クロノの対面と体現
「我が盟主、お待たせいたしました。後方に控えておりますのがこの国にて鍛冶関係の称号を持つ腕利きと呼ばれる3名です。」
そう言って王座に鎮座する僕に向かってサラエラは首を垂れながら報告してくる
昨日に鍛冶屋へ向かいたい旨を彼女に告げると猛烈に反対され、彼らを城へ呼ぶことになった
彼女曰く、「【魔神】を冠する者が鍛冶屋に出向くなど有り得ない。」との事だ・・・
何気に王座へ鎮座するのは初めてだが・・・お世辞にも座り心地良いとは言い難い
こういうのは威厳も大事な様で半強制的に王座に座らされたがどうにも落ち着かない
「・・・ご苦労。者共、面を上げて名乗るが良い。」
この口調も彼女から少し高圧的に話す様に言われて考えながら話しているが、どうにも慣れない
普段からこの様な話し方をしているのならば兎も角、慣れていないが為に逆に聞いている方も違和感があるんじゃないかとも思ってしまう
そんな事を考えている内に後ろに控えていた魔族3名の男が顔を見せてくる
どの男も鍛冶士らしい厳つい顔つきをしている
元獣王国なのだから全員が獣人かと思っていたのだけれども獣人、鬼人ともう1人初めて見る種族が混じっている
そんな事を考えていると獣人の男が口を開きだす
「お初にお目にかかります、私は称号【鍛冶師】のゴォスと申します。【魔神】様を拝顔して恐悦至極に存じます。」
「うん・・・。」
獣人はどうやら熊系の獣人らしくガタイも大きく力強く感じる
・・・同じ熊系だからか、グーガを思い出してしまった
そんな感傷に浸っていると、真ん中の鬼人族が口を開く
「私、【鍛冶匠】の称号を得ております鬼人族のダロウと申します。誠心誠意打たせて頂きます。」
鬼人族の男はダンキ程ではないが大柄で筋骨隆々という言葉が相応しい容姿をしている
彼が鉄を打つのであれば頑丈な武器が出来上がるのは一目瞭然だ
また、鍛冶職としては【剣豪】に並ぶレア称号を冠している事も有り腕は間違いないだろう
「儂・・・いや私は、ドワーフ族のガラフじゃ・・・です。称号は【鍛冶師】を冠している・・・ます。」
最後の1人はドワーフ族だった
ドワーフ族は鍛冶族と言われる程、鍛冶が当然の様に生活に密接していると聞いた事がある
称号こそ鬼人族のダロウに勝ってはいないものの、小さい頃から鍛冶と関わっているというのは大きなアドバンテージとも言える
でも・・・
「うん・・・皆の者、今日は登城してくれて感謝する。ドワーフ族のガラフだったか?確かに我が領土はどの様な種族であれ、受け入れる体制を取ってはいる。だが・・・属国はおろか、同盟国ですら無い国の種族が移住しているとは思わなかったが、何か理由でもあるの・・・か?」
気を抜くといつもと同じ様な口調になってしまう為、気を遣いながら話すが・・・これが思った以上にストレスだ
どうやらガラフ自身も僕と同様な様で所々怪しい感じで返答してくる
「はっい!!知って・・・ご存知かもしれ・・・ませんが、ドワーフ族は鍛冶に関わる商売・・・仕事に秀でている種族・・・です。」
「うむ。」
「ですので・・・称号【鍛冶師】ではあの国で一介の店を持つことは難しく・・・」
「成程・・・あぁ口調は普段通りで良いよ。僕もそうする。」
「我が盟主?!」
自分自身も限界だった為にそう宣言するとサラエラが諫めようと言葉を発する
だがその前に彼女に向かって掌を突き出して制止する
「サラエラ、威厳も大事かもしれないけれど僕が知りたいのは本質だ。凝り固まった口調では互いの距離感も計れない。それに・・・【魔神】であるが故に命令という形式をとるだろうけれど、命令とは突き詰めていけばお願いと同義だよ。何せ相手がそれに従わなければ求めるモノは手に入らないんだからね。お願いする立場が譲歩しなければ物事は進まない・・・でしょ?」
彼女に向かってそう告げると、なんとも言えない表情を浮かべていた
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