クロノの登城と登場
「ここが王城・・・か?」
【天聖国アンギス】の王城を発って2日後、僕は【ズファイオ魔帝国】の王城らしき荘厳な城門前に佇む
「しかしこの国は・・・異常だな・・・。」
この2日間で改めて異常性を思い知らされる
生物がいないのだ
魔族は勿論、魔物、鳥、虫・・・ありとあらゆる生物がいない
あるのは草原と樹木だけという異様な国としか表現できない場所だ
当然、その様な国だからこそ、この王城?に辿り着くまでに村も町も道すらなかった
この2日間でどうにか唯一見つけたのが目の前の城・・・
僕はこの城が王城であると思うしかなかった
(しかしすす汚れているのかと思ったけど・・・存外綺麗な内装だな・・・。)
開きっぱなしだった城門を通り、鍵のかかっていない扉を開くと・・・薄暗くはあるものの埃っぽさもない広間が眼前に映し出される
目の前の階段を上り、奥の扉を開くと大きな廊下が造られていた
ーーコツッーー
ーーコツッーー
自分の足音が反響する音を聞きながら、廊下を臆する事無く真っすぐに進みながら一つの確信が頭によぎる
(絶対にブロウドさんは此処に居る・・・。)
居た・・・のかもしれないが、彼が関係しているのは間違いない
【嘆きの森】で見つけたあの屋敷・・・この城はあの屋敷と雰囲気が同じなのだ
気配はしないのに不自然な程清潔感のある内装や雰囲気、はたまた同質の調度品が彼に関係していると僕に訴えかけてくる
ーーコツッーー
ーーコツッーー
僕は彼と逢って、どう思うのだろう・・・
そして彼は僕と逢ってどう思うのだろう・・・
今の自分の感情が、彼と逢う事でどう変化するのか・・・
それを知りたいと強く願う反面・・・知りたくないとも強く思う・・・
外から見ると広大だった城も、様々な事を考えながら歩いている内に廊下は終わっており、その代わり目の前に大きな扉が目の前に立ち塞がった
(多分・・・この謁見の間に・・・。)
ブロウドさん・・・もしくはそれに連なる誰かがこの奥に待機している筈だ
僕は緊張しながら扉の錠に手を掛け動かしていく
ーーギーー
ーーギギギーーー
鍵は掛かっていなかった様で、難なく扉は開かれた
謁見の間であろう部屋には王座に至るまでの赤い絨毯が敷かれている
僕はその絨毯に沿ってまっすぐと進んで行った
すると・・・
「やぁクロノ君・・・久しぶりだね。」
そう言って初めて逢った時と変わらない様な明るい口調で、王座に座りこみながら、僕に対して軽く手を振って来る
傷だらけのブロウドさんが居た
「・・・その傷は?」
「おいおい・・・久しぶりに逢ったんだ、挨拶くらい返してくれ給えよ。」
そう言いながら余り余裕がない様な表情で笑いかけてくるブロウドさんはどことなく顔色も良くない
「ブロウドさん、お久しぶりです。・・・お会いできて、嬉しいです。・・・で、その傷はどうされたのですか?」
疑念は有りながらも敬愛する【真祖】だ・・・
僕は頭を下げて彼にそう告げる
「この傷かい?ハハ・・・兄弟喧嘩と親子喧嘩を一緒にやっちゃってね。」
すると彼は指をパチンと鳴らすと同時に壁にかかっているランプに一斉に火が灯っていった
「多分、君は私に聞きたい事が多分にあるだろう?私は私で君に言いたい事もある・・・先ずは僕の顔に免じて話し合いをしないかい?」
そう言っていつの間にか王座の階下すぐ脇に以前まで一緒に使わせてもらったテーブルと椅子、ティーセットへ誘導された
「・・・分かりました。でもその身体では・・・。」
「なぁに・・・深手ではあるが致命傷ではない。命に別条は無いさ。」
そうにこやかに笑いかけてくる
僕も命の恩人に対して有無も言わせずに斬りかかる真似はしたくない
今でも僕は・・・彼の事を信じている
「さて・・・。」
2人して席に着き、無言のまま暫く鎮座した時、ブロウドさんは口を開いた
「・・・君とアカノさんの戦いを見たよ。あれだけの戦いを見たのは本当に久しぶりだ。」
そう姉さんを知っている様な口ぶりで話し出した
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