アカノの再会と再開
「ぐはっ!!!」
ナニカの触手が私に直撃し、そのまま吹っ飛ばされる
エンチャントで防御力も上がっている筈なのに・・・受けたダメージは決して軽くなかった
「さようなら姉さん・・・。僕は魔族の皆と生きると決めたんだ・・・。」
そう言ったと同時に一斉に触手が私に襲い掛かってきた
今の体勢ではスキル発動にもラグが生じるし、避けようにも四方八方から襲い掛かって来ている為にそれすらもままならない
「クロ・・・ノ・・・。」
逢いたかった弟に逢えずして殺され、安否も分からない事が悔やまれる
ただクロノに逢いたい・・・それはそこまで大それた願いだったのだろうか・・・
「クロノーーーーーーーーーーーーー!!!!」
届くはずもない弟に向けて涙を流しながらも精一杯叫び声を上げる
血と涙が混ざった水滴は・・・正に今の私を体現しているかの様だった・・・
触手がもう眼前まで襲い掛かっていた
「ごめんね・・・さようなら。」
そう言ったと同時に触手に喰われた・・・
・・・
・・・・・・
筈だった
「おやおや・・・悪い奴が居たものですねぇ~。」
そんな軽薄な声が聞こえ、薄っすらと目を開けると・・・触手は霧散していた
「クロ・・・ノ・・・?」
軽薄な声ではあるが、私を救った者の後姿は黒髪だった
だが・・・振り返ってこちらを見る顔はクロノとは似ても似つかない人族だ
黒髪黒目ではあったが、目は切れ長で、何処か不健康そうな印象を受ける青白い肌、白い上着を羽織った彼は、目が合った瞬間ニチャァと笑う
「サイクス・・・。」
「これはこれは【魔神】様ぁ~。どうやらお忙しい様でぇ~。」
「・・・何故お前が此処に居る?」
「それはぁ勿論、アカノ様とクロノ様をご対面させる為ですよぉ~。」
「クロノ?!!クロノと出逢えるの?!!」
軽薄な男とナニカのやり取りに思わず口を挟む
私の言葉を聞いた、サイクスと呼ばれた軽薄そうな男はこちらを見て再度気持ち悪い笑みを浮かべながらこちらへ視線を移す
「そうですよぉ~。其処にいる、自称クロノ様とは違う、貴女の理想そのもののクロノ様とお逢いする事ができますよぉ~。」
「姉さん違う!!こいつは敵だ!!」
ナニカが必死に目の前の男の言葉を否定する
だが・・・私の目にはナニカの顔は分からない
全ての色を絵具で混ぜてグチャグチャにした様な顔の自称クロノが本物のクロノだとは思えない
「本物のクロノと・・・逢えるんだな?」
「間違いなく貴女にとって本物のクロノ様と逢えますよ。」
遠回しな言い方に引っかかりはするものの、目の前のナニカよりは信憑性は高い
しかも・・・目の前のナニカはこうやって話している間も触手で攻撃を仕掛けて来ているのだ・・・
軽薄ではあるものの、それから庇って逢わせてくれる者の方へ出向こうと思えるのはごく自然な事だ
「・・・分かった。だが万一それが虚偽だった場合、お前をその瞬間に殺すぞ?」
まぁ虚偽でなくとも殺すが・・・
こいつと一緒に出向く事でクロノに勘違いされても困る
「えぇどうぞぉ。それでは・・・参りましょうかぁ。」
「サイクス。僕がそれを許すと思うか?」
「まぁ許す許さないなんて関係ないんですがねぇ~。では失礼。」
そう言ってサイクスが私の手を取った瞬間・・・景色が変わる
そこは城だった・・・堅牢な石を敷き詰めた荘厳な城の通路中心部に突如移動させれていた
サイクスは私の手を離して、奥の方へ誘導する
「ここは・・・?」
「今はお伝え出来ませんねぇ~。ただ、この奥にクロノ様がお待ちですよぉ~。」
「クロノ・・・様?」
先程から気になっていた事を尋ねてみる
「クロノ様とは・・・どういう事?」
「それを私の口から言うのは野暮ですよねぇ~。詳しくは感動の再会後に直接お尋ねくださいねぇ~。」
そう促され数分程歩くと・・・
目の前には天井にも届きそうな大きな扉が待ち構えていた
サイクスは扉の取っ手をゴンゴンと鳴らして・・・「アカノ様をお連れしました。」と言うと同時に扉がゴゴゴゴーーーと開いていく
そして・・・
王座へ至る通路の奥深く・・・
王座で独り、腰を掛ける黒髪黒目の青年の姿が目に映る
「あ・・・あぁ・・・。」
その姿を確認すると・・・思わず涙が溢れてきた
その青年は私の姿を確認すると、王座から立ち、いつも見ていた柔らかい笑顔で私を見る
「姉さん・・・。」
「クロノ!!!!!」
無意識にクロノへ向かって駆けて行ってしまう・・・
もう彼を・・・放しは・・・しない・・・
これにてⅪ章【ケツルイガシタタルホドニ】のメインストーリー終了です。
ここまでご愛読いただき誠に有難う御座います。
【間章】を2話挟みⅫ章へ移行してまいりますので今後ともお付き合い宜しくお願い致します。
そして~・・・
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