アカノの苦戦と交戦
ナニカは、己に魔法をかけた様でムクリと立ち上がる
「回復魔法持ちか・・・厄介だな。」
そう呟きながら、回復できない位に斬り刻めば良いと思いなおす
そんな私の考えを知ってか知らずか・・・ナニカは私に声を掛けてくる
「姉さん・・・もしかすると姉さんは今正気では無いのかもしれない。でも・・・これで良いんだね?」
良く分からない事を言う・・・
「お前を殺さないとクロノに誤解されるだろう?・・・あぁ、クロノが目移りしない様に全ての女性も殺さないといけないし、私が誤解されない為にすべての男性も殺さないといけないな。」
そう答えると驚いた表情を浮かべている様だが、何か可笑しい事を言っただろうか?
リスクは前もって摘んでおくのは当然の事だ
「・・・そっか。僕は人族の敵となる道を選んだけれど、今の姉さんは世界の敵になるんだね。じゃあ僕は・・・魔族領の皆の為に・・・姉さんを・・・倒すよ。」
意味が分からない事を呟いたと思ったその瞬間、突如ナニカの魔力が膨れ上がる
「【暴喰王ノ口】ぃぃ!!!!」
急激に膨らんだ魔力は、先程よりも格段に大きい黒い球体が顕現される
「・・・姉さん、僕はもう・・・【魔神】だ。弱くて無能と言われていた僕じゃない。今からこのスキルを発動させるけれど、覚悟は良い?」
「さっきから姉さん姉さんと良い加減五月蠅いぞ。私の弟は世界でたった1人・・・クロノ=エンドロールだけだ。」
そう言って私も【赤炎】のエンチャントを最大付与する。
「「いくぞ・・・。」」
呼吸を整え、偶然にも同じタイミングで口を開く
私は一気に距離を詰め寄るべく足先に力を入れたその瞬間、
「【怠惰ナ脚】!!」
足元に波紋が浮かび上がる
「くっ!!」
タイミングをずらされて波紋を消そうにも間に合わない為に、前方に跳躍を試みる
その瞬間、極太の触手が一斉にこちらへ襲い掛かって来る
「?!!・・・【赤龍ノ咆哮】っ!!」
襲い掛かって来る触手を纏めて焼き払うべく炎を顕現させるが、焼き払った傍から別の触手がこちらに襲い掛かってきた
「なっ?!!」
近づいて来た触手は枝分かれし、さらに触手が生やされていた
しかも・・・その触手にも私を喰う為なのか口が無数にあった
「くっ!!」
【明鏡止水】があろうとも空中で襲い掛かって来る無数の触手を躱す事は出来ない
右脛のレッグアーマーに触手が掠り、その瞬間アーマーの一部が消失される
「ダンシングエッジッッ!!!」
襲い掛かって来る触手を踏み台にして、更に跳躍し、周辺にいる触手を斬り刻む
・・・が、どうやらダンシングエッジ程度では効果が余り無いのか、斬る事が出来た触手は僅かだった
「・・・【業火剣嵐】っ!!!」
切り札とも言えるスキルだが、出し惜しみしても意味が無い
ダンシングエッジでは斬る事が出来なかった触手が膾の様にスパスパと斬り刻める
「ねぇ、姉さん・・・。」
必死になって触手を斬り刻む私に対してナニカは口を開く
その口調は何かを悟ったかの様な・・・けれども辛そうな声色にも聞こえる
「やっぱりこの世界では称号や才能が全てだよね?・・・僕は人族だった時から必死に努力してきたけど・・・魔族に成った瞬間から圧倒的に強くなったんだ。これって努力は無価値で、称号が全てという事だよね?」
「・・・何が言いたいかは知らんし興味が無い。だがっ!!私の父はっ!!【剣豪】ながらっ!!私と肉薄した!ぞっ!!」
「・・・それって、肉薄したけど勝てなかったって話だよね?」
「だがっ!!私の父はっ!!【勇者】よりも確実に!!強かったぞっ!!」
「・・・・・・。」
「貴様が何を言いたいのかっ!!私には分からないがっ!!研鑽や努力はっ!!称号を超えるっ!!」
「・・・詭弁だよ。【剣聖】だった姉さんが【剣神】となり、たった1人だけ此処で戦っている。【魔神】となった僕だから姉さんと対抗する事が出来る・・・。やっぱりその言葉は詭弁だよ。」
そう言ったナニカは諦めた様にそう答え、「さようなら。」とだけ呟き・・・私の眼前には触手が鞭の様に振り下ろされていった・・・
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