アカノの勝機と好機
私は父さんに剣の切っ先を向ける
「・・・それがお前の答えか。」
「・・・父さんの言っている事はある程度は筋が通っているわ。でも・・・前提が間違っている。」
「・・・前提?」
そう言いながら理解出来ないという様な表情を浮かべる
「えぇ・・・人は変わるものよ。」
「・・・下らん。」
私がそう答えると深い溜息を吐きながらそう断じる
そう答えた父さんの目には・・・もう私は敵としか映っていない様だった
「確かに人は変わる。・・・だが変わらないものもある。お前はそれを見誤り、クロノを侮辱した。最後のチャンスを不意にし、安易な道を選んだお前は・・・娘だとは思わん。」
そう言った瞬間、殺気が戻って私の肌に鋭利な針が突き刺さる様な錯覚に陥る
「クロノ・・・下がって居ろ。」
私がそう言うと嬉しそうな表情で戦いの邪魔にならない場所へ移動していく
「クロノもどきが・・・【剣神】を屠った後は・・・お前だ。」
「させないっ!!例え父さんでも、クロノの命を狙うなら私の敵よ!!」
そう叫びながら再度エンチャント付与し、一気に距離を詰め寄る
「馬鹿が・・・瞬撃の的だ。」
そう言って再度あの同時に複数の斬撃が私に襲い掛かって来る
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
「?!!」
私はその斬撃を紙一重で回避せずにそのまま突っ切っていき、父さんを斬る事が出来る距離まで詰め寄っていく
そして・・・
「【業火剣嵐】っっ!!!」
「【碧律千刃】っ!!」
私が【業火剣嵐】を発動させると同時に、父さんが私の知らないスキルを発動させる
その瞬間、私は無数の炎を纏った剣戟を発動させ、父さんは多数の剣を顕現させる
ーーガシャンーー
ーーガシャンーー
ーーガシャンーー
ーーガシャンーー
ーーガシャンーー
ーーガシャンーー
ーーガシャンーー
父さんが顕現させた剣は【業火剣嵐】に一撃一撃で脆くも壊れていく
どうやら剣自体は業物ではないみたいで容易に壊れていっている様な感じだった
(だけど・・・)
顕現される剣の数が多い・・・
一本の剣が粉砕された瞬間に別の剣が顕現されていく
父さんが初めてスキルを発動した事に対し、私はエンチャント、飛炎斬を複数、ダンシングエッジ、明鏡止水、業火剣嵐・・・どう考えても魔力消費量では圧倒的に不利だ
加えてわざわざ手傷を負いながらも好機を掴んだにも拘らず、肝心の当人は剣に守られダメージを負っていない
(・・・魔力消費量と対価が合っていない。)
業火剣嵐を解除し、再度距離を測って次の手を模索する
父さんは剣を顕現させたまま、再度半身の構えでこちらを迎え撃つ体勢を獲る
「・・・父さんがスキルを発動させるのを見るのは初めてです。」
「俺はスキルを封印していたからな・・・取り敢えず腐っても【剣神】と褒めておこう。ただ、このスキルはお前にとっては取りに足らないスキルだ。名刀でも業物でない剣を顕現させて自在に操る・・・ただそれだけのスキルだ。」
確かにただの剣を顕現させ自在に操る程度であれば詰め寄りながら壊していけば問題は無い
・・・飽くまで父さんでなければ、だ
父さんであれば、私が剣を壊す一瞬の隙をついて攻め込んでくる事は容易だろう
そしてそれが致命傷となり得る可能性は充分にある
加えて自在に操る事が出来るという事は剣をこちらに飛ばす事も可能だろう
これで遠距離のアドバンテージが消えたと言っても良い
それにしても・・・
「そんなスキル・・・初めて見たのですが。」
「俺も俺以外が持っているのを見た事は無い。・・・まぁ【剣豪】の最上位スキルとでも考えればいい。」
・・・私が・・・【剣神】が知らないスキルがある
私やクロノに対して何処まで実力を隠しているのか・・・そう考えると目の前の男は恐怖の対象でしかなかった
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