アカノの報告と奉告
【エンライン騎士王国】から脱出し、私はクロノの待つ本拠地へ向かう
正直・・・早く逢いたい気持ちが半分、逢いたくない気持ちが半分という様な心情だ
理由は単純明快、ハートンホールは殺害したであろうものの、暗殺には至らなかった点に加え【勇者】2名に目撃されたにも拘らず生かしたまま脱出した事によるものだ
・・・その事実は少なからず私が本拠地に戻る足を重くしていた
「はぁ・・・。」
そんな足でも、進んで行けば到達するもので・・・私の眼前にはクロノが居る朽ち果てた城が眼前に広がっている
この辺りは何か大きな爆発でもあったのだろうか?
何かあったであろう粉々になった瓦礫と、それが過去のものであると物語る苔や蔦が辺り一面に広がっている
原型を留めた建物物は本当に僅かであり、クロノが居るこの城も数少ない現存する建物の1つだ
私はその城の城門を潜り、クロノの待つ謁見の間へ向かう
城門は開きっぱなしで当然ながら見張り等も居ない
だが城内は明るくはないものの、誰が行ったかは分からないが比較的綺麗な状態だ
そんな事を思いながら歩いていると目の前で謁見の間へ到着する
ゴンゴン
扉が閉じていた為にノックをし、謁見の間へ入る
「姉さんお帰り。無事に戻って来てくれて良かったよ。」
そう言ってクロノは玉座から立ち上がる
あの会議以来、クロノは2人の時は姉さん、誰かが近くに居る時はアカノと呼称を変えてくる
私個人としてはいつでも姉さん、あわよくばお姉ちゃんと呼んで欲しいものだが・・・組織の長である以上は致し方ないだろう
「ただいまクロノ。・・・ごめん、失敗しちゃった。」
俯きながらそう答えると、クロノが玉座から降りて此方へ近づいて来る
「・・・姉さんが無事で良かったよ。」
「うぅ・・・クロノごめんねぇ~・・・。」
そう言いながら優しく抱擁してくれる
その気持ちに感謝しつつも、より深い罪悪感に苛まれてしまった・・・
◇
◇
私の気持ちが落ち着いた後、クロノへ【エンライン騎士王国】での顛末を説明した
所々に感情を吐露してしまい効率的な報告が出来たかは疑問だが・・・私なりには上手く出来たとは思う
「・・・つまり【エンライン騎士王国】の【勇者】は斬ったけれども生死の確認が出来ていない、他国の【勇者】に仮面とローヴ越しではあるが目撃されており魔族の所為にする事には無理がある状況、【狂笑ノ道化団】を名乗ったという事だね?」
クロノの言葉に私は黙って頷く
客観的に纏められると、私の戦果は何一つ達成されていない
その事がクロノに見捨てられないかと考えてしまい、より落ち込んでしまう・・・
そんな私の表情を見て考えている事をくみ取ったのか、こちらへ笑顔を向けてくれる
「姉さん、今なら計画の変更を行う事が出来るから大丈夫だよ。」
「そう・・・か?」
「うん。詰まりは人族の中に【狂笑ノ道化団】という組織が潜伏していると思わせればいいんだ。人族領は一致団結しなければならないこの時に互いに疑心暗鬼にならざるを得ない。あわよくば人族の国同士で争いが起きてくれるかもしれないしね。そうすれば人族領は内戦で滅茶苦茶だ。僕らの計画には何一つ支障は無いよ。」
クロノのその言葉を聞いてホッとした
私は余り理解できていないけれど人族領は人族領で、魔族領は魔族領で戦わせようという腹なんだろう
だがそれはそれとして・・・私の失敗は失敗だ
クロノの為にも、一刻も早く名誉を挽回しなければならない
「・・・クロノ!!早く次の指示をくれ!!」
「指示って・・・姉さん今帰ってきたばっかりだよ?」
「そんな事はどうでも良い!!私は実際疲れてはいない!!」
私が息巻いてそう答えると、「う~ん・・・。」と言いながら思案する様に腕を組む
そんな私たちが話している所に・・・
ーーズリィーー
ーーズリィーー
と誰かが何かを引きずりながら、こちらへ近づいて来る足音が城内に響き渡りだした
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