【間章】ルナエラの会議と懐疑
「・・・経過報告を。」
人族と魔族との戦争が宣言されちょうど1ヶ月となった今日、ギルドマスターとグランドマスターが集い会議が開かれている
通常では年に1回、多くとも2回程度しか行われないギルマス会議
それが1ヶ月で開催され、しかもグラマスが出席している等、本来は有り得ない
だが・・・今回は本来では有り得ない事が続いている
だからこそ仕方ない事なのだろうとルナエラは陰鬱になる
そんな彼女を放って会議は続く
司会のギルマスがグラマスの言葉で立ち上がり現状を報告する
「はい。前回の会議で採決された様に全ての国家に在籍している【勇者】を集結させ、【勇者会議】を行いました。その結果、大多数の【勇者】は国境沿いの砦に分散して駐留、少数の【勇者】が偵察部隊として魔族領の情報を収集すると採択されたそうです。」
・・・まぁ無難といえば無難な作戦とも言える
魔族領に関しては確かな情報等、人族領では持ちえない
攻め込んでくる規模、個体戦力、時期にかんしては情報収集しなければならぬだろう
「ただ・・・。」
司会を行うギルマスの言葉が続く
「ただ、その内の1つの砦である帝国領にありました砦を魔族約500の襲撃を受け、あえなく陥落、現在は魔族軍に駐留を許している状態です・・・。」
「「「?!!!」」」
その言葉に一同が驚く
先ず、宣戦布告から間を置かずに攻め込んできた事もそうだが、500の軍勢という規模、そして陥落された速さ・・・そのどれもが驚愕に値する
「そ、その砦にゆ、【勇者】はいなかったのですか?!」
「いえ・・・その砦は帝国領だった事も加味され【勇者】を6名配置されており、兵も5,000を投入されておりました。ですが・・・。」
「か、陥落とは・・・何日間防ぐことが出来たのですか?!」
「報告では3日となっておりましたが・・・恐らく2日程度では無いかと思われます。」
うむ・・・兵士がなけなしのプライドで報告してくる事はよくある
それを顧みると2日が妥当じゃな
ただ、5,000の兵と【勇者】を6名配置して2日で陥落させられる事を考えると・・・脅威以外の何物でもない
「じゅ、10倍の戦力で以っても勝てなかったという事ですか?!ま、魔族は5人で当たれば互角、6人で当たれば負けは無いというでは無いですか?!!」
「・・・・・・それらも含めて我らは魔族を知らぬという事だ。」
徐にグラマスが口を開く
顔色を見ると、彼自身が忸怩たる思いなのだろう
各国家の王族等にも報告しなければならないだろうから、その表情も理解できる
「・・・【勇者】たちはどの様に動く?」
「はい、現在は【勇者】にも動揺が広がっており方針が定まっていない様です。」
「・・・・・・【勇者】たちに指示しろ。件の帝国砦からみて両横隣り2つの砦に駐留している【勇者】及び兵士、冒険者は帝国砦へ向かえ、と。」
「ぐ、グラマスそれですと【勇者】12名、兵士12,000人の投入となりますが・・・」
「構わん。個体差で魔族に負けている以上、数で勝っていくしかない。それに500もの魔族が投入されているのだ、両脇2つ分の範囲に攻め込んでくることは無かろう。」
「は、はいっ!!!」
ギルマス会議とは言ってもグラマスの言葉1つで全てが採択される
個人的には反対では無いが・・・集まる意味はあったのか?と思わなくもない
「それと・・・相手に対して休戦を交渉する役割を誰かに頼みたい。」
「「「?!!!」」」
「戦争は始まったばかりだ。ばかりではあるが・・・どうやら相手は思った以上に強力である事も否めない。まずは砦を奪い返し、人族の力を誇示してからとはなるがそうちらの方も視野にいれなければなるまい。」
グラマスの発言はある意味弱腰とも受け止められる
ただ・・・個人的には理解も出来る
一国の兵士に相当される数の兵士と6名の【勇者】が容易く敗れたという事は・・・総力戦にでもならなければ勝てないのだ
そして総力戦になり勝利したとしても、その後の人族に残る傷跡は恐ろしく深い事も理解しているのだ
中々先を読む目が有るじゃないかと1人頷いているとグラマスの言葉が続く
「で、だ・・・交渉役をルナエラ、貴様に任ずる。」
「・・・は?」
「どうやら儂の意図を一番理解しているのはお前みたいだからな。なに、直ぐではないが覚悟はして置け。」
「はあああぁああああぁああぁーーーー?!!!!!!」
前言撤回、こいつ最悪だ・・・と私は1人頭を抱えるのだった
これにてⅩ章【クロイセカイ】が読了となります。
自分自身としては約半分くらいは終わったかな?と思っております。
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