クロノの変異と決意
「ふむ…【魔王】か。」
「不味いでしょうか?」
僕がそう聞くとブロウドさんは首を振る
「いや、そんな事はない。部下や眷属を率いる数も【覇王】よりも制限は緩いし、単独で動く際も【使徒】程ではないにせよ力を振るえる。悪く言えば突出力が無いとも言えるが万能型とも言える称号だね。」
万能型なのは悪くない
【魔王】を選ぼうとした時に「ただ…」と彼は続ける
「君は今までと比較にならないほどの力を得る事になるだろう。ただ力がある者ほど運命というやつには目を付けられやすい。今までみたいに空欄であったからこそ出会わなかった運命も君を巻き込もうとはするだろう…君にその覚悟はあるかね?」
僕はそれを聞いて目を閉じる
無職と言われたこれまでの人生は、僕自身は決して楽な道では無かったと思う
差別され、無能と蔑ずまれ、仲間だと思っていた奴等に殺された
(それでも…)
僕に力があれば何か出来たかもしれない
僕に力があれば誰かを助ける事が出来たかもしれない
「…僕に覚悟があるかは分かりません。ブロウドさんの言う運命が僕の覚悟を容易に呑み込むかもしれませんし。でも…自分で何も出来ないで翻弄される方が僕は…嫌です。」
そう答えてスキルボードの魔王と刻印されている文字に触れた
瞬間、黒い炎が僕を包み込む
それと同時に激痛が身体と頭を襲った
「が…が…がぁぁぁぁぁ-----!!」
痛みで思わず叫んでしまう
痛みでどうにかなってしまいそうだ!!
『クロノ君!恐らく君の身体は【魔王】のステータスに適合しようとしている!耐えるんだ!!』
炎の向こうからブロウドさんが叫んでいるのがうっすらと聞こえる
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!あああぁぁぁぁ----!」
身体や頭を全身を隙間なく針で刺され、槌の様な物で殴られている様な感覚
考える事も出来ずに許されるのは叫ぶ事だけだった
◇
どれ位の時間が経過したのだろうか…
突然僕の周りに渦巻いていた炎が沈下されていく
「おぉ…」
ブロウドさんが感嘆の声を上げているのが見える
身体の痛みはもう無い
反対に身体の動きが非常に滑らかに感じる
「身体の調子はどうだね?」
「身体はどうにか無事ですが、精神的にちょっと疲れました…」
僕はそう告げると地面に片膝をつく
「無理もない。空欄称号が上級称号に変異したんだからそれに相応しい身体組織に適合する必要があったんだろう…」
彼はそう言いながら僕の横に屈んでくる
「ステータスボードを開いてみると良い。」
そう促されて開いたステータスボードには、称号【魔王】の文字が反映されていた
「やった…」
僕は思わず呟いてしまう
それと同時に視界がぼやけてしまう
「僕は…無職じゃ、ない…」
自分の放った言葉で涙がとめどなく溢れてくる
差別された、忌避された、罵倒された、見捨てられた、見捨てた、暴行された、凶刃に晒された
生涯このままだと思っていた
そんな悔しさと喜びがさっきとは違う感覚が身体を襲う
自身をもってこれからは告げよう
僕は、【魔王】だ
そんな感慨に浸る僕にブロウドさんは告げる
「君は称号【魔王】を得た事により確かに強くなった。だが魔族としてはまだ強者とは言えないよ。」
「…はい。」
そうだよ…僕はこれから魔族として生きていくんだから…
「これから君を鍛える訳だけど。」
「…はい。お願い致します。」
ブロウドさんに鍛えて貰える幸運なんて誰にでもある訳じゃない
見放されない様に、称号持ちとしてしっかり頑張ろう
彼はそう思う僕を見つめて口角を上げる
「地獄はこれからだよ?」
「……え?」
いつもご愛読有難うございます!!
この章も佳境を超えました!!
頑張って書き上げていきますので宜しくお願い致します!!
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