【間章】真祖の計画と計略
「・・・天使族が敗れたか。」
誰もいない謁見の間で一人呟く
いや、この謁見の間だけではない
城内も、街中も、国中の何処を探しても私以外はいない
「クロノ君は・・・思った以上に強くなっているねぇ・・・。」
「貴方の依り代としては充分な強さを手に入れたんじゃないかしら?」
・・・前言撤回だ
どうやらこの国には僕以外にもいたらしい
「ファスミーヤか・・・君がこの国に入る許可をだした覚えが無いけれどねぇ。」
私がそう言うと彼女は姿を現す
「あら?もうファスとは呼んでくれないのかしら?」
「君が居ない所であればそう呼ぶかもしれないけれどね?少なくとも今は呼ぶ気になれないよ。それで?君は何しに来たんだい?」
「貴方の真意は知りたくて、ね・・・。貴方のお気に入りは同格の【魔皇帝】すら退け、【魔神】となる資格を得た訳だけど・・・貴方は何がしたいの?」
その言葉を聞きながら喉を潤しながら「別に。」と言って言葉を続ける
「ファスミーヤ・・・私の願いはあの頃から何も変わっていないよ。過保護な親、鳥籠に入れる飼い主、王座で嘲る王から逃れたいだけさ。」
「・・・貴方はあの頃から本当に変わってないのね。」
「逆に君たちの考えこそ私は理解に苦しむね。」
「貴方の言う親や飼い主のお陰で安息が手に入っているじゃない。」
その言葉を聞いて思わずグラスを握り割ってしまう
あぁ、まだ僕は心が自制できないみたいだなと俯瞰的に笑う
「こんな状況が安息だと言うのならば・・・それは糞ったれた状況だ。言っておくけど安息と無動は異なるからね?」
「その辺は散々議論したからもう良いわ。それで?あの人族は貴方の願いを達成出来そう?」
「今の所は順調だろうね。ただ今からは試練の連続だ・・・その試練を潜り抜ければ、ね。あぁ、後は君たちが邪魔しなければ、かな?」
私はそう言いながら彼女に視線を移す
そうすると彼女は嫌な顔をしながら頭を抱える
「・・・私はしないわよ。私の子が何故か懐いちゃっているからね。子供に嫌われるのはごめんだわ。」
その言葉に思わず笑みが零れる
彼女からすれば純粋な直系の子供だ
ただでさえ妖精霊族は数が少ないのだから尚更だろう
「正直君の子は、君よりも僕の考えに近いからね・・・」
「何?私に喧嘩売ってるの?」
「いや・・・ここ数百年でここまで刺激的な日々はなかったなと思ってね。」
「・・・・・・」
「さぁクロノ君・・・舞台はできつつあるよ?【魔神】となった君ははたしてどう動くかな?そして・・・私と再会した時、君はどう思い、どう言う結末を望むかな?」
それを思うと胸が高鳴る
私は腰を浮かせて王座から立ち上がる
「・・・何?どこか行くの?」
「あぁ、ちょっとした野暮用だけどね・・・。付いてくるかい?」
そう軽口で答えると嫌な表情を浮かべて首を横に振る
その動作を気にも留めずに歩き出しながら思考を纏める
(先ずは部下達の動向の確認と・・・クロノ君の答えの確認、それと・・・久しぶりに親に顔でもだそうかな。)
そんな事を考えながら歩を進めて城を出る
幸い、彼がこの国に入るのは未だ先だろう
どうにも私は自分が思っている以上に高揚しているみたいだな・・・
「仕込みは上々、か・・・。」
ここまで気分が高鳴るのは本当にいつぶりだろうか・・・
ねぇ、クロノ君
あの日、君を出逢って
偶然だけれど
あの日、君を拾って本当に良かったよ・・・
そんな事を思うと笑みが零れる
笑い方を思い出したのは君と出逢ってからだなんだよ
君にそう言ったら君はどう思うかな・・・
そんな事を考えながら私は先ず、部下の1人の元へ赴く事にした
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