クロノの激動の激闘
姉さんは僕の知らないスキル、【明鏡止水】とやらを発動させる
どんなスキルかは知らないが数十もの触手を辛うじてながらも回避している様を観察し、回避系スキルだろうと結論づける
(だったら・・・。)
姉さんが触手を斬っていくタイミングで死角へ移動を開始する
「なっ?!!がぁーーーーーー!!!!」
死角を数珠つなぎの様に移動し、一気に側面から腹部を殴打させる
すると攻撃を受け慣れていないのは相変わらずだったみたいだ・・・
姉さんは僕の攻撃をまとも受けて後退していく
(ここで一気に押し切るっ!!)
此処で押し切らなければ、姉さんの【剣聖】としての攻撃を捌いて行かなければならない
それは幾度となく見てきたあの攻撃を僕がどうにかしないといけなくなるという事だ
今の僕なら全く自信が無いという訳ではないけれど、リスクは少ないにこした事は無い
剣を携えて、一気に距離を詰め寄って斬りつけるも寸前で斬撃を捌かれる
(流石姉さん・・・ちょっとした奇襲は簡単に通用しないな・・・。)
ただ捌かれてしまう程度は予測できていた
僕はそれを気にする事なく、五月雨の様に絶え間なく斬撃を浴びせようとする
すると・・・剣のデバフ効果が少しずつ如実になってきたのだろう
明らかに動作が一呼吸遅れてきた
(ここでっ!!)
殺気を伴った斬撃を繰り出すも、空中へ回避されてしまった
(だけどまだっ!!)
姉さんが呆気なく倒せるなんて最初から考えてはいない
呼吸させる間も無く押し切るか、もうどうにもならない状況まで追い込むかのどちらかしかあり得ない
そう考え追撃するべく僕も空中へ追撃をかける
「それを待っていた!!【赤龍ノ咆哮】!!!」
瞬時に巨大な火柱が5つ顕現されて、唸りを上げながら僕へ襲い掛かって来る
(ここで勝負手?!!)
僕の知る限り、姉さんが持つ最強スキルで僕をカウンターで襲い掛かってきた為に、身体が一瞬膠着してしまうが・・・背後から触手が【赤龍ノ咆哮】へ襲い掛かり捕縛する
「【暴喰ノ口】・・・か、悪食めっ!!」
その様子を見て悪態をついて来る
完全に想定外だったのだろう・・・僕はその様子を見てそのまま追撃するべく襲い掛かっていったが、僕の斬撃を捌かれて互いに着地する
・・・見た感じ、姉さんは疲労している
けれどデバフを受けて尚、あれだけ動く事が出来、【赤龍ノ咆哮】を発動できるまでに魔力量も身体能力も無かった筈だ
「其は・・・誠に【剣聖】か?」
思わずそう呟いてしまう・・・
幾ら強くなったからと言って・・・此処まで強くなっているのは何か理由がある筈だ
(もっと早くに気づくべきだった・・・。)
幾ら姉さんが強いと言っても人族で【魔王】2人とマリトナを圧倒できる時点で規格外なのだ・・・
そう悔やいていると、何でもない様に姉さんが答える
「私は今、【剣神】だ。」
その言葉に・・・正直驚愕してしまう
僕は【魔神】となった
けれどもそれは・・・魔族となり強靭な身体を持ち、ブロウドさんに徹底的に鍛えられ強くなり、【魔王】を叩き続けたからこそ到達できた極地だ
それを・・・
「・・・其は、人族の身でありながら・・・【剣神】まで至ったか。」
人族の身でどれ程の強さを求めればそこに到達できるのだろう・・・
人族領では称号が上がる事は知られていない
にも拘らず、姉さんは【剣神】にまで辿り着いた
それは単純な人族一生よりも濃密で過激な戦闘を繰り返してきた証拠だ
「それもこれも弟に逢う為だ・・・。」
どれだけ苛酷な旅だったのだろう・・・そう考える僕に姉さんは冷めた声で答え、そして言葉を続ける
「どうやら・・・貴様にその希望は摘まれた様だが。」
「・・・・・・。」
その言葉には何も答える事が出来ない
僕は決めたんだ・・・決意をしたんだ・・・
そう自分に言い聞かせる僕に・・・姉さんは激昂しながら叫び出す
「何故貴様はクロノを連れ去った?!!」
・・・僕はその言葉の意味が分からなかった
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