【間章】ルナエラの苦悶と文句
「・・・全くどうしたら良いのか。」
私は1人でギルマス執務室で頭を悩ませている
最年少ギルマスであり、貴族令嬢でもある自分に投げるには余りにも大きすぎる問題だ・・・
「あの髭ぇ・・・。」
私は悩ませているのは勿論、魔族との和平交渉の件だ
簡単に和平交渉というが、それに至るまでの材料も無ければ着地点も見当たらない
まず【魔神連合】・・・その名は知れども、規模も分からなければ【魔神】がいる立地も分からない
それに連絡手段も分からない
通常であれば特使を派遣するのが常ではあるが・・・まず誰も魔族領に入りたがらない
入ったとしても無事に届くまでの当てもなければ安全な道も分からない
魔族領に入りました、魔族に襲われました、【魔神】に届いてませんではお話にならない
最後に和平交渉をする時の着地点が見当たらない
相手は人族領の滅亡を望んでいる
そんな相手に金銭や領土移譲で納得させる事が出来る気がしない・・・というより不可能だろう
では人族の30%の虐殺を認めるか?
いやいや非人道的且つ人族領の反発を考えれば現実的ではない
しかもしれで【魔神】が納得する保証も無い
「く~~・・・あのバカ皇帝がっ!!!魔族に手を出すツケをこちらに回してくたばりおって!!」
そう言いながら頭をガシガシ搔いてしまう
(それに・・・)
他にも悩みの種はある・・・
アカノとクロノの事だ
先日にアカノが【勇者】であるロザンワとカラミトルと共に魔族を退けた事は報告として聞いている
だがその結果、カラミトル、ロザンワ共に重傷、アカノに関しては【魔神】と決着をつけるべく砦へ待機しているという・・・
その待機している理由がクロノが魔族領にて【魔神】に囲われているからとの事だ
クロノが魔族領にいるという話はアカノから聞いている
だが・・・【魔神】に囲われている等という話は眉唾だ
それに・・・言っては何だが人族滅亡を望む【魔神】がクロノの命だけを特別扱いするとも思えない
そうだとすると・・・考えたくない事ではあるが・・・
アカノだって当然その可能性は考慮しているだろう
だからこその砦で待機しているとも顧みることが出来る
非常に彼女らしくもあるが・・・友としては心配と絶望以外の何ものでもない
その報告を受けてから数日が経過している
今なおその後の経過報告が無いという事を考えると・・・最悪の事態を考えてしまう
人族としての強力な手駒の減少と友としての絶望、どちらを顧みてもプラスの要素等皆無だ
「ははっ・・・私は嫌な女だな・・・。」
有ろうことか、人族としての戦力、友としての絶望を一緒に考えてしまう
友の身を案じながらも人族の戦力計算を行っている自分に吐き気がする
「・・・う、うぅぅ。」
我慢したにも拘らず大粒の涙が自然と零れ落ちる
それはアカノの事か、クロノの事か、人族の事か、丸投げされた任務の事か、それとも・・・
誰もが答えられる様で誰も答える事が出来ない
それは例外無く、泣いている自分自身もだ・・・
それから数十分程泣いただろうか?
机に置いていた書類は私の涙でグシャグシャだ
泣いてスッキリしたかと聞かれれば決してそんな事は無い
だが・・・泣いていても何も変わらない事を私は知っている
「・・・やるか。」
自分の行動が人族の未来を変える可能性がある
アカノが死んでさえいなければ、クロノが死んでさえいなければ自分次第で生還される可能性がある
そう自分自身を奮起させ、出来る事や行うべき事を再度洗いなおす
「ギ、ギルマスッ!!!」
「バ、バカモン!!ノック位せんか?!!!」
あと数分受付嬢が来るのが早ければ泣き顔を見られていたと考えると自然と声が大きくなってしまう
だがそんな私の声を無視して慌てふためいている彼女を見る
「そ、それが・・・ら、来客ですっ!!す、直ぐにお逢いくださいっ!!!」
「・・・来客?今日はアポイント等は無かった筈じゃが・・・誰だ?」
「そ、それが・・・」
そう言って彼女が続けた言葉を聞いて私自身も驚くしかなかった・・・
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