノはん今回はお願いがあって出向いて貰ったんや。」
ザンガスは舌打ちをしながらも私の方に視線を戻す
「お願い、ですか…?」
「せや!知っとるかもしれんが、この【サンドール商業国】は名前の通り他国との商業で成り立っとる国や。自給自足も出来るが輸出の方が圧倒的にでかい!!」
「成程、そうかもしれませんね。」
「やけども最近、他国へ向かう道路の交差付近に不定期ながらも夜になると現れるんや…」
「現れる?何が現れるというんですか?」
私がそう問い返すと非常に渋い顔になる
「…盗賊や。」
「盗賊?であれば行商人が用心棒なりギルドへ警護依頼を発注するなりすれば良いのではないでしょうか?」
「それが上手くいかなくてねぇ~。」
グンガスの隣の女性が応答する
「こらミツネ!ワシが話してるやろが!!」
「アンタの話は一々要領が悪いんだよ。で、お願いの件だけどねその盗賊の内の1人が異常に強いのさ。」
「強い、ですか?」
確かにそれはおかしいと感じた
本来は戦闘系で強い称号を得ると国に仕えたり冒険者になったりと仕事は多岐に渡る
犯罪集団に身を落とす場合は戦闘系でも弱い称号を得た為に生活が出来ずに仕方なく犯罪者になるケースの方が多いのだ
「そうだよ。前回はA級パーティーを雇ったんだ。そのA級全員が翌朝には死体となって発見されている…勿論商いに使う荷物もパーさ…」
「そんな困っとる時にアカノはんがこの国に来ているという噂を聞きつけてな!元とは言えSS級パーティー所属且つ【名誉騎士】を国から渡されとるアカノはんやったらと思ってお願いしてるんや!!」
確かにA級パーティーを殺害したとなれば十分に強者と言うに相応しい相手みたいだ
生涯冒険者であり続けてもC級になる事も難しいのに…だが…
「確かに私はある程度の自由を得た【名誉騎士】ではありますが…国同士としては如何なんでしょうか?」
「確かにこの事が【フィングルス王国】に知られたら文句言われる上に、貸し借りの話や賠償問題になるやろな。やけども誰も言わなかったら問題無いはな。この事を知ってるんは評議会メンバーとアカノはんだけやから…」
「黙る代わりに報酬として情報を渡すと?」
私がそう言うとニヤニヤと笑う
「せや、黒髪黒目の男を探しているんやてな?断言は出来んが情報を3つ掴んどる。まぁ正直どれも眉唾もんやけどな…ただ情報を精査するにも情報の基が無いと出来んやろ?どうや?」
「…因みにその情報の信憑性はどれ位なんでしょうか?あなた方は私が此処に出向かなければ2度と会う事は出来ないと仰ったそうですが。」
そう尋ねるとザンガスは面白くなさそうな表情をする
「なんや、最初は乗り気やなかったんかい。」
「それはそうでしょ。国から押し付けられた【名誉騎士】が自主的に他国の人族と絡むもんかい。」
ミツネさんにフォローは有難い
「まぁそらそうか。アカノはん、情報は武器や。ただし諸刃の武器やけどな…正しければ信頼と有利な立場を与えてくれる、せやけど虚偽であれば不信と不利な立場に追い込まれる。そういう意味では確定的な情報では無いけども足がかりにはなる情報やと思うで。事実、市中ではそれらしい情報すら出てないやろ?」
確かに自分自身での聞き込みやギルドの依頼にも有力情報は含まれていなかった
なのにそれらしい情報を3つも掴んでいるのであればどれか1つは正しい可能性はある
「…分かりました。但し今回限りとしてください。私は頂く情報を基にどこかへ向かわなければならない可能性もありますので。」
そう告げると他の評議会メンバーを含めた全員が納得の表情を表わす
「それでは今宵から張り込みに参ります。」
「せやな。暫く昼夜逆転生活になるかもしれんが、そこは勘弁してや。」
そう言いながらザンガスの表情は明るいものだった。
昼夜逆転生活はキツイんですよね…
おっさんになると本当に…
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