アカノの家族と魔族
「・・・ふぅ。」
元々は小さいながらも綺麗な城下町だった其処は・・・私の炎が燻る惨状となった
少なくない数の人族が倒れ、最早ここら一帯では人族の声は私以外はしない
ーーパチパチパチーー
「いやぁ~、流石【剣神】の称号を得た御方の御技ですねぇ~。」
・・・前言撤回
この軽薄眼鏡が居たようだ
正直、コイツが死んでくれても問題は無かったのだが、残念ながら生きていた様だ
「で、どうですかぁ~?今まで人族の英雄様だった貴女がぁ、人族の敵となりぃ、そして命を散らせたご感想はぁ?」
「・・・・・・。」
そう言われて辺りを見渡す
瓦礫の山
燻る炎
撒き散る火の粉
赤い血や黒々とした血
・・・縦横無尽に倒れた屍
それらをゆっくりと目に焼き付けながら眺める
「・・・・・・何も思わないわね。」
「ほぉ?何もですかぁ?」
「えぇ、何も。私は人族と魔族を天秤に掛けるならば人族を選ぶでしょう。けれど・・・クロノと人族だったら天秤に掛ける事も無くクロノを選ぶ。・・・ただそれだけの事よ。」
私にとってはクロノが全て
それ以外にも大事なモノがない訳では無いけれど・・・クロノと比較するのが烏滸がましいだけだ
その答えを気に入ったのか、軽薄眼鏡はカラカラと笑い出す
「アカノ様ぁ、貴女、才能が有りますよぉ?」
「・・・なんの才能?」
私がそう言うとずいと顔を近づけてくる
正直、その動作だけで斬りたくなってくる
そんな私の考えを気にする素振りも無くニチャァと嗤う
「それは勿論、この世界を滅茶苦茶にする才能でよぉ・・・。」
「・・・余り嬉しくない才能ね。」
「かもしれませんがぁ、その才能はぁ、今クロノ様に1番必要な才能ですよぉ?」
「・・・だったら良いわ。素直に喜んでおく事にしましょう。」
そんな取るに足らない会話をしながらクロノの元へ戻る
私は全く気にしないが・・・クロノは私やサイクス程の実力が無い為に、指揮と作戦を計画する役割を担っていた
確かにこんな戦場にクロノを発たせると考えるだけで寒気がする
だからこそ、クロノが消えていないか?襲撃に合っていないか?と足早になるのは致し方ないだろう
「姉さん!!サイクス!!」
丘の上でこちらに向けて手を振る彼を見た時は心底安堵した
◇
◇
「さて・・・。」
本拠地に戻り、クロノと私、サイクスは大きな丸テーブルを囲い次の話し合いを行っていた
「姉さんとサイクスのお陰で【シャローム王国】は無事に壊滅したと言えるだろうね。・・・2人とも有難う。」
「・・・でも良いの?首都を壊滅させただけで、この国の人族全てを根絶やしにした訳じゃないわよ?」
私がそう尋ねると、コクンと頷く
「それが良いんだ。そこらかしこに蔓延っている人族を一々探しながら全滅させるのも面倒だし、手間もかかる。だから生き残った人族には【狂笑道化団】を他国に喧伝する役割を担ってもらう。それに人族だけでは無く魔族も対象だからね・・・。端から確実にという訳にはいかないんだ。」
「ほぅ・・・。という事は・・・次は魔族が相手ですかぁ~?」
「だね。僕の知っている事でいうならばだけど・・・今魔族は3勢力がせめぎ合っているみたいなんだ。」
「・・・3勢力。」
その内の1つは間違いなく、あの【魔神】だろう
他の【魔王】達とは文字通り桁が違う
順当に行けばあの【魔神】が魔族領を支配するのは容易に想像できた
「姉さんの考えている事は何となくわかるよ。多分、あの【魔神】のことでしょ?」
「・・・流石ね。」
私がそう言うとニコッと笑い、言葉を続ける
「けど多分、あの【魔神】も容易に魔族領を奪る事は出来ないと思うよ?」
「魔族領の事を知っているの?」
「うん、魔族領で拉致された時に聞きかじった程度だけどね・・・。」
そう言ってクロノは魔族領を説明する為に口を開きだした
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