クロノと最大の再会
「父さんと会うよ・・・。短時間だったら父さんの身体に影響ないと思うし。」
そう告げるとルナエラは頷く
「じゃな・・・。あの御仁は強い。流石に話す時間くらいはあろう。」
「お願いが有るんだけど、父さんと話す時はルナエラもファーニャもサラエラも別室に居て貰う事が出来るかな?」
「そうしてやりたくもあるんじゃが・・・。そこの2人を待機させる部屋が無い。」
まぁ魔力が漏れるとギルドにいる職員や冒険者にとっても毒だしな・・・
「旦那様、お気になさらず。親子の会話には決して口を挟みません。」
「我が盟主、盟主の親御様と言えど2人きりにさせる事は私には出来ません。」
「だ、旦那?!!クロノお前・・・妻帯者になったのか?!!」
「いやいやいや・・・。」
飽くまで婚約者ではあるが・・・そこら辺をルナエラに説明するのが非常に面倒だった・・・
◇
◇
あれからルナエラに説明を行ってから父さんを呼びに行って貰い、僕等は待機する
「旦那様・・・お父上様はどの様な御方なのですか?」
「そうだね・・・小さい時は実の親以上に優しかったよ。それこそ姉さんと何一つ変わらず特別扱いもする事無くね。成長したら剣を教えてくれる師匠の様に接してくれてたから・・・厳しくも優しい父さんだったな。」
「・・・良い親御様なのですね。」
「そうだね・・・うん、そう思うよ。だからこそ・・・」
今から伝えなきゃいけない内容が心苦しい
育てた息子は・・・実の娘は・・・そう伝えた時の父さんの反応を想像すると・・・辛い
ーードンドンーー
「・・・失礼する。」
そんな事を考えていると扉が開かれ初老に差し掛かろうかとする男性の姿が現れた
片脚は義足に替えられており、剣を腰に据え、身体が不十分であるにも拘らず強者独特の雰囲気を醸し出していた
「・・・父さん。」
「・・・・・・。」
僕がそう告げると・・・睨みつけて、こちらに近づいて来た
その足取りは義足だからなのか、ルナエラから事前説明を受けているからなのか分からないが・・・何処か重く感じた
「・・・・・・。」
父さんが何も言わずに僕の目の前に立つ
その雰囲気と視線に怖じ気づいてしまうが・・・今から僕はこの人を不幸のどん底に落してしまう
そう思い、何も言わずに彼の前にただ立つしか出来なかった
「・・・・・・クロノ。」
「はい・・・。」
ーードゴッーー
「?!!」
返事をすると同時に左頬を思い切り殴られた
ファーニャとサラエラは一瞬反撃を試みようとするが僕は手で制する
ーードゴッーー
左頬を再度殴られる
身体的ダメージは皆無だが・・・心が痛い・・・
ーードゴッーー
ーードゴッーー
ーードゴッーー
ーードゴッーー
ーードゴッーー
「フフフ・・・」
立て続けに5発殴ってきた後に・・・父さんは少し憂いを感じさせる表情で微笑んだ
「・・・強くなったな。」
「・・・はい。」
僕がそう返事すると・・・僕を抱きしめた
表情は見えないが、肩が震えていた
「馬鹿もん・・・馬鹿もんが・・・」
「父さ・・・」
そう返事しようとすると同時に・・・自然に涙が溢れ出てきた
「父さん・・・僕は・・・」
そう言うと僕の背中ドンドンと叩き、より強く抱きしめてくる
今は何も言わなくていい・・・お前も大変だったな・・・無事でよかった・・・逢えて嬉しい・・・そんな父さんの感情が伝わって来る様だった・・・
「父さ・・・僕、は・・・」
泣いているのを悟られまいと口を開こうとするが何も言う事が出来ない僕に、父さんは再度背中を叩いてくる
僕は何かを言わなければならないのに何も言えない・・・
父さんは何かを聞かなくてはならないのに何も聞かない・・・
ただ僕と父さんは互いを抱きしめて、互いの再会を表わす以外、今この時は出来る事など何一つなかった・・・
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