クロノの提案と転案
「さてルナエラ、今度こそ問題無く停戦を締結できると思うのだけれど・・・どう思う?」
そう尋ねる僕の足元にはカラミトルとロザンワがハァハァ言って肩で息をしている
ロザンワは外敵損傷は無いが、先日のマリトナとの傷が感知して間もないにも関わらず禁呪を使用した反動だろう
反対にカラミトルは深手は負わせていないものの若干の怪我がある
そして聖獣と龍に囲まれて心配されている様な状況だ
「うむ、全く問題ないじゃろう・・・しかしお主も【勇者】に花を添えてやろうとは思わなかったのか?正直、大人と子供以上の差がある戦いじゃろう?」
「残念ながら全く思わなかったね。それに僕自身の反省点もあるしね・・・。」
そう言って首を横に振る
今回の僕の反省点は相手を見くびり過ぎた事だ
僕と彼女らだと本来は一撃も喰らう事無く勝利してもおかしくない位の実力差だった
それを・・・一戦目の印象をそのまま二戦目に持って来て一撃喰らって、更に【暴喰王ノ口】を発動させてしまった
相手を自分の中で過剰評価するのは良くない
けれどそれと同じ位過小評価するのも良くない
僕にはそれが足りなかった・・・要は覚悟が足りていなかったという事だ
その事実を突きつけられたのが今で本当に良かった・・・
その後、ルナエラを陣頭にした人族と停戦条約を締結し、今この瞬間から1年間は魔族領、人族領共に互いの領土へ侵攻しない事とした
ただ、ルナエラの願いも有り、申請、承認を得た場合は少数のみ他族領へ越境できるという条件を付加した
こちらとしては余り旨味の無い条文ではあるけれど、姉さんが人族領に居る事が判明した場合には役に立ちそうだと思い了承する事にした
(でも・・・そうだな・・・。)
人族側はその様な条件を付加してくるなら・・・これはこれで面白いかもしれない
そう思い、条約を締結した後に未だ呆然とするカラミトルとロザンワへ視線を向けて近づいて行く
僕が彼女達に近づいて行く事が分かると、2人は分かりやすい位に身をビクッと震わせる
「・・・君たちは弱い。」
「・・・・・・。」
僕の一言で視線を下に向け俯いていく
そしてほぼ一方的に倒された事実により反論できないのだろう・・・
「人族で最強と言われる【勇者】、君たちはその【勇者】でも上位に位置している筈だと言うのに・・・弱い。」
「・・・何を仰りたいのでしょうか?」
「・・・別に。そんな弱さで姉さん達が攻めて来た場合に勝てるのかなと思っただけだよ。」
「・・・・・・。」
そう言うとロザンワは再度黙り込む
恐らく勝てる勝てないではない・・・15分も保たない事は当人たちが理解しているんだろう
あの時に戦った姉さんと彼女達を比べても圧倒的に力不足だと言わざるを得ない
「・・・2人はどうして強くなりたいの?」
「私は・・・アカノんに元に戻って貰って・・・皆が争いの無い世界を作りたいから・・・。」
「私は・・・正直良くわかりません。人との繫がりよりも人生を魔法に捧げてきましたからね。ただ・・・アカノさんには正気に戻って欲しいと思います。彼女は・・・友達、ですから。」
「そう・・・。」
2人の答えを聞いて、提案する価値があると感じた
今現在では【魔王】どころかマリトナに勝てるかも怪しいだろう
でも強くなれば【狂笑道化団】に一矢報いる懐刀に成り得るかもしれない
「だったら提案だけど・・・魔族領に来ない?」
そう提案すると彼女達は暫し茫然とする
まぁ、何言ってるんだって気持ちは湧くだろうな
「ちょ、ちょっと待て!!クロノそれは駄目じゃ!!」
「なんで?」
「なんでって・・・2人を魔族領に連れていってどうするつもりじゃ?!!」
「修行させるよ・・・【真祖】の元でね。」
「「「【真祖】?!!!」」」
僕がそう答えると3人揃って驚愕の表情を浮かべた
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