【間章】~~追憶Ⅱ~~
「しっかし・・・此処は本当に城下町か?やたら道は細いし迷路みたいだぞ?」
少なくとも俺が知っている城下町は大きな道が幾つも敷かれ、そこから規則正しく小さな道が他の大きな道を繋がっている場所だ
けれどもこの場所は・・・
「・・・恐らく、侵入者を目的に到達しない様に設計されているわね。・・・若しくは」
俺の疑問にリングランが見透かしたかの様に答えてくる
・・・こいつマジで俺の心の声が聞こえているんじゃないだろうか?
そう思いながら珍しく言葉を詰まらせる彼女に回答を促す
「若しくは?」
「・・・若しくは何かを逃亡させない為、とも考えられるわ。」
神妙な表情でそう答えてくるのを聞いた瞬間、ぶわっと血の気が引いていくのが感じられる
「リン、詰まりは此処で人体実験されている可能性がグッと高まる・・・そう言う事だな?」
そう応答するのは長剣を携える俺の仲間、コシドー
いつもは冷静なコイツが怒りの感情を声色に乗せているのだから・・・コイツ自身も思う事があるのだろう
「えぇ・・・ただ飽くまで推測の域を出ないわ。本来の用途であれば外敵から身を守る為、そう考える方が自然ではあるしね。ただ・・・人が1人も外に出ていないのは明らかにおかしいわ。」
そう、俺たちは先ず研究所を探すために城壁から侵入したのだが・・・城門に兵士は待機しているものの、城下町に入っても誰も見当たらない
それなりに広大なこの城下町に大人も子供も男も女もいない
ただ広いだけの街に違和感というよりも・・・恐怖の感情の方が勝ってしまう
「家の中には気配がするんだろ?」
「えぇ、魔力を薄っすら感じるから居るとは思うけれど・・・ただこんな昼間に全員が家に籠っているのが気持ち悪いわね。」
「まぁな。・・・だが取り敢えずそれは後回しだ。先ずは研究所を探さないとな。」
「アニキ!!他のパーティーからも見つけたという合図は無いっス!!」
「オーケー。けどシャンス、アニキは止めろ。」
そう言ってこんな状況下でも明るい性格で俺に話しかけてくるのは射撃手であるシャンスだ
コイツにかかればどんな沈痛な雰囲気でも場を和ませてくる・・・偶に空気を読めと思わなくはないが
「でもアニキはアニキじゃないっすか!!」
「俺はお前みたいな弟を持った覚えはない。」
「いや心のアニキみたいな感じですよ!!」
「・・・聞き方によっては俺の嗜好とは合わん。諦めろ。」
「そんなぁ・・・。」
「ほら馬鹿言ってないで研究所探すわよ。」
そう言ってリングランは俺たちを諫める
・・・俺としては被害者の様な気分で納得は言ってないのだが
だが今はそれよりも依頼達成の方が重要だと思いなおし、リングランに対し口を開く
「だがこうやって城壁から眺めても怪しい建物は無いな・・・。魔力が一番集まっているのは何処だ?」
「そりゃ圧倒的にあの城ね。勿論城内なのだから魔力が多くて当然だけど・・・ちょっと多すぎるのよ。」
「多すぎる?」
「えぇ、明らかに過剰ね。これが何らかの避難民を受け入れての事なのか・・・拉致監禁されているのかは分からないけれど。」
リングランの魔力を感知するする力は並みの魔法使いよりも敏感だ
その彼女が異常だと言う数の魔力を感じるのであれば・・・詰まりはそう言う事だろう
「決まったな。じゃあ俺たちは王城に侵入するぞ!!」
「待ってくださいアニキ!!姐さん、王城って当然別のパーティが向かってますよね?」
「そうね。」
「なのにまだ見つかったという合図がない訳です。これは隠し通路か何かありますよ?」
「かもしれねぇな。」
そう回答しながらシャンスの言いたい事が分からない
どうやらリングランも同様の様で怪訝な表情を浮かべている
そんな俺たちを見て得意げな表情を浮かべて解説を続ける
「姐さんの言う通り城内に施設はあると思います。でも万一の事があれば王族が危険に晒される事になりますよね?じゃあ城内にあって王族が危険に晒されずしかも見つかりにくい場所と言えば?」
シャンスがそう言った瞬間、リングランは手を叩く
「地下ね!!」
「そうっス!!オイラの予想では敷地傍に地下道に通じる隠し通路がある筈です!!」
シャンスはその言葉を聞いてニヤリと笑い、得意げに頷いた
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