クロノと望外の本懐
「ファーニャ、貴女は【魔王】としてもう少ししっかりなさいな。」
僕に抱き着いたままのファーニャを諫めながら1人の女児が部屋に入って来る
真っ白な髪を始め、肌や目の全てが真っ白で神々しい雰囲気を醸し出している
「もうお母さま!感動の再会に水を差さないで下さい!!」
そう言ってふくれっ面をしながら文句を言うファーニャの台詞を聞き確信する
この女児こそが妖精霊の【真祖】だ・・・
そう思った瞬間、ファーニャの抱擁を振りほどき、膝を付いて首を垂れる
「・・・クロノ=エンドロールと申します。ファーニャさんにはお世話になっております。」
「・・・そう。分かっていると思うけれど、妖精霊族の【真祖】ファスミーヤよ。」
「はい。」
「・・・喉が渇いたわ。何か貰っていい?」
「勿論です、こちらへどうぞ。」
そう言って自室の椅子へ誘導する
ファスミーヤさんが着席した直後にサラエラが戻って来たので飲み物を準備する様に指示する
◇
「本日お越しいただきましたご用件をお教え頂けますでしょうか?」
サラエラが飲み物を出してくれたタイミングを口を開く
するとファスミーヤではなく、何故か僕の横に鎮座するファーニャが代わりに答えてくれる
「旦那様、お母さまは旦那様が困っているだろうとわざわざ駆けつけて下さったのですよ!!」
「僕が困っている?」
「・・・そう、貴方ソテルアスに狙われている事を知っているかしら?」
・・・ソテルアス?
聞いた事のない名前だが、何となく心当たりはある
「もしかして・・・龍族の【真祖】の名前でしょうか?」
そう尋ねるとコクンと頷く
【真祖】が気にするほどの存在だからもしやと思ったが・・・案の定だったみたいだ
「・・・そうですね。先日にブロウドさんからその件はお聞きしました。」
「・・・そう。ソテルアスは強いわ。致命傷を負っていたブロウドに辛勝した貴方だと・・・先ず勝てない。」
「・・・でしょうね。」
その件は目下頭痛の種でもある
いつ来るかも分からない
本当に来るかも分からない
強さも強いという事しか分からない
分かるのは目的と龍族の【真祖】は神と組んでいるという絶望的な事実だけ
それに対し僕が講じる事が出来る策は思いの外少ない
間違い無く彼女が言った事は困っている事案ではあった
「・・・だから助けてあげる。」
「・・・は?」
「旦那様、お母さまは旦那様を鍛えても良いと仰ってくれているんですよ。」
「ん。」
そう言って頷く【真祖】を見ている僕の表情は間違い無く目が点になっているだろう
【真祖】が・・・ブロウドさんではない【真祖】が僕を鍛えてくれる?
正直その考えは頭にすらなかったが・・・本当にお願い出来るのであればこれ以上に無い位に好条件だ
「・・・有難う御座います。是非ともお願いしたいのですがその・・・どうしてでしょうか?」
「旦那様っ私私!!私がお願いしましたっ!!」
そう言ってファーニャが挙手してくる
それを見ながら【真祖】は首を横に振る
「それもあるけれど・・・それよりも貴方に興味がある。」
「僕に・・・ですか?」
「お母さま駄目ですよ!!旦那様は私のモノです!!」
ファーニャの叫び声に軽く溜息を吐きながら言葉を続ける
僕を見つめるその瞳も真っ白で・・・ある意味で僕と対極的な存在だなと思わず考えてしまう
「そうじゃないわ。・・・ブロウドが興味を抱き、鍛え、ブロウドに勝利した。安寧を強制する様なこの世界ではそんな理がある訳ないのに勝利した貴方に興味がある。」
・・・成程
ファーニャが以前話してくれた事だと、妖精霊族と龍族の【真祖】はブロウドさんに敗北している
そんな相手に致命傷を受けていたとは言え【真祖】に勝った僕に興味があるという事か
「この5日間、必死にお母さまを説得し無事に成功しました!!一緒に頑張りましょうね!!」
そう言って微笑むファーニャに笑顔を向けた後に妖精霊族の【真祖】に頭を下げ、「有難う御座います、宜しくお願い致します。」と僕は伝えた
いつも有難う御座います!!
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