クロノと進化の真価
ブロウドさんが一言そう言っただけで場はシンと静まり返る
(これが神になるべく神になった方が持つ求心力なんだろうなぁ・・・。)
そんな感想しか思い浮かばない
それは嫉妬等と言う感情では無く、純粋な羨望にも似た気持ちだった
恐らく、皆もその様な気持ちだと思うと・・・なんか僕がトップで申し訳ない気持ちになる
僕のそんな感情を余所にブロウドさんはタンタンと言葉を紡ぐ
「先ずは私の目的から話そうかな。クロノ君から聞いているかもしれないが・・・私の目的はこの数千年間変動しなかったこの世界を進化させる事だ。」
「【真祖】様、私にはその進化が理解出来ないのですが・・・。」
マリトナが挙手をしてそう発言する
確かに抽象的な表現であるが故に、言語するのは難しいかもしれない
ブロウドさんはその言葉を聞いて頷きながら口を開く
「確かに分かりにくいかもしれないね。私たちがこの世界に眷属を産み出した当時は龍族、精霊族、吸血鬼族しかいなかった。それが数千年の時を得て悪魔族、天使族、鬼人族、人族、ドワーフ族、エルフ族と様々な種族に分類された。それはある意味で進化といっても差し支えないかもしれない。でもね・・・どの種族も悠久の時を得ても尚変化していない事象があるのは知っているかな?」
「変化していない事象・・・」
その言葉に皆はザワザワ話始める
僕もブロウドさんとの帰国時にその話を聞いて初めて理解した
言われてみれば・・・その様な考えをしていた存在は人族魔族を通しても僕は1人も出逢った事が無った
「それはね・・・誰1人として神の存在を疑っていないという事だよ。」
「えっと・・・それは当然では無いでしょうか?現に神はいらっしゃる訳ですし。」
「それは君たちが私と逢っているから、若しくはクロノ君を通して聞いているからに他ならない。私やクロノ君と逢った事も話した事も無い誰かに神を信じるか聞いてごらん?確実に神は居ると答えるだろう。・・・それは不自然であり、歪であり、不可解な事なんだよ。人族魔族関係無く、各々で思考する事が出来るにも拘らず誰1人として神を信じていないと答えない存在が居ないという事自体が不自然なんだ。」
「えっと・・・では【真祖】の願いは神を信じない存在を広める事でしょうか?」
ファーニャの問いかけに首を横に振る
「いいや違う。私の目的は神を殺し、この世界を神の庇護から逸脱させる事だ。」
今度はその言葉に皆は緊張した面持ちに表情を浮かべる
神を殺す・・・そんな言葉すら誰も浮かんだ事が無いだろう
「この数千年、小さな小競り合い自体はあったけれども種族を根絶やしにする程の戦いは1つとして無かった。そして誰1人として神を信じていない存在は居ない。これが何を示すかは理解できるかい?」
「・・・神が争いを求めていないという事でしょうか?」
「その通りっ!!」
サラエラの回答に満面の笑みを浮かべ肯定する
・・・彼からすれば多分、此処まで真剣に聞いてくれる存在は居なかったんだろう
受け答えをしている間も非常に表情が生き生きととしている
「神の願いはこの世界に悠久の安寧を築く事だ。そんな神は常に自分の存在を確立させる様に洗脳し、安寧を汚す者を産み出さない様にされている。・・・詰まりこの世界は神に統治されているんだ。」
彼がそう言うと場はシンとする
余りにも荒唐無稽、余りにも実感が無さすぎて理解出来ないのだろう
正直、僕も彼らの気持ちも理解できる
そんな僕等の感情を知ってか知らずかブロウドさんは言葉を続ける
「これは私の持論だがね、全ての生物は争いが無ければ進化は有り得ない。神を殺し、庇護下から逸脱する事で初めて進化という一歩を踏み出せると考えている。・・・これが私の目的だよ。」
ブロウドさんが話し終えても誰1人として言葉を発する事は無かった
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