アカノの会議と懐疑
「単純な興味でお尋ねするのも恐縮なのですが・・・【聖女】様が何故この【狂笑道化団】へ?」
「アカノ様、私の事はイファンとお呼びください。そして私がこの組織に属している理由ですが、その理由は単純な理由です。」
「・・・単純、ですか?」
「えぇ、私の敬愛する神への信仰心故ですね。」
「信仰心・・・。」
正直それは私には理解出来ない動機づけだ
どれだけ敬虔な信徒だって、世界を滅茶苦茶にする組織に加担しようとは思わない筈だ
(まぁ、結果的に目茶苦茶にする信徒は居るだろうけど・・・。)
そんな私の思惑が表情に表れていたのだろうか?
彼女はクスリと微笑みながら言葉を続ける
「私の敬愛する神は変革や改革を願っております・・・。停滞や停止をするならば退化する方がマシだとも仰っております。それ故、私は神の為に神の望む形を模索し、この【狂笑ノ道化団】に加入した次第です。」
「・・・貴女は神の声が聞こえるのですか?」
この人は妄想癖でもあるのだろうか?
そう訝しい気持ちで尋ねると笑顔で頷いて来る
「えぇ、聞こえると言うよりはお逢いした事が有りますよ?私もクロノさんも。」
「姉さんも逢った事があるよね?あの御方・・・【真祖】様の事だよ。」
此処で【真祖】という言葉が出て来て驚いてしまう
何しろ人族の宗教としては圧倒的に支持されているインスラン教の神が、あの【真祖】だとは・・・
しかし言われていれば納得できる部分も確かにある
悠久の時を生き、人族の【真祖】であり、奇跡とも言える圧倒的な実力は神そのものだ
「まぁ!!アカノ様もインスラン神様とお逢いされていらっしゃるのですね?!」
そんな事を思考する私を余所に、彼女は無邪気に喜ぶ
だが、その笑顔が美しければ美しい程に私は警戒心を強める
(クロノは【真祖】よりも顔立ちが整っているからな・・・。出来る限り早く始末した方が良いかもしれない。)
私がそんな事を考えている事を当然知る由も無く、彼女は未だ無邪気に喜んでいた
「じゃあ自己紹介も終わった所で会議を始めようか。・・・先ず先日に姉さん、いやアカノとサイクスのお陰で人族領1国の首都を陥落する事に成功した。」
「残念ながらその話は人族領ではまだ広まっておりませんね・・・。」
「うん、僕等も張り切り過ぎちゃってね・・・。王城に居た人族を全滅させちゃったから、その話が広まるにはもう少し時間が掛かると思う。それで次の件なんだけど・・・次は魔族領で活動しようかなと思っているんだけど、どうかな?」
そう言いながらポセイランと呼ばれていた魔族へ視線が向けられる
その視線を受け止めながら静かに口を開く
「クロノ様、具体的には何を仕掛けるつもりでしょうか?」
「そうだね・・・。考えているのは【魔王同盟】の手助けなんだけど・・・どう思う?」
「【魔王同盟】ですか・・・。私の情報によると今現在は3ヵ国が同盟を締結しております。」
「へぇ・・・。じゃあ国の数の上では【魔神連合】と同数になったんだね。じゃあ後1国でも手引きすれば良い線いくかな?」
「いいえ。」
クロノがそう答えると、ポセイランは静かに首を横に振る
その回答が意外だったのか、クロノもそしてサイクスもキョトンとした表情を浮かべる
「どうして?僕らの目的は【魔神連合】にも【魔王同盟】にも等しくダメージを受けて貰う事だよ?【魔神】を倒すのは無理でも泥沼化しそうじゃないかな?」
「・・・いいえ、ホンの3日前に時勢は変動しました。このままですと【魔神連合】の圧倒的勝利で戦争は終わるでしょう。」
「勿体ぶりますねぇ・・・。」
「・・・ではお伝えしましょう。【魔神】が先日に【ズファイオ魔帝国】を落城させました。」
ーーガタンーー
その言葉を聞き、クロノもサイクスもイファンも信じられない表情を浮かべた
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