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アカノクロノ  作者: ばてぃ〜
Ⅻ章【クログロトシタギネン】
284/640

クロノの死合と悲哀


僕が自分の浅慮さに嫌気を差している間に彼女はフラフラの状態でありながらも立ち上がる


「舐めている・・・のか?私を舐め・・・て・・・。」


最早意識も朦朧としているのだろう・・・目は虚ろにブツブツと呟いていた

そして僕に近接戦を仕掛けようと距離を詰めてくるが・・・触手が阻み僕の元へ辿り着く事が出来ない


そんな彼女を見て、僕の心の内に去来するのは・・・虚しさだ


「憐れむな・・・同情するな・・・蔑むな・・・手を、抜くな・・・。」


僕の心中を知らない彼女はそう言って雄たけびを上げると同時に『飛炎斬』を連撃で放ってきた


(もう・・・どうでも良い・・・。)


『飛炎斬』を喰う【暴喰ノ口】を見ながら諦観の念が湧き出てくる

結局、僕には姉さんを殺す覚悟は出来ていなかった・・・

そもそも【剣聖】として無力化出来れば殺した事と同義だと自分に言い訳をしている時点で覚悟が決まっていなかった事に今更気付く


・・・気付けば【暴喰ノ口】を消して・・・彼女の元へ歩を進めていた

僕は姉さんに殺されよう・・・

姉さんも僕が死ねば魔族を根絶やしにするとは考えないだろう

ルーシャ達も僕が死ねば人族を警戒して攻め込まないと信じている


(あぁ・・・死ぬ瞬間に転移して戦争を止める様に言っておこうかな?でもそれだと姉さんは逃げたと思って魔族領に攻め込んでいくかな?)


難しいなと渇いた笑いが自然に出てくる



ーーードシュッーーー



そんな事を考えていると・・・姉さんの『飛炎斬』をまともに喰らう

その反動で少し後退してしまう物の、ローヴのお陰か僕自身の防御力の所為か傷はそこまで深くない


(そもそも姉さんが逢ったのはブロウドさんなのかなぁ・・・。)


僕は再度歩き出しながらそんな事を俯瞰的に考える


「き・・・貴様・・・私を愚弄するのかぁ!!!」



ーーードシュッーーー



(仮にブロウドさんだとして・・・僕と姉さんを戦わせることに何のメリットがあるんだ?)



ーーードシュッーーー


(僕を殺したいのなら・・・あの人だったら容易な筈だ。勿論その逆も然りだろう・・・。)


ーーードシュッーーー


(という事は僕等のどちらかを殺す事が目的では無く・・・戦わせる事が目的だった?)


「く、来るなぁーーーーーー!!!!」


姉さんは恐怖が混じる声色で僕に懇願する様に叫ぶ

けれど・・・この程度であれば僕は死なない

やっぱり直接斬って貰う方が良いんだろう

正直、ブロウドさんの件も今はどうでも良いとさえ思える



・・・



・・・・・・



「あ・・・あ・・・。」


そんな事を考えながら無造作に近づいた結果、僕と姉さんの距離は既に手を伸ばせば触れる事が出来る程の距離まで近づいていた


「・・・満ち足りたか?」


僕は唐突にそう挑発した

激昂して直接斬ってくれれば流石の僕も致命傷を負う事が出来るだろう


「あ・・・あ・・・。」


「其の、斬撃全てを享受し、それでも尚、我は今、この場に立っている・・・。」


また・・・このまま姉さんの心を折る事が出来れば、姉さんは脅威となる事にはならず殺されも殺しもしないで良くなる

この期に及んで未だそんな答えしか出す事が出来ない自分に辟易してしまうが・・・これも1つの落としどころだと自分を誤魔化す


「・・・あ・・・あ。」


「其の、感情全てを受け入れ、それでもなお、我は、この場に立っている・・・。」


「・・・あぁ・・・・あぁ。」


「国を捨て、世を捨て、弟を捨てよ・・・。されば命は、狩らぬ。」


そう言って僕は更に魔力を込める

これで姉さんの心が折れてくれればある意味で中庸的だが解決策の1でもある


(でも多分・・・。)


「わ・・・わ・・・私、は・・・。」


言い淀む姉さんの眺めながら次の言葉を待つ

最早答えが分かっている答えをまっている気分だ


「わ・・・私はぁーーーーー!!!!」


これで心が折れてくれるのならば幸運だが・・・そんな人族がこの場所まで辿り着けるわけがない


「私は!!生半可な覚悟で!!弟を!!探していたんじゃ・・・ない・・・。」


そう言いながら拳を振り上げて僕を殴りつけ様とする彼女を見て、自分の答えが間違っていないと確信した

それは・・・少しの無念さと、思いの外大きい喜びだった・・・

いつも有難う御座います!!

「面白い&期待している」という方は★&ブックマークを是非ともお願い致します!!

ご感想やレビューも心よりお待ちしております!!

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