クロノの旅の始まり
Ⅱ章最終話です。
ここまでお付き合い有難う御座います!!
「其等に、慈悲は、無い…」
………え?
何で?
僕は誓ってこんな大仰な言葉を僕は言っていない
僕が言ったのは「お前たち許さないぞ!!」という言葉だ
僕が混乱しながらドギマギしていると
「な、何が慈悲だ!!ふざけんじゃねぇ!!」
別の男が剣を振りかぶり僕に向かって来る
「待て!こんな事やめるんだ!!」
そう言った僕の言葉は何故か
「止めよ、無益な殺生は、好まぬ…」
周囲にはそんな声が聞こえてくる
「うるせぇ!!!!」
僕の言葉を聞いて激昂したのか剣を振り下ろしてくる
それを事もなげに躱し上半身と下半身を真っ二つにしながら思案する
(これって絶対ブロウドさんの所為だよね…)
彼は僕に仮面を渡した時に『魔族っぽい仕掛けを施してある』と言っていた
(でも、これって…)
『魔族っぽい仕掛け』ではなくて『魔王っぽい仕掛け』な気がしてならない
「こ、こいつ!!!もう許さねぇ!!おい、全員で殺っちまえ!!」
「「「おう!!」」」
思案している僕を他所に山賊が一斉に襲い掛かってくる
「この羽虫が…」
そう呟きながら右手に真黒の球体を放つ
「おい魔法だぞ、避けろ!!」
見当違いの叫び声が聞こえる
球体は直ぐに大きくなり奴らの前に到着する頃には人族3人が入るくらいの大きさとなった
「うぁぁぁぁぁーーーーーー!!」
球体は自ら周りの生物全てを吞み込むんでいく
「な、何だ?!」
「た、たすけ…」
「やろ…」
周りの山賊が次々と呑み込まれる
…
……
魔法が消えた頃には残った山賊は2人だった
1人は木にしがみつきながら茫然とコチラをみている
もう1人は腰が抜けたのだろうか?こちらを見ながら後退る
僕は後退ろうとする男へゆっくりと近づいていく
(人族の時に山賊退治の依頼を受けていて良かったな)
人族の命を奪うという行為に躊躇は無い
それが非道な者なら猶更だ
「お、お前は…今、な、何を…」
「我は魔族。其等に施したは、【魔王】固有スキル。」
「ま、ま、まお…」
僕はそう告げると同時に相手の首を飛ばした
殺す理由は然程無いけど、生かす理由はもっとなかったからな
(さて…)
振り返って襲われていた魔族の方へ戻る
もう1人の茫然としていた男もすれ違いがてらに首を飛ばしておいた
暫し茫然を事の成り行きを見ていた3人だが僕が近づいて行くと手を地面に付けて頭を下げてくる
あ、男の人は傷の所為か寝転がったままだけど…
僕は男の人の前に立つと腕を伸ばし薄くて黒い光を翳した
「黒癒…」
彼の身体が淡い黒色に包まれた
「え?き、傷が…傷が治っている!!!」
(流石魔族、人族の斬り傷でも命に別状はなかったみたいだな)
そんな事を考えていると男も跪く
「さ、先程は危ない所をお助け頂き誠に有難う御座います!!」
「「有難う御座います!!」」
「些事故、気を病まずとも、良い。」
「そ、それで【魔王】様というのは…ほ、本当なのでしょうか?」
「是。」
「お手を煩わせてしまい、申し訳ございませんでした!!ち、因みにどちらの国の【魔王】様なのでしょうか…?」
…国?
【魔王】って国を治めているものなのかな?
どれ位の数の【魔王】がいるんだろう?
そこら辺の知識がないから何とも言えない
「し、失礼いたしました!!踏み込んだ事をお尋ねいたしました!平にご容赦下さい!!」
暫し思案していた僕の不興を買ったと感じてしまったみたいだな
「気を病むな。我は、我。国等に属する存在では、ない。」
…返答がいちいち大袈裟に変換される
それより近くに休める場所はないか聞いてみようとすると
「ま、【魔王】様!ご無礼で無ければ私たちの村までお立ち寄り頂き、どうぞお休みください!!簡素で貧しい所ですのでご満足頂けませんが、雨露はしのげますので!!」
男の人が有難い申し出をしてくれた
何も知らない僕にとって、この申し出は有難い
「是。其の提案を許す。」
僕がそう告げると3人は顔をほころばせる
彼らは急いで馬車の準備を進め、荷馬車の中へ誘導された
「そ、それで【魔王】様…御名を、お尋ねしても宜しいでしょうか…?」
「我が名はクロノ、【クロノ=エンドロール】。魔族として産まれた、何も無き存在よ。」
僕の声は風と共に流れていった
ここから僕の魔族としての生活は始まった…
という訳でⅡ章最終話となります。
ここからクロノさんは旅を始める様な形となっております。
今後ともお付き合い有難う御座います!!
【間章】を挟みましてⅢ章へ向かう予定です。
これからもどうぞ宜しくお願い致します!!




