クロノの感慨と感懐
人族領から帰還して2日後、僕は再度皆を集めた
「旧知の人族に話を通して来たよ。取り敢えず10日間は人族領へ進軍する事は中止する。」
「「はっ。」」
「それで向こうの回答を得る為に例の砦に伝令を送らないと駄目なんだけど・・・誰かいく事は可能かな?」
「・・・それでは私が。」
そう言ってマリトナが挙手してくれる
その表情は未だ落ち込んでいる様子が窺い知れるが・・・少しずつ自信を取り戻してほしい
「うん、じゃあマリトナにお願いするよ。大丈夫だと思うけれど人族が強襲してくる可能性も無いとは言えない。だから兵100と一緒に向かってね。」
「・・・はっ。」
ルナエラの口ぶりから大丈夫だと思うけれど・・・【勇者】や各国の王がどう動くかは判断しかねる為にそう指示した
「さて、と・・・じゃあ僕はポセイランから武器を購入してからアンギスへ向かい魔帝国へ向かうよ。」
「あの・・・【魔神】様、本当に単身で魔帝国へ出向かれるのですか?」
ルーシャがおずおずとそう尋ねてくる
それは皆も一緒だったようで心配した表情をこちらへ向けてきた
「うん・・・悪いけれどこれは譲れない。禁忌ともいわれる場所に大勢で行った場合、単身なら何とか撤退できてもそれが出来なくなる。それに・・・これは僕が【真祖】から受けた課題だからね。それに信頼していない訳じゃなくて、皆を巻き込みたくないんだ。」
そう言っても納得した表情を浮かべはしない
(まぁ、そうだろうな・・・)
姉さんとの戦いの事は皆に伝えてある
その時に姉さんが【真祖】と名乗るモノから虚偽説明を受けているらしい事もまた同様に伝えてある
ブロウドさんが黒幕だった場合、抗戦状態になる可能性は決して低く無い事を理解しているのだろう
「申し訳ないけど、この件は譲る気は無い。その代わり・・・皆にはこの国を任せるよ。帰って来たけど帰る場所がないんじゃ悲しいからね?」
僕がそう告げると各々が思考し、ダンキが徐に口を開く
「・・・承った。俺は【鬼人国ソウトウキ】へ一度戻り、他国の防波堤の役目を行おう。主君は何も気に病まず出向いてくれ。」
「そうですね・・・私も【妖精霊国インフォニア】に戻り偵察部隊を編成、派遣致します。旦那様が戻られた際にガッカリさせない様に致しますわ。」
「じゃあ僕も【遊戯国トリクトリロ】に戻ろうかな・・・。色々考えたい事も有るし・・・。」
「私は元ブーザル領に戻り、情報収集と皆の生活を確認してまいります。」
「私は当然、クロノスをより豊かにする為に執務を行います!!」
ダンキを皮切りに各々が自分が行う事を告げてくれる
魔族領であっても【魔王】の命令なんかが無くても、自ら動こうとしてくれる姿勢が嬉しかった
「皆・・・有難う・・・宜しく頼むね。」
そう言って軽く頭を下げると皆が慌てていたのが面白くも頼りがいがあると感じた
その後の国内情勢の報告と話し合いはスムーズに進んでいった
◇
「ふぅ・・・。」
久しぶりに自分の寝室で一息つき、椅子に身を委ねる
1人になるとどうしてもブロウドさんと姉さんの事が脳裏から離れない
結局の所、ブロウドさんが姉さんに嘘をついたのかどうなのか
その一点に尽きると思う
もし姉さんが本当の事を知っていたなら・・・多分、また違う未来があった筈だ
ブロウドさんが嘘をつく理由が見当もつかないのが余計に気持ち悪い
もしもブロウドさんが言ったのではないのなら・・・
サイクス達か他国の【魔王】だと考えるのが順当だろう
勿論、情報が少ない中での考察だから信憑性もまだまだ低いけれども、そう考える方が自然だ
(・・・っ!!違うだろ?!!)
そう考えるのが自然なんかじゃない!!
そう考えたいだけだ!!
「・・・こんなに真実を知りたいと思ったのは生まれて初めてかもしれないな。」
寝室から見える白銀の月を眺めながらそう呟いた
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