クロノの天意の転移
◇
あれからかなりの時間が過ぎた
いや…元の世界では10日程しか経過していない
しかしブロウドさんが作った世界では約2年は経過している
髪は大分伸びはしたが魔族になったからか、あの空間では成長も止まるのかは分からないが見かけは何も変わっていない
(…髪は伸びたから多分魔族になったからなんだろうなぁ)
改めて人族では無くなった事を実感させられてしまう
今日は珍しく屋敷の応接間に誘導された
そこでいつも振舞ってくれる僕が好きな飲み物が彼の対面に準備されていた
僕が席に座るとブロウドさんを僕をしげしげと見つめる
「ふむ…何とか並みの魔族程度であれば問題なく処理できる強さにはなったかな?」
当の本人はそう言いながら優雅にカップに口をつける
「これだけやって並みの魔族を倒せるレベルなんですね…」
僕はげっそりとした表情で返答する
…正直厳しかった
ブロウドさんだから優しく教えて貰えると思った僕が甘かった
毎回、本当に死ぬかとも思ってしまった
「まぁ強くなるにこした事はないよ。魔族は人族と違ってどこか実力至上主義的な要素がるからね。」
「…人族も一部そんな風に考えている奴らはいるんですけどね。」
ローエルが頭に浮かんで思わず返答してしまう
(ローエルって考え方が魔族に近かったのかな?)
そう考えると思わず苦笑してしまう
「さて…君を鍛える事も一段落した所でなんだが…クロノ君、君はこれからどうしたい?」
「どうしたい、ですか?」
「そう、君には今後の行動が幾つか選択肢がある。1つ目は人族だった君を殺した奴等に復讐を行う。もう1つは魔族として魔族領へ行く。最後に世捨て人として何をする訳でもなくただ放浪の旅へ向かう。まぁ大まかに分けてこの3つだね。」
「復讐ですか…あまり気乗りはしないんですが、彼らはSS級のパーティーですよ?並の魔族に勝てる程度の僕に復讐できるとは思えないのですが…」
僕がそう言うとニカッっと笑う
「大丈夫、今の君なら奴等が余程強くなっていない限り負ける事はあり得ないから!!」
「……僕はどれだけ強くなっているんですか」
僕は本当に並の魔族に勝てる程度の実力なんですか?!と聞きたくなる衝動をグッと堪えた
「でもやはり復讐は僕向きでは無いですね。悔しいとか怒りとかは確かにありますけど…魔族になって、ブロウドさんに出会えた事は僕にとってそれ以上にプラスになった気がしますし…そうですね、取り敢えず僕は魔族領の方へ向かいたいと思います。」
「ほう、それは予想外だね。私はてっきり君は放浪の旅に出るかと思っていたよ。」
「それも魅力的ではあるんですけどね…僕は魔族の事を何も知りません。知りもしないのに知る事を放棄するのも魔族としての自分に失礼かな、と。」
ブロウドさんはくくっと笑う
「成程、その考え方は実に君らしいよ。では君に教えを施した者として最後の課題を出そうかな?」
「課題ですか…」
警戒しながら答える
そう、ブロウドさんは事もなげに課題という言葉を出して散々無茶ぶりをしてきていたからな…
「そう、君を魔族領のある場所に置いていく。そこから指し示す場所までたどり着き給え。」
「…分かりました。移動手段は徒歩のみですか?まさか匍匐前進でとか言いませんよね?」
「いやいやいや、徒歩でも馬車でも空を飛んでも構わないよ。君は僕を何だと思っているのかね?」
「【真祖】だとは思っていますよ。」
そう言いながら匍匐前進でと言い出しかねない事を知っている僕は警戒しながら返答する
「課題に関しては分かりました。期限等はありますか?」
「いやないよ。今回の目的は君に魔族領を知って貰う事を第1に、強くなって貰う事を第2としているからね。ゆっくり旅行気分で目的地に向かえば良いさ。」
「はい。」
(旅行気分で強くなるものかなぁ…)
「その姿のまま魔族領に行くと面倒事が増えすぎるね…これを受け取り給え。」
僕の前に黒いローブと仮面が現れる
「これは?」
「姿を隠すためのローブと顔を隠す為の仮面だよ。ローブはそれなりに耐久性に優れているし、仮面は魔族っぽい仕掛けも施しているからね。」
「魔族っぽい、ですか…」
僕がそう答えると椅子の下から魔法陣が突如現れた
「じゃあ、いってらしゃい。気を付けてね!」
「え?」
手を振った彼の姿が瞬時に消えた
(ここは…)
周りを見ても木だらけ
多分僕はどこかの森に転移されたみたいだ
「ブロウドさん…僕、何も準備していないんですけど…」
僕の悲壮な呟きは当然誰にも聞こえない…
クロノさん放置されプレイですね。
このお話には自分の中で2択となっていましたがこちらを採用しました
Ⅱ章も残り僅かですがお付き合いをお願い致します。
「おいおいおい、魔族はどんだけ強いんだよ。」という方は★を
「Ⅱ章って中途半端に終わりそうじゃね?」という方はブックマークをお願い致します!!




