【間章】ダンキとロキフェルの閑話
「おい餓鬼。」
自国領へ戻る道中、横でまだどこか気落ちした表情を浮かべる餓鬼【魔王】に声をかける
「・・・なんだい馬鹿?」
返事をして来る言葉にも抑揚が無く、元気が無い事が手に取る様に分かる
「いつまで落ち込んでんだ?主君まで気を遣わせてんのは・・・違うだろうが?」
「・・・分かってるよ。」
「分かってる訳ねぇだろうが・・・この餓鬼が。」
俺がそう言うとキッと睨みつけてきやがった
一丁前に生意気な奴だ
「馬鹿に何が分かる!!僕が提案した作戦の所為でお兄さんとお姉さんが戦ってしまったんだ!!しかもその結末が・・・お姉さんが正気を失ったなんて聞いたら・・・僕はどうすれば良いんだよ?!!」
あぁ、やっぱり餓鬼は餓鬼だな・・・
一丁前に責任を感じてやがる・・・そう思い、思ったままに口を開く
「どうもこうもねぇだろ?今までお前がやっていたまんまをやってれば良い。」
「・・・は?」
「良いか?主君と主君の姉君が戦った事はお前に責任はねぇ。あの時はお前の策しかなかったし、主君が来られた時に止める事が出来なかった俺たちの責任でもある。・・・お前が責任を感じる要素は何一つねぇよ。」
「・・・でも」
「そもそも主君は健在だ。姉君の事は残念ではあるものの生きてはいる。だったら我が主君が最終的にはどうにかするだろうぜ。まぁ、俺は主君さえ無事であればどうでも良いと思っているがな。」
「・・・なにそれ・・・馬鹿はやっぱり馬鹿だね。」
そう言って少しだけ口角が上がる
コイツはちっとばかし小生意気な位が丁度良い塩梅だ
「・・・お兄さんは凄いなぁ。」
「あぁ、あの御方は正真正銘の化け物だ。」
そう言って、今はこの場に居ない主君に思いを馳せる
強大な力を持ち、我らの前に悠然と立ち塞がった我が主君
だが・・・
「お兄さん、【ズファイオ魔帝国】でどうしてるのかな?」
「さぁな・・・だが【魔神】か【真祖】とでもやりあっているんだろうぜ。」
「しかもそれ以外の兵士も多数居たら・・・厄介だろうね。」
「まぁ厄介だろうな・・・。流石の我が主君も苦労はなさるだろうよ。」
「だよねぇ・・・相手は同格か遥か格上の存在だものねぇ・・・。」
「でもまぁ最終的に勝利するのは我が主君だろうよ。」
「それだけは間違いないねぇ・・・。」
こいつも同意しているという事は、こいつ自身も理解しているのだろう
まぁ人族を相手していた時にも主君の真の強さを理解している様な口ぶりだったしな
「なぁ餓鬼、お前は我が主君のどんな所が一番怖い?」
多分俺と意見は一致しているだろうが、念の為に確認して置く
すると餓鬼は「そうだねぇ~。」と言いながら言葉を続ける
「お兄さんの【大罪スキル】は厄介だよねぇ・・・あのスキルは殆どのモノを喰ってしまうし応用も効く。それに加えてお兄さんのステータスも異常だよね。お兄さんは魔法系というかスキルが得意な【魔神】だ。
にも拘らず【剣神】と渡り合う素早さや力を持っている。ハッキリ言って反則だよね。」
「我が主君は俺が【大罪スキル】を発動させても渡り合っていたからな。・・・確かに異常だ。だが・・・」
「分かっているよ・・・ハッキリ言ってそれらは飽くまで付属品だ。お兄さんがハッキリと異質なのは・・・絶体絶命の場面でも物事を思考出来、新たな策を思い付き、実践する事が出来る・・・『有り得ない程の冷静さと豪胆さ』だよね。」
「だな。あれはハッキリ言って異常じゃ済まねぇ・・・。どんな歴戦の猛者でも絶体絶命のピンチの時にゃ切札を切るか、今まで培ったもんに頼っちまうもんだ。ヒヨッコなら頭が真っ白になり思考も行動も不能になるわな。」
「そうだね・・・お兄さんは先ずそこが違う。自分の命が危うい状況でも徹底的に俯瞰した視点で冷静に場を見る。それで対抗策を持っていればそのカードを切り、対抗策がなければ・・・新たなカードを作成し、切っていく。僕はそれが怖いよ・・・。」
「一瞬の内に選択肢を徹底的に吟味し、最善と言う手を迷わず使用する。例えそれが今までに使った事が無い手だとしても・・・。俺ぁそんな奴を見た事が無いし、考えた事すらねぇ。」
「無い所から何かを創造する・・・あれこそが化け物、怪物、異質な存在、特異点なんだろうね。」
「お前・・・自分の主君に容赦がねぇな?!」
「僕は馬鹿と違って属国とはなっても忠誠は誓ってないからね。軽口くらい何てことないさ。」
俺がそう言うと幾分か普段か調子戻った様な表情を浮かべてそう答えてくる
「まぁ何にしろ・・・我が主君を相手にしたのが相手の運のツキって事だな・・・。」
そう餓鬼に言う訳でも無く呟いたのだった
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