アカノの動揺と同様
「でもさ~、おじちゃん。」
「おじっ・・・」
そんな葛藤を心中で募らせていると、カラミトルの間の抜けた声が聞こえる
その声を聞いて彼女の方へ視線を移すといつも通り能天気そうな表情で言葉を続ける
グンガスは若干複雑そうな表情をしているが・・・まごう事なき中年男性な為にフォローが出来ない
「おじちゃんは今行っても負けるっていうけどさ~。じゃあいつだったら勝てるの?」
「せ、せやな・・・。相手が疲弊して戦力が大幅に減少してからですかな。」
「じゃあそれっていつなの?【勇者】6人も居て、兵士5,000人いて戦った今でも駄目なんだよね?それまでの間にどれだけの人を見殺してから向かうの?」
「・・・・・・この戦争は勝たなあきません。多少の犠牲はやむを得へんのちゃいますか?」
「じゃあさ、おじちゃんは今からその魔族たちを相手に戦争に行ける?犠牲が仕方ないという人はその数字に自分を入れてないよね?」
「そ、それは・・・。」
彼女の純粋ながらも真っ直ぐな正論にグンガスも動揺している
そしてそれは・・・私も、多分ロザンワも同様だろう
私たちは勝ちにこだわる余り、犠牲になる人の事をあまりにも考えていなかった・・・
カラミトルは私の方へ視線を向ける
「アカのん、私は今から行くよ。私は少しでも死ぬ人が減れば良いと思ったから戻って来たの。・・・勝てるから戻って来たわけじゃないよ?」
「カラミトル・・・済まない。」
私は頭を下げて謝罪する
彼女の覚悟に比べれば・・・私の覚悟は紙切れの様に薄っぺらかった
「カラミトルさん御免なさい・・・貴女の言う通りよ。」
そう言ってロザンワも彼女に向かって頭を下げる
彼女達は【勇者】だ
もしかするとロザンワはカラミトルの【勇者】としての本懐を突かれ、私以上に恥じているのかもしれない
そんな私たちをみて当の彼女はニコッと笑い、グンガスの方へ視線を向きなおす
「おじちゃん、私たちは今から行くよ。どこの砦か教えてくれる?」
彼女の真っ直ぐな視線と正論を受けてグンガスは天井を見上げて大きく息を吐く
「・・・せやな、【勇者】の嬢ちゃんの言う通りや。正直、この戦争は勝ち目がない。100回やっても1回も勝てへんと思うとる。お三方に託してみるんも・・・良いかもしれんな。」
そう呟いた後にこちらへ視線を向ける
私たち3人ともに彼の視線を真っ向から受け止めた
「・・・【ダイン帝国】の砦や。丁度、人族領と魔族領の境目にある砦やな。ここから国2つ跨いどるから・・・お宅らの足やってら5日程度で到着できるやろ。」
「・・・いや、私たちなら3日で到着できる。」
「さよか・・・。今から行くんか?」
その言葉に全員が頷くと、目を伏せて暫し考え込み・・・言葉を発する
「・・・儂は人族の代表なんかやない。せやけど・・・どうか、人族を宜しくお願い致します。」
そう言って深々と頭を下げてくる
その姿を見て彼は彼なりに人族全体の事を思案して苦渋ながらも今は行くなと提案したのだと気づく
「えぇ・・・【魔王】たちを必ず倒してきます。」
そう言って2人に視線を向けると2人とも頷いてくる
その様子を見て私は立ち上がり部屋を後にするべく歩を進める
部屋を出ようとする所でカラミトルがグンガスの方へ視線を向き口を開いた
「あ、そうだおっちゃん。おっちゃんは100回やっても魔族には1回も勝てないって言ってたけどね、10,000回やれば100回は勝てるらしいよ~?」
そうにこやかにグンガスに告げる
「は?そんなん誰が言うたんや?」
「ん~、龍族のせきりゅう?っていうおっちゃん!!」
「・・・は?」
私は急いで彼女の口を塞ごうと試みて見たが遅かった・・・
基本的に龍族への接触は国を滅亡させるリスクが高い為に基本的に禁止されている
にも拘らず、爆弾を唐突に投下させたに焦りを隠せず
「で、では・・・そう言う事で・・・。」
そう言ってロザンワと苦笑しながら部屋を後にするのが精いっぱいだった
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