クロノと過剰な波状
「・・・さぁ、始めるわよ。」
そう言って妖精霊族の【真祖】、ファスミーヤさんは僕とファーニャと対峙する
修練内容は非常にシンプルなもので僕等2人でファスミーヤさんと戦い、後から悪かった点を振り返るというものだった
「2人とも基礎体力はある程度仕上がっているから・・・そっちの方が効率良いわよ。」
そう言われて王城から少し離れた僻地で実践訓練を積むこととなったのだが・・・
正直、対峙しただけで心が折られそうになる
(ははっ・・・万全の状態の【真祖】って・・・勝てる気がしないな。)
先ず威圧感は尋常ではない
眼前に対峙する事すら罪だと言われても納得しそうな程の威圧感だ
女児の姿である彼女の何処からこれほどまでの威圧感があるのか理解しようとすら頭が拒否する
正直、ブロウドさんがファスミーヤさんと龍族の【真祖】を相手にして勝利したという事実を知っていても信じられないレベルだ
どうやらブロウドさんが僕を鍛えてくれている時は細心の注意を払ってくれていた事が今となって理解できる
ファーニャも横で恐怖から身震いしているのが傍目についた
「ファーニャ、大丈夫?」
「えぇ、いえ・・・駄目ですね。お母さまの威圧感に蹴落とされそうです。」
「・・・だよね。」
その言葉に同意するものの、このままでは何の鍛錬にもならない
僕は震える身体に発破を掛けて魔力を練り込んでいく
「【暴喰ノ口】!!!」
一気に3つの【暴喰ノ口】を顕現させ、触手をファスミーヤさんへ攻撃させていく
それと同時に僕も剣を抜き、同時に攻撃を繰り出した
「動けたのは合格よ。・・・でも攻撃が単調よ。」
そう言うと同時に無詠唱で魔法を使用したのか、彼女の周りに膜が出来上がり触手を弾く
「くっ!!」
僕の斬撃は膜を傷つけたものの彼女を傷つける事も出来ていない
「そこっ!!!」
ーーーガガガガガッガガガガッガガガガガッガガガガガッガーーー
その傷を目掛けてファーニャが魔法を顕現し、幾十もの大型の棘を連撃させる
すると僅かずつではあるが傷がひび割れが広がっていった
「・・・これを傷つけたのは大したもの。でも攻撃が一点集中しすぎて対策が練り易い。」
そう言うと同時に膜の内側に再度同じ様な膜を形成する
という事は目の前の膜を破壊しても再度同じ強度を誇る膜を破壊しなければいけないという事だ
「・・・厄介だな。」
「そう思うのは・・・常識にまだまだ囚われている証拠よ。例えば・・・こういう使い方もあるわ。」
彼女がそう言うと同時に、破壊間近だった膜が急激にひび割れていく
その様子を見ると・・・急激に嫌な予感が脳裏を走る
「ファー「遅いわ、ショット。」」
彼女がそう言った瞬間、膜は破裂したかの様にガラスの欠片よろしく四方八方に飛来して僕等に襲い掛かる
「うぐっ!!!」
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!!!」
僕に向かって襲い掛かって来る欠片は触手が捕縛して喰っていくが、ファーニャの周りの欠片全てを喰う事は出来なかったみたいだ・・・
幾つかの欠片が彼女に襲い掛かり傷を負わせる
「・・・【怠惰ナ脚】っ!!!」
ならば攻撃の手口を変更し、彼女を膜も併せて破裂させる様に発動させる
だが・・・膜の形状は少し変化するものの、膜が割れる様な素振りは無い
「切り口は悪くないわ。でも・・・そのスキルは魔法に対する耐性が強ければ強い程、言う程役には立たないわ。」
そう言って彼女は手を宙に掲げる
ーーゾクッーー
再度嫌な予感が脳裏を走り、急いで場所を移動すると・・・
ーーズゴォォォンーー
僕が元々居た場所に、先程ファーニャが発動させた棘を数倍巨大化させたモノが突き刺されていた
「・・・うん、勘はそれなりに良いわね。」
そう言って1人で満足げな表情を浮かべるファスミーヤさんに、イヤイヤイヤと突っ込む
どう考えてもあの攻撃は僕に対してオーバーキルになりかねない威力を持っている
(もしかすると・・・龍族の【真祖】より先に妖精霊族の【真祖】に殺されるかも・・・。)
どうしてもそう思わざるを得なかった
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