クロノの勝機と消費
「・・・確かに君に敗北すると今までの計画や時間が泡沫と化いてしまうね。けれど本当に君が私に勝てればの話だが、ね。」
そう言った瞬間、また極大の炎弾をこちらに飛ばして来た
炎弾を最低限の距離感で回避し、僕は考えていた事を試みる
(けど・・・時間稼ぎも必要だな・・・。)
「ブロウドさん、この国は魔力が発生しない場所と仰ってましたよね?」
「あぁその通りだよ。」
「でもブロウドさんだけが魔力を使用できる・・・。」
「その通りだよ。ただ厳密に言えば神は勿論、他の【真祖】も使用できるね。何せ私たちは魔力から子孫を創造したのだから身体にある魔力量が文字通り桁違いだからね。」
「・・・やっぱり。」
その言葉を聞いて思わず口角が上がる
「・・・ん?」
「やっぱりそうなんですね・・・。推測が確信に変わりましたよ。」
「何を言っているんだい?」
「詰まりは神も【真祖】もこの国では周りの魔力を利用しているんではなく・・・身体に包括させている魔力を使用しているという事ですよね?」
「・・・・・・。」
ブロウドさんが黙った瞬間、僕は一気に距離を詰めて彼に斬りかかる
それは当然の様に受けられるけれど・・・そこは然したる問題じゃない
「不思議だったんです。ブロウドさんが放った魔法は初級の『ファイアボール』と『アイスランス』・・・一気に超級魔法や禁呪を使えば良いのに何故だろう?と思いました。まぁ、どれも威力は初級魔法には似つかわしくない威力でしたけどね。」
「・・・・・・。」
「本来のブロウドさんであれば禁呪でも使用してさっさと僕を倒す事が出来たでしょうけど・・・今の貴方は致命傷を負っている。傷を癒しているのか痛覚を止めているのか、はたまたどれでも無いのか・・・それは分かりませんがタダでさえ本来よりも少ない魔力量をそっちにあてがっているが故に禁呪等を使用する事が出来ない。」
「大した洞察力と推測だね・・・。殆どが正解だと言っておこうか。だがそれでも私の優位は変わらないよ?」
「えぇ勿論です。身体能力が劣っている上に魔力が使用できない僕だと勝ち目はないでしょう。」
「ほう・・・ならどうするのかね?」
(そろそろかな・・・?)
僕は斬撃を繰り出しながら、一気に距離を空ける
「ブロウドさん・・・人族や魔族は周りの魔力を体内に吸収して魔法やスキルを発動させますよね。」
「うん、そうだね。」
「だったら・・・僕が今体内に貯蓄している魔力を使用すれば・・・使えますよね?」
「ハハ・・・それは些か無謀だね。魔力は何も魔法やスキルだけに使用されている訳じゃない。戦う事、歩く事、呼吸する事ですら超微量とはいえ魔力を使用しているんだよ?私みたいに異常な量の魔力を保有しているなら兎も角・・・君が・・・?!!!」
彼がそう言った瞬間に片膝を付く
心なしか呼吸も荒い様に感じる
「流石【真祖】ですね・・・。全てを頂こうと思ったのに・・・半分しか奪えませんでした。」
僕は自分の腕を見つめて、身体の動きを確認する
魔力の保有量の違いはここまで如実に差が出るのかと内心驚いてしまう
「・・・何を・・・した?」
「僕の事を監視していたのじゃないですか?永い期間格下としか戦っていなかったから警戒心が無くなるんですよ?」
「・・・成程。」
「ブロウドさんの予想通りです。僕は自分の身体にあった魔力全てを使用し【強欲ナル手】を使用しました・・・。正直、【真祖】相手に効果があるのかは疑問でもありましたけどね。」
「正に、ハイリスクハイリターンだね・・・。」
そう言いながらも若干ふらつきながら立ち上がって来る
彼の言う通り、幾つかある策の中でこの策が一番リスクが高く、けれども嵌まれば一番勝利が近づくとも言える策だ
約半分とは言え、魔力を奪う事に成功した僕は、自分の勝利の確率が5割超えたと確信したのだった
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