クロノの懸念と疑念
(さて・・・)
ブロウドさんから離れて自室に戻った僕はサラエラが煎れてくれた飲み物を口にしながら今できる事を模索していく
問題点は、相手の出方が分からず待ち一辺倒になっている為に対策が立てられない事が1つ、そしてもう1つが僕自身がより強くならなければいけない中で、その当てがないという事だ
ブロウドさんが修行を提案した時に僕自身が手を上げなかったのはここにある
あの時戦ったブロウドさんであれば十二分に僕を扱いて貰えると思う
けれど【不刻響閉】を使用し、弱体化した彼だと少し心許ないと思ってしまう
指導という事であれば何も問題が無いが時間が無い為、身体的能力の底上げと実践力を高める速効性を求めている今は稽古相手欲しいというのが実情だ
「まぁ・・・出来る事をやっていくしかないかな・・・。」
独り言の様にそう呟き、僕は常駐している悪魔族代表を呼んで貰う様、サラエラに頼んだ
◇
◇
「急に呼び出してごめんね。」
「いえっ!我々は【魔神】様の配下ですのでいつでもお呼びください!!」
そう言って僕の前で傅いているのはロキフェル、マリトナに次ぐ悪魔族の代表だ
僕自身は余り面識が無いがロキフェルは国に戻っており、マリトナが【真祖】の下で修業に励んでいる今、彼に指示を出す形となる
「実は君たち悪魔族に密命したい事があるんだ。」
「密命・・・ですか?」
「そんな大袈裟なものでもないけれどね・・・偵察をお願いしたいと思っている。」
「偵察・・・成程、【魔王同盟】の進捗状況などでしょうか?」
そう告げると納得したかの様な表情を浮かべ、そう答えてくる
全体的にあまり考える事が少ない魔族の中で先回りして物事を考える事が出来るという事は、この悪魔族の人も存外優秀かもしれない
「そうだね、君の言った通り【魔王同盟】への密偵だ。恐らく今僕等と対抗している勢力の中で1番容易に叩けるのがこの【魔王同盟】だろうからね。」
「畏まりました。それでは密偵は10程準備いたしましょう。」
彼の言葉を聞き頷くと部屋を後にしようとする
そんな彼を僕はフト呼び止め、ちょっとした違和感を口にする
「そう言えばロキフェルはどうしてるのかな?」
「私もこちらに待機させて頂いているので細かい事は・・・。」
「まぁそうだよね・・・。呼び止めてごめんね。」
僕がそう告げると悪魔族は一礼して部屋を後にする
ロキフェルの違和感・・・それは彼が会議に出席をしていないという事だ
面白いモノを見るのが好きな彼が【真祖】と逢う機会を逃してまで自国領に籠っているというのが、どうも辻褄が合わない様な気がして気持ち悪い
「変だな・・・変だよね?」
口にすればするほど違和感が拭えなくなる
同盟を組もうとした時に戦いを嗾けてきたり、個人的な恨みもあっただろうがソウトウキとの戦いにも一緒に乗り込み、人族領との戦いも面白そうだからと言う理由で買って出ていた
会議も何も言わずとも殆ど出席していた彼が、【真祖】との対面を強制ではないとは言え来ないと言う事がどうしても変に思えた
「・・・サラエラ、さっきの悪魔族の人にロキフェルを此処に呼ぶ様に伝えてくれる?」
「畏まりました。」
僕の言葉を受け取ると一礼してサラエラも部屋を後にする
窓を見つめ、曇り空が広がる風景を眺めると・・・何か言い様のない不安に押しつぶされそうになる
「旦那様っ!!!」
そんな陰鬱な気持ちになっている所、扉が突然開きファーニャが飛び出し抱き着いて来る
そして抱き着いたまま頭をグリグリと擦りつけてきた
「ファ、ファーニャ・・・?」
「あぁ・・・久しぶりの旦那様です!!旦那様旦那様旦那様っ!!」
・・・すでに呼ばれ慣れているとは言え、夫婦らしい事なんて何一つしていない状況でそう呼ばれるのは何となくこそばゆかった
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