アカノの襲撃と衝撃
私の提案にクロノも、サイクスも驚いた表情を浮かべる
果たして私はそんなに可笑しなことを言っただろうか・・・?
自分の言った事を頭で反芻してみるが・・・うん、クロノ達の言った目的には沿った素晴らしい大義名分だ
「クロノ・・・優しさはお前の素晴らしい所だ。だが、復讐を企てようとするモノとしては中途半端だと言わざるを得ない。」
此処は彼の為にあえて厳しい言葉を投げかける
彼らの大義名分の為にも、此処は譲る事が出来ない
「貴方の言う世界とは、どの世界の事?自分が出逢ったモノ全て?貴方を虐げたモノ全ての事か?それは決して間違ってはいないわ。でも・・・中途半端に目茶苦茶にした世界の生き残りは、口を揃えて『あの化け物が』と言って畏怖し、隙あらば虐げようとするでしょう。そんな禍根や憂いを残す必要も無いし、残すべきではないでしょう?」
「「・・・・・・。」」
2人は私の言葉を聞き黙り込む
おそらく私の言い分を精査しているのだろうが、どの様な回答で有れ私は譲るつもりは無かった
そして・・・暫しの沈黙の後にクロノが口を開く
「姉さん・・・姉さんの言いたい事は理解したよ。確かに本当に復讐を完遂させたいのであればそれ位の気概は必要だと思う。でも・・・姉さんにそれが出来るの?」
「愚問ね。クロノを虐げた人族にも魔族にも情はないわ。龍族も存在する限りは脅威以外の何者でもないし・・・父さんだって殺して見せるわ。」
私が改めてそう宣言すると、クロノは無言で頷く
その瞳には決意の様なモノが秘められている様に感じる
「・・・分かった。じゃあ姉さんの言う通りにして・・・今、この時を以って僕らの仲間以外の全てが僕等の敵だ。」
「クロノ様ぁ~・・・本当に宜しいのですかぁ?」
「・・・うん。サイクス、これからはどうやって根絶やしにするかを話し合う様にしよう。・・・一度皆を召集した方が良いかもね。」
一度召集するという事は・・・クロノの仲間、つまり一番最後に殺すべき奴等と顔を合わせるという事だ
今は利用価値があるから殺さないでおいてやるが・・・私とクロノの為に最終的には死んで貰おう
私は2人の会話を聞きながらそんな事を考えていた。
◇
◇
それから10日後・・・クロノの仲間が召集されるにも時間が掛かるらしく一先ずクロノ、私、サイクスで近隣小国首都を襲撃する事に決めた
クロノが言うには、この国の人族にサイクスが虐げられた過去があるとか・・・
クロノの事なら兎も角、この軽薄な男の復讐に付き合うのは気が乗らなかったが、クロノ自身も付近までは同行してくれるとの事だったので、私も共に行く事に決めた
「クロノ。貴方自身は戦えるの?」
「・・・僕は少しばかり丈夫になった程度で姉さんは勿論、サイクスの足元にも及ばないよ。・・・姉さん、ごめんね。」
「い、いえ問題無いわ!!・・・だったら私からは基本的には離れないでね?」
正直、クロノが弱いままで助かった
彼に言うと落ち込むだろうから決して言わないが・・・クロノが弱いままの方が、より近くにいる事が許されるだろう
私はそれが嬉しかった
「でも思ったのだけど・・・クロノがトップよね?言ってはなんだけど・・・他の仲間がよく納得したわね?」
「アカノ様ぁ~・・・そこはですねぇ~、クロノ様が一番この世界を憎んでいるからなんですよぉ~。憎んでいるモノがトップであればぁ、私たち自身の指針がずれる事はないでしょうぉ?」
ご丁寧に軽薄眼鏡・・・いやサイクスが解説してくる
だがまぁ、そう言う事であれば納得は出来る
「でね、姉さん。僕らの集団に名前を付けたんだ。・・・ほら、2人で冒険者をやっていた時に【グングニル】と名付けたの様に・・・ね。」
「成程、確かに世界を恐怖に陥れるには名前を聞くだけで畏怖させる事は大事だな。何という名だ?」
・・・そうして私は【狂笑道化団】の一員となった
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