ダンキの自覚と死角
「しかし・・・中々に壮観な景色だな。」
眼前に広がる光景に思わずそう呟く
我が主から命を受け4日後、ギリギリではあったものの【魔王同盟】が【天聖国アンギス】に侵攻してくるまでの間に入国する事が出来た
「しかし・・・有難い事に鬼人族兵士を100程お借りできたのは僥倖でしたな。」
「なに、山岳に籠るよりも闘争本能が疼くんだろうよ。」
そう言ってバルデインは景色を眺めながらそう告げてくる
鬼人族の本能として闘争を好む部分はあるから、俺からすれば想定範囲内の数字だ
そんな軽口を叩いていると・・・相手側の兵士に動きが見える
「そろそろ奴さんも動き出すか・・・。俺も動く、バルデイン此処の指揮権はお前に委ねるぞ。」
俺とバルデインは我が主の名の下では同列に扱われている
俺もそれ自体には異論は無ぇが、【魔王】であるが故に必然的に上の格だと周りには思われちまっている
そこで周りの兵士にもバルデインに指揮権がある事を知らしめる必要性がある・・・と我が主は言っていた
その為に面倒ではあるがこの様な茶番を行っているのだ
後はバルデインは承諾の言葉を投げかけてくりゃ終了だが・・・
「いいえ、戦場には私が立ちましょう。ダンキ殿は切札です故、こちらでご滞在下さい。」
「あぁ?!」
予想外の言葉を投げかけて来て断りやがった
しかも俺にこの場所に滞在しろだと?!
折角祭りが始まるのに俺だけが参加できないのはどうにも納得がいかない
「お「貴殿のご不満も最もですが・・・戦場には露払いという言葉も有ります。今この瞬間は露払い、私とアンギス兵士が動けばそこらの兵士等問題にはなりますまい。」
反論しようとする俺に向かって先手を打ってくる
くそ・・・確かにこの舞台の指揮官ともなれば我先にと出る訳にゃいかねぇ
苦しくも先日に我が主が言われた事と同じ事を言われちまった
「・・・鬼人族はいらねぇのか?」
ぶっきらぼうにそう尋ねると苦笑しながら頷いて来る
どうやらこの戦いは直ぐに終わると思っていないみたいだな
「どうやらこの地域に派遣されたのは【有翼国家ラスローレン】みたいですから、鬼人族との相性はあまり良くないでしょう。」
「・・・あぁ、有翼人こそが至上だと掲げている頭が御目出度い人種か。」
「このアンギスも天使族ですからそう言う意味では相性はいいですよ。」
「というか、俺たちみたいに混成軍ではないのか?」
「混成軍を行うには練度も時間も少なすぎますから・・・それは無いでしょう。ある程度兵を削ると【魔王】がでてくるでしょうから、そこからがダンキ殿の出番となります。」
「・・・分かった。」
まぁ俺の相手が敵国の【魔王】というのならば文句は無い
俺はもう、我が主に指摘された一方的に叩きのめしたい【魔王】ではない
自分よりも強い奴、偉大な奴、背負っている奴・・・優しい奴を知っている
知って尚、相手を傷つけ、自分も傷つく戦いを望んでいるのだ
それこそが俺が、鬼人族が求める闘争そのものだ
それに【真祖】にじっくりと扱かれたという自負がある
相手も同格の【魔王】とは言え、俺たち程の修行を味わった事が無いだろうという自負がある
その辛さや苦痛も纏めて相手【魔王】にぶち込もう・・・そう決めた
「では・・・ダンキ殿、そろそろ私は出陣致しますので。」
「おぅ・・・まぁなんだ、死ぬなよ。」
俺がそう言うとバルデインは驚いた表情を浮かべる
それと同時に俺自身もそんな言葉が思わず出てきたことに驚いてしまう
俺たち魔族は程度はあれど好戦的で、いつでも死と隣り合わせなのだから『死ぬな』と言う概念はない
どちらかと言えば『相手を殺して死ね』という概念が一般的だ
ましてや俺は鬼人族であり闘争を好む種族だ
そんな俺がそんな言葉を発するとは自分でも予想だにしていなかった
「・・・えぇ、死にませんよ。」
だがバルデインはただ微笑んでそれだけを告げ、戦場に赴いていく
それが何とも言えない感情を湧き上がらせた
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