ダンキの単気と本気
「・・・何もしていないじゃと?儂の一撃よりも小童の体躯の方が遥かに頑丈だとほざくのか?」
「遥かに・・・とは言わねぇが・・・どんなに強い【魔王】だろうが・・・それに胡坐かいてる奴にゃ負けねぇ。」
あぁ糞・・・話すだけで身体が痛みやがる
未だに痛みで身体を持ち上げる事が出来ないのが歯痒い
「【魔王】に胡坐をかく・・・じゃと?」
「・・・そうだ。以前の俺と同様・・・【魔王】は魔族領で自分に勝てる者がいない。・・・だから贅を尽くし・・・やりたい事だけをやっている。」
「・・・それが【魔王】じゃろ。」
そう・・・【魔王】は自国領ではその他の存在は絶対服従だ
国の運営も任せておきゃ良いし、好きな事だけをやる事が許される特権階級の称号だ
いや・・・称号だったというべきか
我が主が魔族領に降り立ってからはそんなチンケな常識は消えて無くなりつつある
そりゃそうだ、何百年も本格的な領土侵攻がなかった魔族領で他国をドンドン攻め落とすんだからな
昨日まで安泰だったその地位が明日には無くなっていても何ら可笑しくはねぇ
「・・・俺は約2年間・・・地獄の様な修練を休み間もなくやってきたんだ。爺さんみたいにその地位で胡坐かいて何もしてねぇ奴に・・・負ける道理はねぇよ。」
「鍛えた小童と堕落した老害・・・か。」
そう言って少しの間寂しそうな表情を浮かべる
が、立ち直ったのかギロリと睨みつけて来る様な視線を感じる
残念ながらこちとら首を持ち上げるのも億劫なんだから、この強烈な視線は勘弁して欲しい
「・・・確かに今現在、小童は負けてはおらぬ。だが見た所立ち上がれない様ではないか?であれば・・・小童の剣で首を刎ねれば話は変わるわなぁ?」
そう言った同時に俺の方に近づいてくる気配を感じる
そして俺の剣を拾ったのか、ガシャンという鈍い金属音を聞こえ・・・また近づいて来た
「・・・止めとけ。」
爺さん相手に老婆心というのも変な話だが・・・一応止めておこうと思い口を開くが、何を思ったのかクックックッと笑い声が聞こえ、俺の顔付近に立ち塞がった
「どうした小童?今更命が朽ち果てるのが惜しくなったか?」
「そんな事じゃねぇ。・・・この勝負は俺の勝ちという事で部下を引き連れて退却するのであれば・・・今回は見逃してやる。」
そう告げると一瞬呆けた表情を浮かべるが、また可笑しそうに笑い出した
「豪気な言い草じゃが・・・何の事も無いただの命乞いではないか。」
「そんなんじゃねぇ。老い先短い爺さんに対する優しさだ。」
「・・・小童、それは少しばかり傲慢ではないか?だがまぁ、残念ながら儂は止まらんよ・・・止められんのじゃよ。」
そう言った爺さんの表情に憂いが表れる
何がどうなってそんな表情になるのか頭の悪い俺には分からねぇが・・・頭の悪い俺の言葉では止められない事だけは理解できた
「あの世で鳥人族の歴史を勉強するが良い。・・・今回の件が無くとも儂らと天使族は衝突しただろうよ。」
「・・・そうかよ。」
俺がそう告げると左腕で大剣を持ち上げる
あとはその大剣を振り下ろせば俺の頭と胴がおさらばする訳だ
「ではの小童・・・2戦とも小童の勝ちじゃが、最後に勝つのは儂じゃ・・・さらばっ!!!」
そう言って躊躇せずに一気に振り下ろしてくる
身体が動かない状態であれば何も出来ずに即お陀仏だ
「?!!!」
爺さんの振り下ろした大剣を右腕で受け止める
すると爺さんは信じられないといいたげな表情を浮かべて俺を見つめる
「な・・・なんじゃ・・・」
「よぉ爺さん。爺さんがなりふり構わねぇってんなら、俺もなりふり構わずにやっていくぜ。」
そう言って仰向けの体勢のまま受け止めた剣を振り回すと、柄を掴んでいた爺さんが宙に飛ばされた
「小童・・・何をした?」
「なぁに何てことねぇ・・・ただスキルを発動させただけだよ。」
そう言いながら先程の痛みが嘘の様に消えた身体を起き上がらせた
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